(ファイナリスト) PHOTO: © WSL/Cait Miers

ジャック・ロビンソン&イザベラ・ニコルスが優勝!五十嵐カノアが2位!CT第5戦『Rip Curl Pro Bells Beach』最終日

オンショアのボウルズからクリーンなウィンキーポップ、クラシックなボウルズ。
そして、最後は振り出しに戻ったかのようにオンショアのボウルズとコンディションが目まぐるしく変わっていた今年のベルズ戦。

記念すべき60周年は日本の五十嵐カノアが2019年のクラマス戦以来、CT通算2度目の優勝まで僅かに迫ったが、ウィメンズも含めて自国オーストラリアの選手が制して幕を閉じた。
今年のオーストラリアレッグは復活したゴールドコースト、マーガレットリバーと3戦用意されている。

パパになったロボのラッキーセブン

(対戦前のロボとカノア)
PHOTO: © WSL/Ed Sloane

現地時間4月27日の日曜に迎えたファイナルデイは公式4-6fレンジのサイズ。
日曜日で多くの観客が集まる中、朝の内にメンズのQFの残り2ヒートとウィメンズSFまで行い、お昼頃までオンホールドしてメンズSFから再開された。

H1のカノアはCTレベルでは初対戦となったワイルドカードのモーガン・シビリック(AUS)を相手に序盤から積極的に波に乗り、プライオリティも上手く使った戦略勝ち。
ロボはグリフィン・コラピント(USA)がヒートのハイスコアを出して後半までリードしたゲームを後半にひっくり返し、僅差でファイナルへ。

(ワイルドカードのモーガンを倒したカノア)
PHOTO: © WSL/Ed Sloane

カノアとロボはジュニア時代からの親友であり、良きライバル。今でも試合の合間に一緒に過ごすことがあり、最近ではロボの生まれたばかりの子供をカノアが本当に優しそうな顔であやす姿がカノアのYouTubeで公開されたことがある。

そんな気の知れた仲の二人のファイナルは、最初に6ポイント台を2本まとめたカノアが主導権を握り、更に後半に7.17とハイスコアを上げてロボはード7.50のシチュエーション。
微かにカノア勝利のムードになったが、ここまで1本しか良いセットに乗っていないロボがラスト10分を切ってから7.77を返して逆転してしまい、そのまま逃げ切る形でベルズ初優勝。
JJFと名勝負を演じた昨年のマーガレットリバー戦以来、CT通算8勝目を決めた。

PHOTO: © WSL/Ed Sloane
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(ファイナルはカノアが先行)
PHOTO: © WSL/Ed Sloane
(ラスト10分を切ってから逆転に成功したロボ)
PHOTO: © WSL/Ed Sloane

「今日は特別な日だよ。家族全員が来てくれていて、チームのみんなも、クルーも全員ここにいる。セミファイナルの直前に、パーコとミックがベルズでサーフィンしている映像を見て、その後タジ、アンディ、ケリーの映像も見たんだ。それで一気に気持ちが高まった。彼らからインスピレーションをもらって、自分も”今この瞬間に集中しよう”って思った」

ツアーの中でも特別なイベントであるベルズを制し、ミック、ジョエル、タジ、オッキー、ダミアン・ハードマン、バートンリンチなどオージーのレジェンドと肩を並べることになったロボ。同世代を代表する存在として地位を固めている。

「ファイナルではもっと波が来ると思っていた。カノアより前に出る必要があって、ヒートを動かすタイミングを見計らっていたんだ。彼の波に乗らなかったのにも理由がある。海は本当に予測できないし、サーフィンは、まるで自分を選んでくれるような感覚。本当に恵まれていると感じるし、ただ感謝しかない。まだ実感は湧いてないけど、今はこの瞬間を楽しんでいる。それが一番大切なことだと思うよ」

PHOTO: © WSL/Ed Sloane
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PHOTO: © WSL/Cait Miers

ハンターになったカノア

PHOTO: © WSL/Cait Miers

2024年のサンセットビーチ戦でもロボとファイナルを争い、2位になっていたカノア。
リベンジを果たすことはできなかったが、強豪のイーサン・ユーイング(AUS)を倒したヒートでは特にカノアの成長ぶりと変更したばかりのJSサーフボードとの相性がすこぶる良いことが分かった。

