オーストラリア・ベルズビーチを舞台としたCT第5戦『Rip Curl Pro Bells Beach』はいよいよクライマックス間近。
現地時間4月26日に公式4-6ftレンジのボウルズでウィメンズはQF、メンズはRound of 16の残りヒートとQFの4ヒート中、2ヒートが進行した。
オンホールドが続き、潮の引きを待ってようやくゴーサインが出されたこの日はクラシックなボウルズが姿を現した前日と一転、風の影響が強まる傾向となった。
ベルズチャンピオンを倒した五十嵐カノア

PHOTO: © WSL/Cait Miers
まず最初にお伝えするのは、QFのH1、五十嵐カノア(JPN)とイーサン・ユーイング(AUS)のカード。
共にスネークことジェイク・パターソンのコーチの元で戦う二人はチームメイトでもあり、余計な駆け引きはない勝負となった。
これまでの対戦成績は2戦2勝でカノア。
しかし、2016年からのキャリアで初のQF進出となったカノアに対してイーサンは2023年にベルを鳴らし、そのスタイリッシュなサーフィンは近年のベルズで最も映える選手の一人。
Round of 16では9ポイントを2本揃える驚異的な強さで、ヒート前のファン投票でも83%と圧倒的な人気だった。

PHOTO: © WSL/Cait Miers
このカードは、共に7ポイント台を出してバックアップスコアを探す勝負となったが、中盤にカノアが7.90とハイスコアを更新してトータル15.40でトップに立つ。風の影響でバンプが増え、チャンスが少ない中、終了間際にビッグターンからインサイドまで繋げるが、ニード8.40のシチュエーションで7.43と届かず。
すぐに入ったセットをカノアはブロックせずにイーサンに乗せてしまうが、これは繋がらず。のちのインタビューで、波を見極めての判断と判明した。
ラスト30秒に入ったセットはキッチリとブロックして仕事を果たし、次に乗ったイーサンのライディングも逆転には至らず、カノアがSF進出を決めた。
これでイーサンとの対戦成績は3戦3勝。
つまり無敗記録を続けている。
勝利者インタビューでは、最初に「あのヒートに臨むにあたって、どんな思考過程があったの?」とマイクを向けられた。
「イーサンのことは、サーファーとしても、人としても本当にリスペクトしている。ただ、ヒートを良い感じでスタートさせたかったし、彼と真っ向勝負したいと思っていた。波も入ってきて、チャンスは沢山あった。スネークと立てたゲームプランもあったけど、”ジェイクと一緒にやってるんだから、好きなようにやろうぜ”って感じだった。運良く良いヒートになったし、良い波を選ぶのは難しかったけど、チャンスは掴めた。そこが本当に嬉しかったね」



このヒートの重要な鍵となった終了間際のプライオリティの使い方については、「動きべきか迷ったけど、何か心の中で“ここで踏みとどまれ”って言われてる気がした。それで、自分がこのポイントで重ねてきたセッションを信じることにしたんだ。波をじっくりと見て、セカンドセクションがあるかを確かめるようにした。多くの波は最初のターンだけで、その後にもう一度ターンできるセクションが出るかどうかで、凄く大きな違いになると思った。だから、自分自身と自分の見極めを信じたのさ」とカノアらしいクレバーな回答。
最後に始めてのベルズでのSF進出の気持ちを聞かれ、「気分は良いね。ベルズはツアーでも好きな場所だしね。ツアーに出てからの9年間、毎年初めにこれが自分の重要なイベントの一つだと思っていたけど、いつもラウンド3で負けていたんだ。だから、毎回少し落ち込んで、時にはそのまま帰りたくなるような気持ちにもなったね。でも、期待感が少しずつ上手く働いている気がしているよ」と話していた。
モーガンがジョーディを倒す

