サーフィン競技、2度目のオリンピックは初出場のカナダ、中国、エルサルバドル、メキシコ、ニカラグア、スペインを含む21カ国の選手が出場。
その頂点が現地時間8月5日のウェイティングピリオド最終日に決まった。
最終日のタヒチ・チョープーは南南西ウネリが強まる傾向となる予報だったが、実際には波数が少なく、僅か1本しか波に乗れずにチャンスを得られないまま敗退した選手も…。
今回の五輪は大会3日目がウェストボウルと呼ばれるリアルなチョープーが姿を現して最も良く、その後ストームが通過した後は風も悪く、不安定なコンディションが続いてしまった。
開催国フランスが二つのメダルを獲得
東京五輪で五十嵐カノアと都筑有夢路がメダルを獲得したように、今回のパリ五輪では開催国フランスが二つのメダルを獲得した。
男子はローカルで子供の頃からチョープーの波にチャレンジしていた22歳のカウリ・ヴァーストがローカルナレッジを活かして金メダルを獲得。
SFではバレル選びに苦戦したペルーのアロンソ・コレアを尻目に難しいバレルを2本メイクしてクレバーな勝利。
オーストラリアのロボことジャック・ロビンソンとのファイナルでは開始約10分に入ったセットでファイナルデイのハイエストとなる9.50を出すとすぐに2本目で8.17を出してトータル17.67を揃えた。そのセットでロボも良いバレルをメイクしたが、7.83とカウリのスコアを上回ることはできず…。
中盤〜後半はポテンシャルがある波がほぼ入らず、ロボは2本目に乗るチャンスもなく、タイムアップとなった。
「夢が叶ったよ。今は信じられない気分だね。歴史を作った。それは自分のため、全てのタヒチ人のため、ポリネシアとフランスのサーフィンのため。タヒチとフランスを代表できた。これ以上誇りに思うことはないね。本当に嬉しい。長い1日だった。二つのヒートに最高のファイナル。ずっとマナを感じていたよ」
奇しくもロボはSFで1本しか乗れなかったブラジルのガブリエル・メディナに勝利していた。
ロボとガブリエルの対戦はノープライオリティの開始直後がバチバチで、二人はほぼ接触するような距離感だった。
「自分の内なる競争心は常にもう一歩上を目指したいと思っている。これまでの長いキャリアを考えると、今が最も良い時期だと感じる。これからもっと結果を残したい」
女子はアメリカが金メダルを防衛
女子は東京五輪で金メダルを獲得したカリッサ・ムーアが大会4日目のQFで敗れていたが、次世代のキャロライン・マークスがファイナルまで勝ち上がり、金メダルを獲得。
女子は2大会連続でアメリカが防衛に成功した。
ブラジルのタティアナ・ウェストン・ウェブとのファイナルは、キャロラインが後半に最も良いセットを掴んでボトムターンがストレートでプルイン。短いながらバレルをメイクして7.50を出して主導権を握った。後半、タティアナも追い上げて最後の1本で逆転のチャンスもあったが、僅かにスコアが足りずにキャロラインが金メダルを獲得した。
「タティが必要なスコアは正確には把握していなかった。ただパドリングしてもう一つのスコアを取ることに集中していたわ。スコアが出るのに時間がかかり、みんなに『どうなったの?』って聞いたけど、誰も分からなかった。彼女が十分なスコアを得ていないとコールされた時は涙が溢れた。本当に感情的になったわ。このような重要な瞬間に自分の全人生の努力や経験が詰まっている。本当に特別よ」
ISAのワールドジュニアチャンピオンでもあるキャロラインは、昨年ワールドタイトルを獲得。
そして、今回オリンピックの金メダルという名誉を追加した。
東京五輪は最年少のサーファーとして出場。サーフィン競技の金メダル最年少記録も更新した。
2022年のワールドタイトルを争う『WSL Finals』でも僅かな差で優勝を逃して2位になっていたタティアナ。
