(親友同士のファイナルはまたしてもケイティが優勝) PHOTO: © WSL/Thiago Diz

ケイトリン・シマーズ&イタロ・フェレイラが優勝!CT第2戦『Surf Abu Dhabi Pro』

現地時間2月16日、3日間に渡って開催されたCT第2戦『Surf Abu Dhabi Pro』が終了。

会場のサーフアブダビは風の影響が入った時間帯もあったが、ウェーブプールらしく、ほぼ一貫したコンディション。
ファイナルデイはメンズ、ウィメンズ共にQFから始まり、イタロ vs カノアの東京五輪のリマッチなどもあり、見応え十分だった。

世界トップに返り咲いたケイトリン・シマーズ

(最もクリエイティブなラインを描いていたケイティ)
PHOTO: © WSL/Max Physick

多くの選手はラウンドが進むのに連れて温存していた技を披露。
ハイスコアもラインも上昇していかに安定して7〜8ポイント台を出すかが勝敗の鍵を握った。

ウィメンズサイドはQFでヴァヒネ・フィエロ(FRA)が初の8ポイント台に乗せてケイトリン・シマーズ(USA)が8.90とハードルを上げた。
そして、SFではモリー・ピックラム(AUS)も8ポイント台を出してヴァヒネを倒し、遂にケイティが9.57とイベントを通してのハイエストをスコアした。
サーフアブダビは完璧過ぎたサーフランチに塩水と風という自然の要素を加えたことで適度に不規則になるため、選手の演技に自由度が生まれる。
ケイティは誰もやっていなかった最初のセクションでの大きなラウンドハウスカットバックを披露するなど最もクリエイティブなラインを描いていた。

PHOTO: © WSL/Max Physick

ケイティが優勝した昨年のパイプラインと同じカードとなったファイナルは最後のランで勝負が決まる緊迫したゲームとなった。

先攻はモーリーで、ライトはクリティカルセクションでのターンとバレルで7.00とまずまずのスタートを切るが、レフトはバレルで潰されてしまう。
一方、後攻のケイティは最後のマニューバーで失敗するものの、バリエーション豊かなターンとバレルの距離が評価されて8.67とモリーを上回り、レフトでも7.00と試合を有利にする。

2本目のランは両者共に8.00、モリーはレフトで7.70とケイティを上回り、トータルでも15.70と逆転に成功する。
最後のレフトのランを残した時点でケイティが優勝に必要なスコアは7.03。ターン、バレルセクションも上手くこなしたが、後半にミスをしてしまう。
しかし、バレルの深さなどを評価され、7.43とモリーを上回った。

「モリーと一緒にサーフィンしている時は、本当に楽しくてお互い笑い合ってる気がする。ウェーブプールの中では、波待ちの間に最もプレッシャーを感じると思う。自分が何をすべきかは分かっているし、波が来ることも確実だけど、それを成功させられるかはまた別の話。ただ純粋にスキルを使うしかない。普通の海なら『いい波が来るかも』という運の要素があるけど、プールでは波が必ず来る。でも、その波でスコアを出さなきゃいけない。だからこそ、この優勝は私にとって特別なものよ」

開幕から2戦続けてファイナル進出を果たし、早くも1勝目を上げたケイティはカレントリーダーの座を手に入れ、パイプラインで優勝したタイラーからイエロージャージを奪回した。
19歳にしてすでに3シーズン目で、9度目のCTファイナル進出に7度目の優勝と期待を裏切らない活躍を続けている。

「正直、ただ感謝の気持ちが一杯よ。サーフィンに感謝しているし、波に乗れることにも感謝している。それが本当に楽しくて、大好きなの。そして、モリーにも感謝している。彼女がいるからこそ、自分もベストを尽くせた。お互いに引き上げ合うのが凄い楽しいのよ。友達や家族、私の周りにいる愛に感謝しているわ」

(モリー・ピックラム)
PHOTO: © WSL/Max Physick

良き親友であり、良きライバルでもあるケイティとファイナルを共有したモリーは開幕戦での3位と今回の2位でランキング2位に浮上。
昨年同様に最高のシーズンスタートを切っている。
サーフアブダビでは恵まれた体格を活かしたパワフルなライディングと試合がオフになった時のカラオケで注目を集めていた。

