『G.O.A.T』ことケリー・スレーター(USA)とワイルドカードのモアナ・ジョーンズ・ウォン(HAW)が優勝した開幕戦『Billabong Pro Pipeline』。2月15日〜18日に開催されたCT第2戦『Hurley Pro Sunset Beach』は全く違う展開となった。
奇跡の7マイルと呼ばれる同じノースショアでもパイプラインと今回の舞台になったサンセットビーチは波質が全く違い、オープンフェイスでのマニューバー勝負。
イベント開幕前のインタビューで「みんな私がサンセットを嫌いだっていうのを知っているし、確かにそうだね。」と話していた通り、ケリーは敗者復活戦のR2に回り、更に次のRound of 32でインターフェアを犯してしまい、あえなく敗退。
結局、イエロージャージを着たのは3ヒートだけと幻のような出来事になってしまった…。
パイプラインであれだけ強かったモアナもサンセットビーチでは精彩を欠いてしまい、敗者復活戦のR2で敗退。
逆に考えればパイプラインがいかに特別な波かを証明したようなトップの失速だった。
カノアが世界2位に
2022年にワールドタイトルを獲得するには、1イベントでの勝利よりもコンスタントな結果が求められる。
まず前半の5戦でメンズは上位24名に入り、ミッドシーズンカットを免れるのが最低条件。
そして、後半の5戦でトップ5に入り、トラッセルズでの最終決戦「WSLファイナル」の舞台に立ってからが本当の勝負だ。
24歳、CT7年目の五十嵐カノア(JPN)はツアーでも有数のオールラウンドプレーヤーであり、ハワイではパイプラインで5位。
サンセットビーチでは9ポイントを2本、その内の1本はイベントのハイエストスコアを出し、ファイナル進出。
残念ながら2019年のバリ島・クラマス戦以来、2度目のCT優勝はお預けとなったものの、ワールドランキングでは2位に浮上した。
「嬉しいよ。ハンティントンビーチで育った自分にとってハワイは経験を積むのに本当に必要な場所で、もう何年も通っている。サーフィンだけではなく、様々な課題に取り組んでいるし、ここ数年本当に努力しているよ。以前はハワイに居心地の悪さを感じていたけど、今は沢山の友人や顔見知りがいる。それによってスコアや結果を出せたことは大きな意味があるよね」
五十嵐カノア
パイプラインでのバレルの技術はルーキーイヤーで2位に入ったことで証明されていたが、今回のサンセットビーチでのカノアのライディングは往年のミック・ファニングを彷彿させるようなスタイルとパワーだった。
次の舞台は別荘もあるポルトガル。コロナ禍に多くを過ごした場所であり、2017年、2019年に3位に入っている得意な場所だ。
ここでイエロージャージを獲得する可能性も十分にあるだろう。
2戦連続でワイルドカードが制覇
パイプラインではウィメンズサイドでローカルのモアナが優勝。
今回のサンセットビーチではメンズでバロン・マミヤ(HAW)が優勝と2戦連続でワイルドカードが制覇。
メンズのワイルドカードがCT優勝を果たしたのは2008年のタヒチ戦、ブルーノ・サントス(BRA)以来と実に14年ぶりの快挙。
CTの歴史に新たな記録が刻まれた。
「本当に信じられないね。パイプの方が自分は上手くやれると思っていたんだ。パイプなら特別な準備をしなくても、自分的にはどんなコンディションでも対応出来ると思っているからね。この優勝、現実味がない…。僕のために尽くしてくれた母と父、ショーン・ワードに感謝したい。彼が初日からずっと一緒にいてくれ、辛い時でも助けてくれたのさ」
バロン・マミヤ
QFでは同じハワイアンのセス・モニーツを相手に序盤から主導権を握り、最後にはダメ押しの7ポイントで圧勝。カイオ・イベリ(BRA)とのSFではプライオリティを使用して確実にスコアを重ね、ラスト1分、ニード3.30が必要なシチュエーションに3.87を出して地元の応援団を沸かせていた。
カノアとのファイナルでは更に調子を上げてここまで隠していたレイバックを披露。それは先輩ローカルのパンチョ・サリバン、サニー・ガルシアを彷彿させるようなパワーで2本の8ポイントをスコア。
終わってみればコンビネーションの圧勝だった。
「2021年のコンテストの成績には失望していた。QSでは怪我からの復帰後で勝てず、自分の思い通りにならないことが沢山あったよ。ツアーに参加していないのに、ワイルドカードでパイプに出場して更にここでワイルドカードを手に入れた。本当に感激しているよ」
バロン・マミヤ
この優勝でイエロージャージを手に入れたバロン。
