現地時間4月12日、今年で4年連続の開催となる中米エルサルバドルを舞台としたCT第4戦『Surf City El Salvador Pro』が終了。
ウェイティングピリオド初日に始まり、最終日にファイナルデイを迎えるほど自然に翻弄され、波乱も多かった今年のイベントだが、最後はプンタ・ロカのポテンシャルを最大限に活かすような南南西ウネリが入り、最高の形でクライマックスを迎えた。
なお、エルサルバドルは4月25日から『ISA World Longboard Championship』の開催も控えており、世界中からトップロガーが集まることになる。
歴史に残る南アフリカ人対決

PHOTO:© WSL/Emma Sharon
ファイナルデイはメンズ、ウィメンズ共にSFとファイナルの合計6ヒート。
会場のプンタ・ロカは、公式4-6ftレンジ。
朝はクリーンなコンディションから始まり、日中は風の影響が強まる傾向となった。
メンズサイドはツアーで二人しかいないジョーディ・スミスとマシュー・マクギリヴレイの南アフリカ人同士のファイナルとなり、パワーとスタイルで優ったジョーディが1本目にヒートのハイスコアとなる7.33を出し、最後に6.93とバックアップもマシューを上回る圧勝。
2017年のベルズ戦以来、CT通算7度目の優勝を決め、終了直後のインタビューでは涙に声を詰まらせる場面もあった。
「南アフリカ全体にとって、本当に大きな意味がある勝利だね。正直、信じられない。もし、この勝利を2人に捧げられるとしたら、妻と父親に捧げたい。自分の妻と同じようにサーファーたちを支えるそれぞれのパートナーにもね。私にとって本当に大きな意味がある優勝となった。父のボードに乗ってこのファイナルを戦い、勝つことができたのは素晴らしいことさ。自分に、“お前はできる。お前はこれをやるんだ。あと4つの波だ、お前はできる”って言い続けた。本当に長い時間がかかったけど、南アフリカの仲間と一緒にそれを成し遂げることができて本当に嬉しい。マシューについては、良い言葉を何度も言いたい。長年の友人である彼とファイナルを共有できたことは本当に特別なことだよ」
終了間際は二人で肩を寄せて談笑、終了のホーンが鳴った後はジョーディがマシューに思いっきり抱きついて歴史に残る南アフリカ人対決は幕を閉じた。
(ショーン・トムソンによると1984年以来の南アフリカ人対決)

ケリー・スレーターが抜けた今、ツアー最年長の37歳のベテランであるジョーディ。
一時は引退説も流れていたが、2度のJ-Bayでの優勝、ベルズでの優勝経験があるように得意のライトのポイントブレイクでは未だに際立つ存在であり、まだ現役として通用することを証明した。
今回の優勝でランキング5位まで浮上。
ファイナル5を狙えるポジションにいる。
マシューが初のファイナル進出

PHOTO:© WSL/Emma Sharon
2021年から南アフリカの新世代としてツアーを回っているマシューは5年目にして初のファイナル進出を果たした。
クロスビー・コラピント(USA)とのSFでは、十八番のパワーハックで8.17のハイスコアを出し、トリプルバレルをメイクしたクロスビーをかわしていた。
「エルサルバドルが大好きだよ。ライトのポイントブレイクが好きだし、楽しいイベントだった。サポートしてくれた皆さん、ありがとう。ここにいることができて本当に嬉しい。長いイベントだったけど、ファイナルに進出なんて信じられない。ヒートではスマートかつ慎重に波を選び、ベストなサーフィンをすることを心がけた。まだ自分にはできることがある。みんなもそう感じていると思うし、それを発揮できれば良いね」
エルサルバドルは昨年3位になった相性が良い場所。
ジョーディ同様にJ-Bayでライトのポイントブレイクは鍛えられているため、開幕から3戦続けて17位だったのが嘘のような強さを見せていた。
今回の2位でカットライン下から一気に13位まで浮上している。

若手ハワイアンの台頭

PHOTO:© WSL/Emma Sharon
ウィメンズサイドはランキングトップ2がSFで敗退。
ガブリエラ・ブライアン(HAW)はポルトガルに続きのファイナル進出。エルサルバドルでも昨年に続きのファイナル進出。イザベラ・ニコルス(AUS)は優勝した2022年のマーガレットリバー以来のファイナリストになった。
ヒートは序盤に乗った1本目が共に6ポイント台となり、その後は両者共にバンピーな波に合わせられずにミスが多く、ガブリエラはサーフボードが折れるハプニングもあった。
僅差で進行する中、後半に最後までまとめたイザベラが5.17とバックアップを伸ばすが、ガブリエラがビッグターンのスタートから速いセクションを抜けてのパワーハック、フィニッシュまで綺麗に決めてヒートのハイスコア7.83を返し、トータル14.33で優勝。
昨年のマーガレットリバー以来、通算2度目のCT勝利でランキングもモリーを抜いて2位に浮上した。