「みんながこの波を完全にぶっ壊すように攻めているのを見て、本当に特別な気持ちになった。こんな環境、これまでの人生で見たことがなかったわ。ボーイフレンドと一緒にこの瞬間を共有できたことが本当に嬉しいし、美味しい食事やカラオケ、人々、そしてこの最高の雰囲気を楽しめた」

カノアを倒したイタロが優勝

(イタロ・フェレイラ)
PHOTO: © WSL/Max Physick

ファイナルデイでは、前日に優勝候補のフィリッペを抑えた日本の五十嵐カノアの活躍を期待したが、QFではイタロ・フェレイラ(BRA)の勢いを止めることができなかった。

イタロは2024年の前半にミッドシーズンカットを心配するほどの成績だったが、タヒチ戦での優勝から人が変わったかのように以前のビーストぶりが復活。
『Lexus WSL Finals』ではローシードから勝ち上がり、ワールドタイトル目前まで迫っていた。

今シーズンもそのエネルギーが維持しており、開幕戦で3位。
サーフアブダビではどんな状況でも集中力を切らせず、和井田理央(IND)とのファイナルも最初のランで8ポイントを2本揃えて勝負を決めた。
ウェーブプールイベントでは、ブラジリアンとしてガブリエル、フィリッペ に続く3人目の勝者となった。

PHOTO: © WSL/Thiago Diz
PHOTO: © WSL/Max Physick

「本当に興奮している。今朝起きてから波を見ながら自分の心をそのランに向けて準備していたんだ。ウェーブプールでは、波に乗ったり、パフォーマンスを発揮できるチャンスがあると本当にワクワクする。いつもよりも強く、大きく攻めようと思って、それを実行したよ。本当に素晴らしい瞬間だったし、チーム全員がサポートしてくれて、嬉しかった」

今回の優勝でランキングトップとなり、次のポルトガル戦ではイエロージャージを着て戦うことになるイタロ。
まだシーズンは始まったばかりなので先は読めないが、2度目のワールドタイトル獲得に向けて今回の優勝は大きな自信になるだろう。

快進撃を続けたリオ

(確実に成長を続けているリオ)
PHOTO: © WSL/Manel Geada

昨年のフィジーでの最終戦に続き、2度目のファイナル進出となったリオ。

CT初優勝はお預けとなったが、QFでは勢いがあったルーキーのジャクソン・バンチ(HAW)を完璧に抑え、イーサン・ユーイング(AUS)との接戦を勝ち上がった。

「嬉しい気持ちと、ちょっと悲しい気持ちが混ざっている。もちろん、ファイナルに進出できて嬉しいけど、同時に『負けちゃった』って感じもあった。自分の情熱が消えてないことが嬉しい。でも、満足はしてないから、ポルトガルに向けてもっと頑張ってトレーニングしようと思ってる。この舞台に立てて嬉しい。アブダビは本当に美しいし、みんな温かく迎えてくれる。本当に恵まれていると感じているよ」

(共にレイノス・ヘイズのコーチの元で戦った二人)
PHOTO: © WSL/Max Physick
(5位でフィニッシュしたカノア)
PHOTO: © WSL/Manel Geada
(多くの観客が集まった)
PHOTO: © WSL/Manel Geada
PHOTO: © WSL/Thiago Diz

次のCT第3戦『MEO Rip Curl Pro Portugal』は3月15日〜25日にポルトガル西部・ペニシェ「Supertubos」で開催される。

『Surf Abu Dhabi Pro』結果
1位 イタロ・フェレイラ(BRA)
2位 和井田理央(IND)
3位 イーサン・ユーイング(AUS)、ジャック・ロビンソン(AUS)
5位 ミゲル・プーポ(BRA)、ジャクソン・バンチ(HAW)、五十嵐カノア(JPN)、ヤゴ・ドラ(BRA)

ウィメンズ
1位 ケイトリン・シマーズ(USA)
2位 モリー・ピックラム(AUS)
3位 ヴァヒネ・フィエロ(FRA)、ガブリエラ・ブライアン(HAW)
5位 エリン・ブルックス(CAN)、キャロライン・マークス(USA)、ベラ・ケンワーズィ(USA)、ソーヤ・リンドブラッド(USA)

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(黒本人志)

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