まだ発表はされていないが、次のポルトガル戦もワイルドカードとして参加することが予想される。
『Hurley Pro Sunset Beach』メンズ結果
1位 バロン・マミヤ(HAW)
2位 五十嵐カノア(JPN)
3位 カイオ・イベリ(BRA)、イーサン・ユーイング(AUS)
5位 エゼキエル・ラウ(HAW)、セス・モニーツ(HAW)、ジェイク・マーシャル(USA)、ジャック・ロビンソン(AUS)
ルーキーの台頭
ウィメンズサイドではシーズン前から粒揃いと言われていたルーキーが台頭してきた。
Round of 16ではワールドチャンピオン&五輪金メダリストのカリッサ・ムーア(HAW)を始め、タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)、ステファニー・ギルモア(AUS)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)、レイキー・ピーターソン(USA)を全て5名のルーキーが倒したのだ。
その中でもガブリエラ・ブライアン(HAW)と、サクラことベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)はSFまで残り、ベスト4入りを果たした。
逆に開幕戦をコロナで欠場、今回ガブリエラに負けて9位になったステファニーはこのままだと18名から12名にカットされる「ミッドシーズンカット」に残れるかどうかが気になってくる。
34歳とウィメンズ最年長の彼女がポルトガル、自国オーストラリアでの2連戦で巻き返してくるのかに注目したい。
「基本的に強烈な波で、調子を掴むことが出来なかったの。ガブリエルとの戦いは私にとって不運だった。彼女がいつもここで良いサーフィンをしているのを見てきたわ。早いラウンドで負けてしまったけど、このような敗退はただ振り払うしかないの。今はヨーロッパに向かうことを楽しみにしている。私に出来ることは前進して勝ち残ることだけよ。今年のルーキーはハワイ出身が多く、彼女達は足腰がとても強い。自分のキャリアを振り返るとホームブレイクで一年をスタートさせることがどれだけ有利だったかを考えてしまうわ。ハワイ出身の彼女達にとって、ホームブレイクの快適さは本当に素晴らしいことなのよ」
ステファニー・ギルモア
コスタリカ人初のCT優勝
ファイナルはルーキーを倒したマリア・マニュエル(HAW)、ブリッサ・ヘネシー(CRI)のカード。
オリンピアンでもあるブリッサは8歳の頃にオアフ島・ノースショアに移住しており、この手の波は得意としている。カウアイ島出身のマリアも然り。
最初のマッチアップはブリッサが5ポイント、マリアが6ポイント。中盤は両者共にバックスコアを伸ばせず、後半に5ポイントを出したブリッサが僅かに上回り、リップと共に叩きつけられたマリアのミスを尻目に次の波でブリッサは7ポイントをスコア。
自身のCT初優勝と同時にコスタリカ人としてもCT初優勝と歴史に残る勝利をおさめた。
「ずっとこの瞬間を夢見てきたけど、実現出来るとは思っていなかったわ。マリアとの対戦はとても光栄だった。彼女はこの場所と素晴らしい関係を持っている。私の人生に関わった全ての人に感謝したい。今日この舞台に立てたのもその人達のおかげだわ」
ブリッサ・ヘネシー
感極まって涙ぐんでいたバロンとは対照的に笑顔で優勝直後のインタビューに答えたブリッサ。
次のポルトガル戦では初めてイエロージャージを着ることになる。
これからツアー一行はポルトガルに飛び、3月3日〜13日に第3戦『MEO Pro Portugal』が開催。
その後、4月にはベルズ、マーガレットリバーの2連戦が行われ、前半の5戦が終了する。
この折り返し地点で今シーズンから導入される「ミッドシーズンカット」が遂行され、残った選手は後半戦へ。
脱落した選手はCS(チャレンジャー・シリーズ)で翌シーズンのクオリファイを目指すことになる。
CT第2戦『Hurley Pro Sunset Beach』ウィメンズ結果
1位 ブリッサ・ヘネシー(CRI)
2位 マリア・マニュエル(HAW)
3位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)
5位 ジョアン・ディファイ(FRA)、ルアーナ・シルヴァ(HAW)、モリー・ピックラム(AUS)、インディア・ロビンソン(AUS)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(空海)