WSL史上最多の視聴数を記録した「WSLファイナル」で2021年のワールドタイトルが決まり、WSLの次のステージは2022年のクオリファイを決めるCS(チャレンジャー・シリーズ)と井上鷹&田岡なつみも出場するWSLロングボードツアーに移る。
まずはカリフォルニア、ポルトガル、フランス、ハワイと4戦続くCSの初戦『US Open of Surfing Huntington Beach presented by Shiseido』がハンティントンビーチで9月20日〜26日に開催された。
五十嵐カノアが3位、脇田紗良が5位
2018年にローカルヒーロー、ブレット・シンプソンに並ぶ2連覇を達成して今度はロブ・マチャド、ティム・カランに並ぶ3度目の優勝を狙い、WSLから大会直前にインタビューを受けるなど注目されていた五十嵐カノア。
連日の快進撃で地元ハンティントンビーチの人たちも盛り上がっていたが、SFでサンクレメンテのグリフィン・コラピントに敗れてしまい、今回は3位でフィニッシュした。
ポルトガルに別荘を持つほどポルトガルが好きなカノアはCSのヨーロッパレッグも転戦するとコメント。
シーズン後半も日本のファンを楽しませてくれそうだ。
ウィメンズはCTリプレイメントから参加していた脇田紗良がQF進出を果たし、ケイトリン・シマーズ(USA)と対戦。
SF進出は叶わなかったが、5位でフィニッシュして5,000ポイントを獲得した。
CSはカリフォルニア、ポルトガル、フランス、ハワイの4戦中上位3イベントのポイントと、その他に2020年のQSイベントの最上位イベントのポイントをカウントしてランキングが決定。
メンズは上位12名、ウィメンズは上位6名が2022年のCTクオリファイの条件。
脇田紗良、クオリファイに向けてまずは一歩前進した。
ファイナルデイ前日に事件が発生
ファイナルデイの前日、9月25日午後3時15分頃、会場のハンティントンビーチ付近で警察官が武装した男と対峙。
警察官は武器を捨てるように命じたが、応じなかったのに加えて警察官に向けて振り上げたため、警察官が発砲。
男は救急車で病院に搬送されたものの、死亡したと発表された。
すでにコンテスト終了後のことだったが、会場には多くの観客が残っており、目撃者がSNSでこの様子を投稿。
WSLはこの事件について「大会終了後にハンティントンビーチのイベント会場付近で発生した事件を把握している。選手とスタッフは全員無事で、説明を受けている」と声明を発表した。
射殺された男がラテン系だったこともあり、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)の活動家たちが警察に対してアクションを起こす可能性があるとも言われている。
15歳の新鋭がメジャータイトルを獲得
2018年に伊良湖・ロングビーチで開催された「ISAワールドサーフィンゲームス」に12歳でアメリカ代表として選ばれたことで大きな注目を浴びていたケイトリン・シマーズ。
あれから3年、まだあどけなさが残るものの、サーフィンの完成度は年々確実に上がっており、14歳でプロサーファーの中でもサラリーが良いと言われているRed Bullがスポンサーに付き、2020年にはWSLのスペシャルイベントとして開催された『Nissan Super Girl Surf Pro』で優勝。
更に2021年にはサーフランチでのCTにリプレイスメントとして参加してQSでは常に上位に入り、先日終了したばかりのQS3,000『Nissan Super Girl Surf Pro』で2位。
その勢いをハンティントンビーチでも維持してSFではCTサーファーで『US Open of Surfing』を2度も制覇したことがあるコートニー・コンローグ(USA)を僅か2本のライディングで倒し、ファイナルではハワイのアップカマー、ガブリエラ・ブライアンを相手にファーストセクション、最後のクローズアウトセクション共にリスキーな攻めのサーフィンでスコアを稼いで勝利。
15歳にして堂々のメジャータイトルを獲得した。
「全てが自分の思い通りになったことに興奮している。それ以上の言葉が見つからない。ファイナルはハイタイドに近かったので、ここまでのヒートのように20分も波を待つようなことはせずに、早いスタートを切ることを心掛けた。今年は本気でクオリファイは目指していないの。フランスとポルトガルではただ楽しんでサーフィンしたいと思っているわ」
もし、ケイトリンがクオリファイを果たせば、キャロライン・マークスの15歳の最年少記録に並ぶことになる。
グリフィン・コラピントが念願のQS初優勝
メンズサイドはSFでカノアを倒したグリフィンがオレンジ色で揃えた応援団の声援をバックにエンシニータス出身のジェイク・マーシャルとのファイナルでも調子を崩さず、後半に7ポイントを2本揃えて圧勝した。
「この優勝まで長かった〜。16歳の時にプロジュニアで優勝したのが最後。あれから勝てなかったことがプレッシャーになっていたよ。今回は最初から不思議な直感があった。全てが上手くいくと思い、良い感じだったのさ。両親、兄、友人、祖父母など、感謝すべき人は沢山いる。多くの人に支えられ、彼らのおかげで今の自分があるんだ」
カノアと同じスネークことジェイク・パターソンのコーチの元でQSからCTに上がり、成長を遂げたグリフィンだが、QSでの優勝経験はなく、最後に優勝したのは2016年のジュニアイベントだった。
ちなみにグリフィンは2015年、大原洋人が『US Open of Surfing』を制覇した年にジュニアイベントで優勝している。
ウィメンズのケイトリンも2019年に『US Open of Surfing』のジュニアイベントで優勝。
これで両者共に2階級制覇となった。
会場のハンティントンビーチ南側の波はファーストセクションでのビッグアクションの後、リフォームしてくる波を繋ぎ、最後のクローズセクションを確実にメイクするとハイスコアが出るという独特のクライテリアがある。
このハンティントンビーチ名物とも言えるライディングを完璧にこなすことが勝利の秘訣なのだ。
『US Open of Surfing Huntington Beach presented by Shiseido』結果
メンズ
1位 グリフィン・コラピント(USA)
2位 ジェイク・マーシャル(USA)
3位 ノーラン・ラポザ(USA)、五十嵐カノア(JPN)
5位 キャラム・ロブソン(AUS)、コロへ・アンディーノ(USA)、リアム・オブライエン(AUS)、ルーカス・シルヴェイラ(BRA)
ウィメンズ
1位 ケイトリン・シマーズ(USA)
2位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)
3位 ココ・ホー(HAW)、コートニー・コンローグ(USA)
5位 キャロライン・マークス(USA)、ソーヤ・リンドブラッド(USA)、脇田紗良(JPN)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)
CSはヨーロッパレッグへ
全4戦用意されているCSの次の舞台はポルトガル。
10月2日〜10日にエリセイラで『MEO Vissla Pro Ericeira』が開催。
その後にはCS第3戦『Quiksilver Pro France』&『ROXY Pro France』が10月16日〜24日に開催される。
最終戦は11月26日〜12月7日、オアフ島・ノースショアのサンセットビーチを舞台とした『Haleiwa Challenger』
なお、9月28日〜29日はWSLロングボードツアーの初戦『Cuervo Surf Ranch Classic』がサーフランチで開催される。
井上鷹、田岡なつみの他、ジョエル・チューダー(USA)、ハリソン・ローチ(AUS)、ジャスティン・クインタル(USA)、ホノルア・ブロムフィルド(HAW)、ソレイユ・エリコ(USA)、クロエ・カルモン(BRA)他、強豪が勢揃い。
井上鷹は自身のInstagramですでに現地入りしたことを伝えている。
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)