5月に膝を怪我したジョンジョン・フローレンス。五輪までに回復できるか Photo: @john_john_florence

ジョンジョン、コロヘの五輪出場見込みは?アメリカ代表チームが怪我の要因を分析

東京五輪の開幕まで2か月半を切ったところで、サーフィンのオリンピックデビューでメダル獲得が期待されているアメリカの男子代表2名が立て続けに怪我を負い、CT大会を欠場している。ジョンジョン・フローレンスとコロヘ・アンディーノがそれぞれ手術を終え、リハビリや回復の様子を明らかにした。

現時点では2人とも五輪に間に合うとの回復見込みだが、USA Surfingは最悪の場合を考えて二人が出場できない場合のシナリオも想定していると、WSLが報じた。

アメリカ代表チームUSA Surfingの医長は、この危機的な状況を踏まえ、サーフィンのおける怪我に関しての調査結果を発表。怪我防止に役立てたいと考えている。

ジョンジョンの手術は成功

2021年シーズン初戦で好スタートを切ったジョンジョン。続いてのオーストラリア東海岸で結果を出せずに迎えたマーガレットリバーの『ブーストモバイル マーガレットリバープロ』では再び調子が戻ったように見えた。

しかしながら、R16のヒート中にエンドセクションに当て込んで、着地に失敗して左ひざの怪我を負ってしまった。以降のオーストラリアレッグを棄権してオアフ島に戻ったジョンジョンは、早速手術を受け、回復の見込みを自身のInstagramで報告した。

「(手術から)目が覚めたら外科医から手術が成功したことを聞かされた。予想よりも早く完全に回復する見込みだ。。。オリンピック出場ができそうなのは大きなモチベーションになる。非常にワクワクしていて、実現できるために自分にできることは全てやるつもりだよ!」 

コロヘもリハビリに専念中

オーストラリア入国後に2週間の検疫を終え、オーストラリア・レッグ初戦開幕の直前に高位足関節捻挫したコロヘは4月の手術後、リハビリの様子をインスタに投稿し、つい先日回復の様子を短くコメントした。

「夢はあきらめていない。回復は早く、バリバリ動けるまであと少しだ。」

詳しい状況は明らかではないが、オリンピック出場に向けてリハビリに励む様子がわかる。

プロサーファーの怪我は増えている?

オリンピックという大舞台が誕生して、ジョンジョンの膝の怪我やコロヘの足首の怪我がますます注目されるようになっている。

USA Surfingの医長ケビン・ディーンが、WSLの主治医ウォーレン・クレーマーと整形外科医のエリック・ホンと協力して、トップレベルのサーファーの怪我について理解を深めるために調査に乗り出した。

3名の専門家が怪我の種類や予防、対応を調査する中で、プロサーファーでも、一般サーファーでも回復に時間を要する怪我が増えていることがわかってきたという。

サーフィン中の怪我を分析

世界トップのサーファー達がより際どい場所でより大きな技を仕掛けることでパフォーマンスと同時に体の限界を試しているが、これが怪我の増加に直結しているとは言い切れないという。

実際のところ、医学的処置が必要な多くの怪我は何ともない日々のサーフィンの中で起こることが大半だ。怪我の傾向を見出すため、アメリカ代表チームUSA Surfingは今までに治療に携わった怪我の分析結果を発表した

調査の結果、サーフィンで最も怪我が多い場所が膝、足首、肩と判明 データ:USAサーフチーム報告より

膝の怪我(全体の29%)

サーフィン中に最も怪我が多いのは膝、特に後ろ足の膝だ。中でも46%はMCL(内側側副靱帯)の損傷。膝は体の中でも最大の蝶番関節で、前後の動きに特化している。膝の怪我の多くは横から強い力が加わった時の起こるようで、特に後ろ足の膝が外側から内向きにサーフボードに押し込まれた時にMCLを痛めやすいようだ。

足の向きを調整することで膝への負担を減らすことができるという。つま先をノーズ寄りに向ければ、膝に力がかかった時に正しい方向に曲がり、力を吸収できる。

ライディング中の膝の向きが怪我のリスクをどのように軽減するかをデモンストレーションするケヴィン・シュルツ Photo: USA Surfing

足首の怪我(全体の22%)

足首の怪我の約7割が捻挫で、5割がコロヘと同じ高位足関節。主な原因は足の甲が無理にすねの方向に押されることや、足の横向きの強いひねり。状況としてはエアやフローターの着地が思い当たる。

足首の可動域を広げるトレーニングが予防に効果的と考えられている。

肩の怪我(全体の19%)

肩の怪我の約5割が関節の不安定さが原因。ストールするために腕を波に突っ込んだときや、波にもまれたときに腕が強い力で無理な方向に引っ張られた時に関節を怪我しやすい。

肩を強める運動の多くは三角筋や胸筋等の主要な筋肉を鍛えるのだが、肩を安定させるためには腱板(肩と上腕部を結ぶ四つの筋肉:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)を鍛えるのが大事だ。

体のバランス、動かし方が肝心

股関節(全体の11%)や腰部(全体の10%)の怪我には様々な要因があるが、共通しているのは体のバランス。サーフィンはほとんどの人がスタンスがレギュラーかグーフィーで固定しているため、体の使い方やひねり方が非対称になり、後ろ足の寛骨臼(脚の付け根)や腰が影響を受けやすい。

「トレーナーや理学療法士と一緒に自分のライディング(生が無理なら動画でも)を分析し、特有の動きを理解することが大切。怪我の共通点を洗い出すことで原因を特定して、予防できるようになるだろう。筋力を上げるだけでは怪我を予防できず、大切なのはそれぞれの関節などの正しい動き方を練習したり、可動域を超える動きやそれにつながる体勢を避けること。トレーニングで筋力を上げるとパワーは増すが、正しい動きができていないと怪我の可能性も増える。筋力は大事だが、それよりも正しい動きが基盤にあることが怪我の予防においてもっと大事なんだ。」 USAサーフィン医長 ケビン・ディーン


7月23日開幕予定の東京オリンピックが刻々と迫ってきているなか、ジョンジョンとコロヘのリハビリの様子を心配しながら見守っているのはアメリカ国民だけではないはず。ただ、これを機にサーフィンの怪我についての研究が進めば、トッププロはもとより、一般サーファーの怪我の予防にもつながることを期待したい。

ケン・ロウズ

The Current State of Surf Injuries | USA Surfing
Florence Undergoes Successful Surgery, Sets Sights On Olympics | World Surf League

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