PHOTO: © WSL/Cait Miers
カノアのSFの相手はワイルドカードとして唯一残っているモーガン・シビリック(AUS)
モーガンはQFでも快進撃を続け、エルサルバドルで圧倒的な強さを見せたばかりのベテラン、ジョーディ・スミス(RSA)を相手にH3で十八番の自由なサーフィンで僅か0.03ポイントのゲームを制した。
「相手がアウトサイドで何ターンか決めてきて、凄く僅差になるのは分かっていた。最後の一本はあまりいいセクションが来なかったのが残念だったね。僅差のヒートだった。波は沢山あったけど、本当に良い波はそんなに多くなかった感じかな。ただ、インサイドで綺麗に割れる小ぶりな波があって、それでなんとかできた。もう、勝ち上がれたことが本当に嬉しい。最高の気分だよ。トライアルからここに来て、コンテストに出られるかも分からなかったのに、気付いたらもうセミファイナルまで来ている。だから、日曜日のファイナルデイが本当に楽しみさ。日曜日まで勝ち進むのが目標だったので、明日はきっと素晴らしい一日になると思う。カノアとのヒートには興奮しているよ。彼とは以前に良いヒートをしたことがある。正直、大きなプレッシャーはある。イーサンが凄く調子が良くて誰も止められないんじゃないかと思っていたよ。本当に厳しい戦いになるだろうね」

ウィメンズはベスト4が決定

PHOTO: © WSL/Ed Sloane
一足先にQFが全て進行したウィメンズサイドは、サリー・フィッツギボンズ(AUS)とのQFのH2で9.40のハイエストスコアを出したブリッサ・ヘネシー(CRI)が最も目立っていた。
ヒートがサリーがリードしていたが、残り数分でプライオリティを活かして波に乗るとオープニングセクションで2つのビッグターンをメイクして逆転に成功した。
そのブリッサとSFで戦うのはCT初のSF進出を決めたルアーナ・シルヴァ(BRA)で、QFのH1で最後に7.67を出し、レイキー・ピーターソン(USA)を倒した。
「セミファイナルに進出する場所として、これ以上の場所はないと思う。このイベントはとても歴史ある大会で、小さい頃からずっと見てきたわ。私の憧れだったステフやカリッサが連続で優勝しているのも見てきたの。まるで夢が叶ったみたいで、本当に信じられない気持ちよ。昨日の素晴らしい波を見て、すごくワクワクしたけど、落ち着いて今この瞬間に集中するように心がけた。レイキーは経験豊富なコンペティターなので、彼女に勝てたことを本当に嬉しく思う」
その他、イザベラ・ニコルス(AUS)、唯一のベルズチャンピオン、タイラー・ライト(AUS)がファイナルデイに残っている。
ネクストコールは現地時間4月27日の朝6時45分(日本時間同日朝5時45分)

PHOTO: © WSL/Cait Miers
Rip Curl Pro Bells Beach Men’s Round of 16 Remaining Results:
HEAT 6: Samuel Pupo (BRA) 12.17 DEF. Ian Gentil (HAW) 10.60
HEAT 7: Jake Marshall (USA) 12.76 DEF. Yago Dora (BRA) 12.37
HEAT 8: Jack Robinson (AUS) 16.53 DEF. Filipe Toledo (BRA) 12.26
Rip Curl Pro Bells Beach Women’s Quarterfinal Results:
HEAT 1: Luana Silva (BRA) 12.17 DEF. Lakey Peterson (USA) 9.33
HEAT 2: Brisa Hennessy (CRC) 15.40 DEF. Sally Fitzgibbons (AUS) 15.17
HEAT 3: Isabella Nichols (AUS) 15.94 DEF. Gabriela Bryan (HAW) 10.67
HEAT 4: Tyler Wright (AUS) 14.00 DEF. Bettylou Sakura Johnson (HAW) 13.20
Rip Curl Pro Bells Beach Men’s Quarterfinal Results Heat [1 – 2]:
HEAT 1: Kanoa Igarashi (JPN) 15.40 DEF. Ethan Ewing (AUS) 14.43
HEAT 2: Morgan Cibilic (AUS) 13.83 DEF. Jordy Smith (RSA) 13.80
Rip Curl Pro Bells Beach Men’s Quarterfinal Remaining Matchups [3 – 4]:
HEAT 3: Griffin Colapinto (USA) vs. Samuel Pupo (BRA)
HEAT 4: Jake Marshall (USA) vs. Jack Robinson (AUS)
Rip Curl Pro Bells Beach Women’s Semifinal Matchups:
HEAT 1: Luana Silva (BRA) vs. Brisa Hennessy (CRC)
HEAT 2: Isabella Nichols (AUS) vs. Tyler Wright (AUS)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)