ケリー・スレーターが生んだ700ヤード(約640m)の奇跡。
カリフォルニアの内陸部・レモーにあるウェーブプール「サーフランチ」でのCTイベントが今年も開催!
6月18日〜20日の3日間に渡って第6戦『ジープ サーフランチプロ』が行われ、フィリッペ・トレド&ジョアン・ディファイが共にサーフランチで初めての優勝を飾った。
今年は『2021 ISAワールドサーフィンゲームス』と東京五輪の間に行われ、元々怪我人も多かったことから、9名の選手が入れ替わる(更にジェレミー・フローレスも急遽事態して10名)異例のイベントとなり、このプールの創設者でもあるケリーが怪我から復活したことが話題になっていたが、いざイベントが開始すると多くの選手の存在は霞んでしまい、なんとかSFまで残ったケリーがかろうじて今シーズン限りで引退するエイドリアーノ・デ・ソウザとの絡みなどでトピックになった程度。
やはり、ブラジリアンのフィリッペ・トレド、ガブリエル・メディナの二人による一騎打ちが一番の注目となった。
フィリッペ vs ガブリエル 3度目の対決
サーフランチのCTイベントは2018年から開始して2019年、そして2021年と3回目を数える。
ツアーが中止となり、WSLカウントダウンという特別イベントとして開催された2020年はココ・ホーとのペアとして優勝していたフィリッペだったが、CTとしての2イベントは全てガブリエルに軍配が上がっていた。
特に後半の集中力の差や、バックサイドとなるレフトが弱点になっていた…。
しかし、今年のフィリッペは優勝したマーガレットリバーで見せたような集中力でファイナルにピークを持ってくることに成功。
レフトも克服してガブリエルのミスにも助けられ、念願の優勝を手に入れたのだ。
「サーフランチで3度目のファイナルだよ。ガブリエルには2度も負けていたから、この優勝は本当に嬉しいね。ガブリエルにとって今シーズンは最高なものになっている。すでにトラッセルズでのファイナルも決めているしね。そんな彼との勝負に勝てた。それは大きな意味があるよ」
フィリッペ・トレド
CT第6戦『ジープ サーフランチプロ』結果
1位 フィリッペ・トレド(BRA)
2位 ガブリエル・メディナ(BRA)
3位 五十嵐カノア(JPN)、グリフィン・コラピント(USA)
5位 エイドリアーノ・デ・ソウザ(BRA)、ヤゴ・ドラ(BRA)、イーサン・ユーイング(AUS)、ケリー・スレーター(USA)
2021年ワールドツアー:トップ5
1位 ガブリエル・メディナ(BRA) 46,720pt
2位 イタロ・フェレイラ(BRA) 33,555pt
3位 フィリッペ・トレド(BRA) 32,065pt
4位 モーガン・シビリック(AUS) 24,610pt
5位 グリフィン・コラピント(USA) 24,235pt
ジョアンがシーズン初優勝でトップ5入り
トップ5が最後に「リップカール WSL ファイナル」でワールドタイトルを争う今年のフォーマットはステファニー、カリッサ、タイラーによって占められたウィメンズツアーにとって変化を及ぼす可能性がある。
特に無冠の女王と呼ばれたサリーを始め、ランキング上位のタティアナ、ジョアンにとっては大きなチャンスだ。
サーフランチのウィメンズサイドは過去にカリッサ、レイキーが優勝。
ステファニー、ジョアンが2位だったが、今年はジョアンとカリッサがファイナルまで残り、僅か0.40差でジョアンが優勝。
ランキングを3つ上げて2位に浮上した。
波が一定のサーフランチではジャッジの基準が明確に示されており、マニューバーではバリエーションと創造的、難しいセクションでの演技が求められ、総合的なポイントではコンビネーション、漸次的、革新、アプローチがスコアを左右する。
つまり、いくら完璧な演技でも同じことを同じ場所で繰り返してはスコアが出ないのだ。
エアーが一般的ではないウィメンズサイドではターンとバレルのコンビネーションが勝敗を左右。
いかに際どいセクションでターンをして、いかに深く長くスタイリッシュにバレルに入るかにジャッジは評価をした。
この二人が最もそれを実践してミスなく安定、0.40は数字以上に僅かな差だったと言える。
「サーフランチでのウィメンズサーフィンのレベルの高さには本当に感心するわ。特にカリッサ、サリー、タティの3人が素晴らしい仕事をしてくれた。2戦連続のファイナルは初めてよ。この結果に満足している」
ジョアン・ディファイ
東京五輪のフランス代表でもあるジョアン。
千葉のビーチブレイクでも力強く安定したサーフィンを披露してくれるだろう。
CT第6戦『ジープ サーフランチプロ』結果
1位 ジョアン・ディファイ(FRA)
2位 カリッサ・ムーア(HAW)
3位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)
5位 キャロライン・マークス(USA)、コートニー・コンローグ(USA)、ステファニー・ギルモア(AUS)、ココ・ホー(HAW)
2021年ウィメンズワールドツアー:トップ5
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 43,855pt
2位 ジョアン・ディファイ(FRA) 34,645pt
3位 サリー・フィッツギボンズ(AUS) 34,270pt
4位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA) 33,625pt
5位 ステファニー・ギルモア(AUS) 29,390pt
ガブリエルとカリッサがWSL ファイナル進出を決める
もし、トップ5が最後に「リップカール WSL ファイナル」でワールドタイトルを争うフォーマットでなければ、最終戦前にタイトルを決めてしまうような勢いのガブリエルとカリッサ。
ガブリエルは6戦の内、マーガレットリバーでの9位を除くと全てファイナルに進み、優勝が2回。
カリッサは全て3位以上で、優勝も1回している。
ポイント差でも2位以下を大きく引き離し、すでにトップ5は確定。
9月にローワー・トラッセルズで行われる「リップカール WSL ファイナル」の出場も決まった。
「素晴らしい気分よ。トップ5に入り最後に戦うことが今年の初めの大きな目標だった。その資格を得られたことを知って嬉しい。本当にワクワクしているわ。ワールドチャンピオンになるには、まだやらなければならないことが沢山あるけどね」
カリッサ・ムーア
「最高に嬉しいよ。オーストラリアでは良いパフォーマンスが出来たし、ここでもね。今年は素晴らしい旅が出来ている。全ての時間を楽しんでいる。すでにトラッセルズでのファイナルの準備は整っているよ。今年の目標が達成出来て嬉しいね」
ガブリエル・メディナ
五十嵐カノアは3位 都筑有夢路は17位
予選ラウンドでは一時3位を維持してSF進出、ファイナルには一歩届かなかったものの、五十嵐カノアは今イベントを3位でフィニッシュ。
ランキングも3つ上げて6位に浮上。
メキシコ、タヒチでトップ5入りを狙う。
今回もレイキー・ピーターソン(USA)のリプレイスメントとして参加していた都筑有夢路(JPN)は初めてのサーフランチで感覚を掴めず、17位でフィニッシュしている。
「パフォーマンスするのは凄い難しくて、それを試合で出すのも難しいですが、自分の中では良い経験になって良かったです。オリンピックも今年あって代表にも選ばれたので、凄い嬉しいし、特に日本で開催されるので、自分の中でもワクワクしています」
都筑有夢路
次のビッグイベントは7月25日から開幕する東京五輪のサーフィン競技。
その後、CT第7戦はメキシコで8月10日〜20日に開催される。
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)