今回も僅かな差で頂点になることはできなかった…。
「世界は私に2位になって欲しいみたい。みんなは1位は最悪で2位がベストと冗談で言っていたわ。でも、私の大好きな波でサーフィンできて光栄よ。特にこの数ヶ月、タヒチで沢山の時間を過ごせた。とても素晴らしかったわ」
3年越しの夢を叶えたギャビー
SFでは僅か1本しか波に乗れず、ロボに敗れたブラジルのガブリエル・メディナだったが、ペルーのアロンソ・コレアとの3位決定戦では合計8本と多くの波に乗り、7ポイント台を3本。トータル15.54で圧勝。念願のメダル獲得に成功した。
ガブリエルは東京五輪で五十嵐カノアにSFで逆転負けを喫したことを常に心に留めており、パリ五輪のR3でリベンジを果たした。メダルマッチとなったアロンソとのカードでも一切手を緩めることなく、全力を尽くしていた。
「気持ち良いね。ここに来る目標はメダルを獲得することで、今日はその機会が2回あった。一つ目は対処できなかった。でも、それも含めて嬉しい。全力を尽くしたよ」
3位決定戦ではガブリエルに敗退したものの、ペルーのアロンソ・コレアは優勝候補が揃ったベスト4の中で唯一ダークホースとして健闘。
初の五輪出場では多くのことを学んだようだ。
「自信が鍵だね。自信が全てだよ。海に入る時の自信が自分を本当に変えることができる。サーフィンを本当に限界まで引き上げることができるんだ。もっと上手くなれると感じている。これからもトレーニングを続け、競技を続け、全力で挑戦するよ」
序盤の困難を乗り越えてのメダル獲得
開催国フランスでもう一つのメダルを手に入れたのは、コスタリカのブリッサ・ヘネシーとの3位決定戦を制したジョアン・ディファイだった。
R1では額をリーフにヒットして流血。ヘルメットを着用して果敢に攻め、そのヒートは負けたものの、R2からはオーストラリアのモリー・ピックラム、フランスのヴァヒネ・フィエロ、アメリカのカリッサ・ムーアと優勝候補を全て倒す強さを見せていた。
「素晴らしい気持ち。本当にほっとしたわ。オリンピックの他のスポーツをテレビで見ていると、改めて価値が分かる。これは本当に一生に一度の機会よ。ストレスと欲望が毎日積み重なり、今日がキャリアの中で最もストレスの多い日だったと思う。フランスを代表してメダルを獲得できたわ」
もし、3位決定戦で勝っていたら、コスタリカ人で初の水泳以外のメダル並びに20年以上ぶりのメダルとなっていたブリッサ。
残念ながら今回はそのチャンスを逃したが、彼女らしい美しい言葉で感想を述べていた。
「自分の国との繋がり、自分自身やこの場所との深い繋がりを持てたことは、まさに素晴らしい経験だった。人生が変わるような体験だったわ。メダルを獲得したい気持ちはもちろんあったけど、この旅で学んだこと、波の変化を体感し、人生で最高のバレルと最悪のワイプアウトを体験した。それが何よりの贈り物だわ」
フェルナンド・アギーレ氏のメッセージ
計画があり、希望があり、夢があります。
私たちは、チョープーでのサーフィンの計画が夢見た通り、計画通りに進むことを願っていました。
しかし、全てが計画を遥かに超えて、期待以上の結果となりました。
非常に幸せで満足しています。
タヒチに感謝します。パリ2024に感謝します。IOCに感謝します。
チョープーのコミュニティに、この素晴らしく忘れられない時間を過ごさせてくれたことに感謝します。
タヒチでのこの数週間を決して忘れることはありません。
魔法のようで、驚くべきものだった。
私たちの心に生涯残るでしょう。
ISAパリ2024公式サイト:https://isasurf.org/event/paris-2024/
(空海)
▼パリ五輪サーフィン特設ページ