2003年フィジーでのアンディ Photo: WSL / PIERRE TOSTEE

「マジックボードに当たれば2階級特進」- F+

F+(エフプラス)

いよいよこの週末からCTの第1戦、ビラボンプロパイプラインがスタートとする。新デザインのすっきりロゴとか、今シーズンの試合はスポンサー名+プロのあとに会場名が来るフォーマットが多いとかの統一感があって、なんだろう……いちいちプロっぽいというか、サーファーはそんなこと気にしませんよ、と突っ込みたい気分というか、とにかく変化は感じる。でもあの辺のトリプルクラウンがらみのパイプラインマスターズのような、ネーミングの版権のようなものの所有は複雑で、WSLも思うようには使えないんだろうとも思う。一般的にはパイプマスター、って通りがいいんだけどね。

今年は初めて女子もパイプで公式戦が行われるので、いよいよオナゴもパイプ、チョープーやらなきゃならん時代がやってきた感がある。誰も怪我無く試合が終わることを祈るばかりだ。だってケガが長引けばミッドシーズンカットで後半戦を棒に振るわけだから。ホント、ひどいシステムを考え付いたもんだ、と思う。単純に人数が減れば、経費削減には有効か。

質問:サーフボードと、サーファーのパフォーマンスは、どのくらい相関性があるのでしょうか?

100%と言ってもいいのだろうか、と思う。技術的にどんなにうまいサーファーも、その技術に反応してくれるサーフボードがなければいいサーフィンはできない。逆に下手なサーファーも、自分に合っているいい板に当たれば2階級特進となる。

プロなら勝つための準備のためにいいサーフボードを手に入れる、というのは必要不可欠項目だ。
ある程度のレベルまでは弘法筆を選ばず的なことはあるし、昔アンディだったかケリーだったか、タバルアで自分の板全部折っちゃって、試合中にカメラボートに来て、当時ASPのオフィシャルカメラマンだったピエール・トスティの板を借りてラインナップに戻り、その板で10点満点を出した記憶がある。アンディかな、そういう型破りなことができるのは。でもそれもリーフブレイクのバレル勝負というシンプルなサーフィンだったから可能なんだと思う。

どこまでレールを入れればどう反応する、どう踏めばどう前に出る、自分のどんな動きにもしっかりついてきてくれる板、自分が行きたいところに行ける板は、チャンピオンたるもの必ず持っているものだ。逆に、持っているからこそ、チャンピオンになれるのだ。

中級者レベルというか、アップスン、カットバックといったターンのまねごとのようなことができて初めて板の良しあしを感じるんだろうと思う。初心者においてはバランスのいい、よく浮く、テイクオフの早い板がいい板といえる。
でもねぇ、テイクオフしてまっすぐしか行けないのにエッジとかレールとか熱く語っちゃうサーファーも現実にいるわけで、つい笑ってはしまうけど、そういう人がいてこそのサーフィンブームなので、店頭で対応するお店の人は辛抱強さが求められるだろうなぁ、と思う。

まぁ、サーフィンにおけるサーフボードというのは技術と同じぐらい結果に影響するものだと思う。そして、当たりはずれはギャンブル的な要素も大きい。
ツアーでもシェイパーの流行りすたりはある。今年の誰それはイマイチらしい、とか、今年の誰それの板はいいとか、その都度評価が上下する。特に近年はマシンシェイプなので、元になるモデルの良しあしでその年のそのシェイパー、ブランドのいい悪いが決まるようなところもある。同じボードの再現性というのはここ10年で格段に上がっていると思う。
それでもサーフボードというのはとても個人的なもので、誰が乗っているから、万人にとっていい、とはならない。

中級者以上の人ならきっと、自分にとってのマジックボードに当たったことがあると思う。あのできなかったことが簡単にできるようになっちゃう快感はすごいし、すべてに自信が持てるだけにどんどん新しいことにチャレンジできる。結果2階級特進。逆にダメな板に当たって、今までできてたことができなくなるストレスもすごい。スランプ直行。
それはいい波、よくない波でも同じような現象が起きる。プロにとってのいい波も、素人にとってはただのクローズアウトというように、こちらも実に個人的なものだ。

たかが道具、されど道具。特にCTのように、身体能力的にも精神的にも、極限のところでの勝負になればなおさらだ。まぁ道具なだけにある意味お金で解決のつく要素ではあるので、2階級特進は買える、ともいえる……と思う。

photo by GORDINHO

写真90年代から21世紀にかけてのコンペ全盛期のハワイの顔、ミスタートリプルクラウンともいえるランディ・ラリックと私。なんか深刻な話でしょうか。何を話していたのかまるで記憶にないけど、ランディとはいろいろ縁があって、彼の家にステイしていた年もあるし、会場で会えばよく話をしていた。これは2001年12月、場所はパイプかな。ふたりとも超若いし(笑)。

F+編集長つのだゆき

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