「本当にクレイジーなジェットコースターみたいなファイナルだった。ミスもあったけど、“お願い、もう一本波をください。今度は絶対にミスしないから”って思ったわ。本当に最高な気分よ。エルサルバドルでの時間は素晴らしかったし、この場所が大好き。ライトのポイントブレイクは私のお気に入りで、ここは世界でもトップクラス。そんな波で戦えるのは本当に幸せ。そして、私の周りのクルーは最高。応援してくれた地元の皆さん、本当にありがとう。エルサルバドル、最高の時間をありがとう」
ドッグことリチャード・マーシュのコーチの元で戦っている23歳のガブリエラはツアー4年目。
ルーキーイヤーから2位になる活躍を見せ、2024年は遂に初優勝を成し遂げた。
昨年までは成績に波があったが、今年はアブダビで3位、ポルトガルで2位と安定しており、初のファイナル5進出を目指している。
キャリア最高のシーズンのイザベラ

PHOTO:© WSL/Aaron Hughes
双子の姉妹の結婚式という人生で最大級のイベントに欠席という犠牲を払い、ダークホースとして次々と快進撃を続けたイザベラ。
SFではランキング2位だった強豪のモリーに圧勝、ファイナルでも負けたとはいえ安定していた。
2023年、2024年と2年連続でミッドシーズンカットでCS落ちしていたが、今回の2位でカットライン上の7位まで浮上している。
「この場所に戻ってくるのが大好き。人々は素晴らしいし、波も美しいわ。本当に素晴らしい場所よ。感謝したい人が沢山いる。特に家族には、この仕事の一部として理解してくれたことに感謝している。私は心の中では結婚式に出席していたし、今回の遠征は本当に価値あるものだった。素晴らしい1週間だったわ」

ランキング変動とオーストラリアレッグ


ランキングでは5位になったイタロ・フェレイラ(BRA)がカレントリーダーを維持。
2位にイーサン・ユーイング(AUS)、3位にヤゴ・ドラ(BRA)が上がり、バロン・マミヤ(HAW)が4位まで下がっている。
すでに上位3名はミッドシーズンカットをクリアしている。
ウィメンズサイドもカレントリーダーのケイトリン・シマーズ(USA)は不動。
2位にガブリエラが上がり、モリーが3位、キャロライン・マークス(USA)、タイラー・ライト(AUS)が一つずつ下げている。
なお、エルサルバドル以降、ミッドシーズンカットまではオーストラリアレッグとしてゴールドコースト、ベルズ、マーガレットリバーと4月から5月にかけて3戦用意されている。
ゴールドコーストに関しては当初のスナッパーロックスがサイクロンの影響で砂が移動。開催までに地形が戻る可能性は低いため、バーレーヘッズをメインにグリーンマウント、キラをサブとしたモバイル形式に変更すると発表されている。

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【2025年オーストラリアレッグ】
▪️第5戦『Rip Curl Pro Bells Beach』
4月18日〜28日
Bells Beach, Victoria, Australia
▪️第6戦『Bonsoy Gold Coast Pro』
5月3日〜13日
Gold Coast, Queensland, Australia
▪️第7戦『Western Australia Margaret River Pro』
5月17日〜27日
Margaret River, Western Australia
【ミッドシーズンカット】
36名→24名
18名→12名
『Surf City El Salvador Pro』結果
1位 ジョーディ・スミス(RSA)
2位 マシュー・マクギリヴレイ(RSA)
3位 クロスビー・コラピント(USA)、コール・ハウシュマンド(USA)
5位 ヤゴ・ドラ(BRA)、イーサン・ユーイング(AUS)、イタロ・フェレイラ(BRA)、ミゲル・プーポ(BRA)
ウィメンズ
1位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)
2位 イザベラ・ニコルス(AUS)
3位 ケイトリン・シマーズ(USA)、モリー・ピックラム(AUS)
5位 ソーヤ・リンドブラッド(USA)、ベラ・ケンワーズィ(USA)、ブリッサ・ヘネシー(CRI)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)