現地時間10月5日、カリフォルニア・マリブのファーストポイントを舞台とした2022年ロングボードツアー最終戦『Cuervo Classic Malibu Longboard Championship』が終了。
デヴォン・ハワードの辞任、昨シーズン45歳のワールドタイトル史上最年長記録を樹立したジョエル・チューダーが出場停止処分になるなど波乱の幕開けとなったツアーだったが、開幕戦のオーストラリア・マンリーでは極上のビーチブレイク、第2戦はハンティントンビーチらしいトリッキーなコンディション。
そして、最終戦はマリブを象徴する美しいラインナップが姿を現し、終わってみれば最高のシーズンになった。
ハリソンが初のタイトルを獲得
ファイナルデイのファーストポイントは前日よりサイズアップした公式3-4ftレンジ。
ビーチブレイクとは格が違う長いノーズライドが勝負の鍵を握り、いかにクリティカルセクションでノーズをしているか、いかに足の指が正確にハングしているかがスコアの差となって現れていた。
メンズファイナルはカレントリーダーのカニエラ・スチュワート(HAW)と開幕戦で優勝していたハリソン・ローチ(AUS)の二人。
共にタイトルを獲得すれば初となる戦いはカニエラの先行で始まったが、8.83をスコアしたハリソンがバックアップを重ねてリード。後半、タイトルのプレッシャーからか、ハリソンがワイプアウトした一方、カニエラは逆転のチャンスに恵まれた。
QF、SFと土壇場での逆転劇を2ヒート続けていたカニエラはファイナルでもその勝負強さを発揮してノーズライドとクラシカルなターンでインサイドまで繋いだものの、逆転には僅か0.04ポイント届かず…。
この勝負はハリソンが制して10,000ポイントを手に入れた。
2022年のツアーは全3戦の上位2戦のポイントで決まり、最終戦のみ優勝ポイントが2倍の10,000。つまり、ハリソンは15,000の満点で初のワールドタイトル獲得に成功したのだ。
「本当に嬉しいね。昨年はあと一歩のところでタイトルを逃した時、どれだけのものが必要なのか悟ったのさ。悔いが残らないようにただ自分の道を突き進んだよ。最後に乗った良い波では転んでしまい、カニのためにドアを開けてしまった。彼はそのチャンスをものにして、ビーチの解説者がアナウンスを聞いた時、やられたなと思ったよ。逆転に届かなかったと聞いた時はほっとしたね。今までロングボードにこのような舞台はなかったし、サーフィンのスタイルも違かったから、この舞台でタイトルを獲れて本当にラッキーだった」
世界有数のライトのポイントブレイクでマリブに並ぶロングボードの聖地ヌーサでフリーサーフィンの帝王と呼ばれていたハリソンだが、2019年にデヴォン・ハワードがツアーディレクターに就任してクラシック回帰になったタイミングでジョエルと共にツアーに入り、最初のシーズンから中心人物になっていた。
ジョエル、ハリソン、今回タイトル争いをしたカニエラなどのスタイルが現在のロングボード界のスタンダードなのだ。
昨シーズン、ジョエルとのタイトル争いに敗れた屈辱を晴らして夢だった世界一になったハリソン。
ビーチ凱旋でビールを飲んでいた時の表情は本当に晴れ晴れとしていた。
ソレイユがホームで2度目のタイトルを獲得
今回の最終戦のみ優勝ポイントが2倍の10,000になるフォーマットの恩恵を最も受けたのはウィメンズの勝者だった。
最終戦前の予想では開幕戦で優勝、第2戦で2位だったホノルア・ブロムフィルド(HAW)が2位とのポイント差を見てもタイトルの本命。
続いて第2戦で優勝していた ケリス・カレオパア(HAW)が対抗と言われていたが、終わってみればマリブをホームにするソレイユ・エリコ(USA)が16歳のソフィア・コーヘーン(HAW)とファイナルを戦って優勝。
ホノルアとケリスを出し抜き、見事に2度目のワールドチャンピオンになったのだ。
