(2011年、クイックシルバープロ・ニューヨークのファイナリストとなった、オウエン・ライトとケリー・スレーター) Photo by snowy

「2011年のニューヨークは大きなターニングポイントとなった」 – F+

F+(エフプラス)

2011年のクイックシルバープロニューヨークというコンテストは、今思い返せばいろんな意味で大きなターニングポイントになった試合だと思う。

(計算ミスだったがワールドタイトル確定をガイダンスされたケリー・スレーター) Photo by Steve Sherman

ボビーの爆弾発言ばかりではなく、計算ミスでケリーのワールドタイトルを確定としたASPのポカ、エアーにワンマニューバーで9点台を出すというエアー重視のクライテリアへの変化、レールワークを駆使したビッグターンへの過小評価などなど、様々な方向で今現在に続く多くの変化があった試合だ。あの変化がなかったら、テイラー・ノックスはあと何年もツアーにいたに違いない、と今でも残念に思う。

2011年というのはツアーが大きく変化しようとした年であり、無謀ともいえるシステムの変更が行われた年だ。目指したのはサーフィンをよく知らない人にもわかりやすくシンプルなシステム、ビーチのギャラリーがすごいと思うものに高配点、のように、一般の人に寄り添う方向への変化だ。
おそらくテニスツアーのそれを参考にし、WCT、WQSのランキングをまとめて統一ランキングにして、毎試合ランキングが入れ替わり、シーズン半ばでCTメンバーの入れ替えを行う。考えてみれば乱暴この上ないけど、ランキングの1本化でいろんなことが素人にも見えやすくなる? し、今も昔もギャラリーがわくのはエアーなので、そこ、つまりは現在のワオ! なアクションに高配点とすることで、普通の人の感覚により近いポイントを出そうという方向への転換。本当に難しいことをしているものにポイントを出すのとはちょっと違う感じというか、玄人だけがわかってもダメ、みたいな、派手ならいいの? みたいな、なんかそれ違うんじゃね? という感じだった。

(ニューヨークのイベントのプレスルーム) Photo by snowy

問題のボビーの暴言インタビューは、ラウンド2でのヒート後の勝利者インタビューだった。私は現地ニューヨークにいて、その映像をホテルの宴会場のようなゴージャスなプレスルームのモニターで見ていた。見ていたというよりは、仕事をしていて見ていなかったけど、あまりにもFXXKがたくさん聞こえたので、なになに? みたいな感じでスクリーンを見たら、ボビーが吼え、トッド・クライン困惑、みたいな。
試合進行中だったのでプレスルームにはそんなに人はいなかったけど、プレス担当のおねぇさんたちがわさわさと動き出し、しばらくして、おそらく10分もしないうちにASPの広報の人がきて、ボビーは無期限の出場停止になった、と教えてくれた。

あのインタビューの中ではボビーが考えていることの詳細はのべなかったし、こんなクソみたいなツアーやってらんねぇよ、だからやめてやる、に終始しているわけだけど、後日、ほかのメディアとのインタビューやボビーのスポンサーだったFTW(Fuck The World)のインタビューとかで理由をいろいろ述べていて、それらの主張は本当に正しいと思うし、当時でも一部の選手には、やり方には問題があったけど、ボビーの言っていることはすべて正しい、と支持されていた。

Photo by snowy

まずは統一ランキングに関して、まるでレベルの違うWCTで得た1000ポイントと、WQSで得た1000ポイントが同じはずもなく、そこに何らかのハンデをつけたとしても統一はできない。世界のトップサーファーたちの中で戦っているものと、その下のレベルで戦っているものが、同じ土俵に立ってのランキング争いは不可能だ。1票の格差ならぬ、1ポイントの格差。これは実に正しくて、結局この統一ランキングはすぐに消えていくわけだけど、この年の統一ランキングの恩恵を受けてニューヨーク直後、9月のトラッスルズからCT入りした選手の中に、ガブリエル・メディーナとジョンジョン・フローレンスがいたのもちょっと皮肉な出来事だった。

次にシーズン半ばでの入れ替えのデメリット。それによって選手は1年単位での契約を結ぶことが難しくなり、なおかつシーズンが短いだけに、ちょっとしたケガや故障でリクオリファイが絶望的になる。
まぁ、これはハーフカットということで形を変えて今も継続しているわけだけど、確かに選手たちの契約書にハーフカットをメイクしたらどうこう、できなかったらどうこうみたいな条項が入っているケースが多いことを考えると、契約期間の短縮に結びついているといえるかと思う。せっかく苦労してクオリファイしても、半年しかCT選手としての契約が保証されないってのは、厳しい現実。

そして最後にサーフィンはメジャースポーツにはなりえない、という話。これは当時のASPがサーフィンをアメリカのメジャーな商業スポーツのような形態に発展させよう、という目的のもとにこれらの改革を行っていたことへの根本的な反論だった。
これこそが、いつもいつもボビーは正しい、と私が思う所なんだけど、長くなったので、来週ね。

F+編集長つのだゆき

blank

「国内外サーフィン界の最新トレンド・ニュースを読み解く」をコンセプトに、最新サーフィンニュースをお届けします。

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。