4年に一度しかないオリンピックは出場選手だけではなく、カメラマンにとっても人生に関わる貴重な期間となる。
一瞬を捉えた、たった1枚の写真がそのカメラマンの人生を変えることもある。
パリ五輪のサーフィン競技に関しては、まだこれから素晴らしい写真が撮影される可能性があるが、現時点ではR3で五十嵐カノアを倒したガブリエル・メディナのまるで神様になったような奇跡的なショットが世界中のメディアで注目を浴びている。
この写真を撮影したのは、約10年前にタヒチの美しさに魅了されてパートナーと共に移住したフランスのジェローム・ブルイエ(Jerome Brouillet)で、すでにアメリカのTIME誌、日本の時事通信社などにこの写真についてインタビューを求められている。
「タヒチでは、サーフィン競技を撮影するメディアボートが2隻ある。公平を期すために、天候、波、光、ボートの運転手が正しい位置にいること。そして、カメラの使い方を知っているという条件を満たせば、チョープーでサーフィンの良い写真を撮ることが可能だよ。あとは経験、タイミング、そして少しの運だね。これがただの良いショットと素晴らしいショットを区別するんだ」
ジェロームの話す少しの運というのは、その写真を公開するタイミングも含まれている。
現地の大半のカメラマンはライディングの写真を連写しているため、同じメディアボートに乗っていたカメラマンが同じような写真を撮影していた可能性が十分にある。
彼が所属しているフランス・パリに本社があるニュース通信社AFPは今回の1枚を特別な瞬間と判断してすぐに公開した。
それが世界中からの反響を呼んだのだ。
また、後で整理することを考慮してジェロームは連写することを控えており、ガブリエルがバレルから飛び出した後もたった4枚しか撮影していなかったと話す。
その4枚の内の1枚があの写真なのだ。
史上最高のスポーツ写真、2024年夏季オリンピックの勝利を象徴する写真との声もあり、ガブリエル自身もこの写真をInstagramに投稿して600万以上の「いいね!」を集めている。
3年越しのリベンジを果たしたギャビー
CTで3度のワールドタイトルを獲得したガブリエル・メディナでさえ、オリンピックのメダルは喉から手が出るほど欲しい名誉なのだ。
3年前、コロナ禍で開催された東京五輪ではそれを五十嵐カノアに阻まれ、ブラジルのサーフィンファンを巻き込む大論争になった。
今回のパリ五輪のR3では勝負の決め手となった9.90を出した後も東京五輪のケースを考えて、決して手を緩めることなく、全ての波を全力で取りに行っていた。
そして、インタビューでも、まず東京五輪での話を持ち出していた。
「東京五輪での敗北は辛かった。メダルに近かったからね」
「波は本当に完璧だった。飲み込まれると思ったけど、トライしようと決意したんだ。風のおかげでホールドされ、その後全力で走り抜けた。波的には10ポイントだった。9.90を出して興奮しているよ。波が良ければ勝てると思う。今日のような波があれば、誰が最高の波を取るかの勝負になるよね。サーフィンにとって夢のような日だった。こんな波でオリンピックをやるなんて、想像もしていなかったさ」
パリ五輪のサーフィン競技は現地時間7月31日10時15分にネクストコールがあり、12時(日本時間8月1日7時)に女子R3H1から再開予定。
● 9:24 松田詩野 vs Nadia EROSTARBE(ラウンド3ヒート5)
(空海)
▼パリ五輪サーフィン特設ページ