「この3ヶ月間、イメージしていたことが形になったわ。地元での優勝は、これ以上ないほど素晴らしいものね。この優勝のために費やした献身と犠牲が報われた。本当に嬉しいわ。友人や家族、父や母、サポートしてくれたCJ・ネルソンにとても感謝している。他にも2日間支援してくれたみんなにも感謝しているわ。本当に嬉しい」
Round of 16以降、全てのヒートで8ポイント台を出していたソレイユ。
生まれはカウアイ島ながらマリブで培った彼女のスタイルはまさにクラシックであり、現代のワールドタイトルにふさわしい優雅さだった。
日本人選手は全て9位でフィニッシュ
2022年シーズンは田岡なつみ、井上鷹。
第2戦、最終戦は吉川広夏が出場と3名の日本人選手が戦っていた。
最終戦は全て9位でフィニッシュ、最終ランキングでは田岡なつみ、井上鷹が11位。
吉川広夏が12位となった。
2023年は開催地とフォーマットが一新する
WSLは最終戦に併せて2023年のスケジュールを公表。
ツアーは8月〜10月にかけて全4戦。
8月30日〜9月2日にオーストラリアのベルズビーチで開幕戦、第2戦は9月19日〜25日にCT、ISAの舞台として日の目を浴びているエルサルバドルで開催。
残り1戦は後日発表される。
最終戦は今年と同じくマリブで10月3日〜13日に開催されるが、最終戦は前3戦によるポイントの上位選手と2021年トップ8の選手によって争われ、それまでの結果に関わらず、最終戦で優勝した選手がワールドチャンピオンになる新しいフォーマットになる。
なお、2022年にロングボードツアーの統括者、シニアマネージャーに就任したキラ・シールによると2023年ツアーの選手構成は2022年のトップ8と2022年後半〜2023年前半に開催されるリージョナル毎のクオリファイで選ばれるとのこと。
すでに北米リージョナルのクオリファイイベントのファーストイベントが9月30日〜10月1日にピスモビーチで開催されている。
ジョエル・チューダーの出場停止処分については2022年シーズン終了までで2023年には解除されるとのことだ。
日本人選手はトップ8に入っていないため、リージョナル毎のクオリファイで再選されることになるだろう。
『Cuervo Classic Malibu Longboard Championship』結果
1位 ハリソン・ローチ(AUS)
2位 カニエラ・スチュワート(HAW)
3位 テイラー・ジェンセン(USA)、デクラン・ワイトン(AUS)
5位 カイ・サラス(HAW)、コール・ロビンス(USA)、トニー・シルヴァニ(USA)、ベン・スキナー(GBR)
9位…井上鷹(JPN)
ウィメンズ
1位 ソレイユ・エリコ(USA)
2位 ソフィア・コーヘーン(HAW)
3位 ケリス・カレオパア(HAW)、メイソン・シューマー(USA)
5位 アリス・レモーン(FRA)、クロエ・カルモン(BRA)、ホノルア・ブロムフィルド(HAW)、レイチェル・ティリー(USA)
9位…田岡なつみ(JPN)、吉川広夏(JPN)
2022年ロングボードツアー最終ランキングトップ5
1位 ハリソン・ローチ(AUS) 15,000pt
2位 カニエラ・スチュワート(HAW) 11,700pt
3位 テイラー・ジェンセン(USA) 11,085pt
4位 デクラン・ワイトン(AUS) 9,127pt
5位 ベン・スキナー(GBR) 8,645pt
11位…井上鷹(JPN) 5,602pt
ウィメンズ
1位 ソレイユ・エリコ(USA) 13,042pt
2位 ケリス・カレオパア(HAW) 11,085pt
3位 ソフィア・コーヘーン(HAW) 10,082pt
4位 ホノルア・ブロムフィルド(HAW) 9,745pt
5位 クロエ・カルモン(BRA) 8,645pt
11位…田岡なつみ(JPN) 5,602pt
12位…吉川広夏(JPN) 4,895pt
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)