「興奮しているよ。ファイナルデーに目覚められること自体、いつだって最高なんだ。ファイナル直前にテーマ曲である『ヘルズ・ベルズ』が流れるんだけど、その瞬間の感情が最高だった。ジャックとは今週ずっと一緒に過ごしていたので、こうしてファイナルで当たるのはなんだか面白かったし、全てが上手くかみ合った感じだった。どっちにしても本気でぶつかるつもりだった。再び”ハンター”の気分になれて凄く気持ち良かった。最近JSにボードを切り替えたんだけど、それが本当に調子良い。オーストラリアレッグは重要な戦いが続くので、良いスタートが切れて嬉しい」

今回の2位はエルサルバドルでのミスを埋める形となり、ランキングを4つ上げて6位に浮上している。
また、第7戦終了時点で行われるミッドシーズンカットもクリアした。
オーストラリアレッグでの残り2戦もファンを楽しませてくれるだろう。

イザベラがCT通算2勝目

PHOTO: © WSL/Ed Sloane

ウィメンズサイドはケイトリン・シマーズ(USA)、モリー・ピックラム(AUS)と上位陣が早いラウンドで消え、絶好調だったガブリエラ・ブライアン(HAW)さえもQFで敗退。
そのガブリエラを倒したイザベラ・ニコルス(AUS)がファイナルデイで唯一のベルズ優勝歴があるタイラー・ライト(AUS)をSFで抑え、ルアーナ・シルヴァ(BRA)とのファイナルは8.33と7.93を揃える圧倒的なサーフィンで優勝。

「今の気持ちを言葉では表せないわ。間違いなく、人生で一番幸せな日。3年前にマーガレットリバーで優勝して以来、ずっとあの時の感覚を追い求めてきたの。でもまさか、それを超える瞬間が来るなんて思ってもいなかった。今、父とコーチに肩車されて階段を上がり、家族のほとんどがここにいてくれる。言葉では表せない感動よ。毎年ここに来る毎にあの階段と名前を眺めて、自分の名前がそこに刻まれることを夢見ていたわ」

PHOTO: © WSL/Cait Miers
PHOTO: © WSL/Cait Miers

27歳のイザベラは2021年にツアー入り。スタイリッシュなサーフィンを武器に2022年のマーガレットリバー戦で早くも優勝。
2023年、2024年と2年連続でミッドシーズンカットでCS落ちとなったが、粘り強く勝利を重ねてクオリファイを続け、今年のエルサルバドルでは久々のファイナル進出。
残念ながら勢いがあったガブリエラに遮られたが、ベルズではガブリエラへのリベンジも果たし、名誉あるタイトルを獲得した。

「コンテストで勝つこと自体も嬉しいけど、1週間、1か月を通して自分のパフォーマンスに誇りを持てることは、また別格。サーフィンの技術は大事。でも、私にとってはヒート中にどんな決断をするかが本当に大きい。ここ最近は海から上がった時に、自分の決断に誇りを持てるようになってきたし、初めて”リズムに乗っている”と感じられているのが嬉しい。今まで沢山のヒートを悪い判断で落としてきたからね。ベルズには何年も通って、今日みたいなコンディションで練習してきた。しっかり準備できていたと感じる」

イザベラは今回の優勝でランキングを3つ上げて4位に浮上。
今年はミッドシーズンカットを心配することなく、ファイナル5入りを目指せるポジションになった。

CT初ファイナルのルアーナ

PHOTO: © WSL/Cait Miers

2022年、16歳でCT入りしているルアーナだが、ミッドシーズンカットでこれまで後半戦進出の経験はなかった。
WJCこと『World Junior Championships』というビッグタイトル獲得後、今シーズンは休暇中のステファニー・ギルモア(AUS)の枠で出場し、開幕戦から全て9位とカットライン下に留まっていた。
ベルズでは長い手足が映えるカービングを武器にスコアを上げてCT初のSF進出から初のファイナル進出まで果たし、カットライン真下の11位まで浮上している。

「自分のパフォーマンスを本当に誇りに思う。大会序盤に感じていたメンタル面を克服できたことが私にとって本当に大きな成果だと思う。ミッドシーズンカットを突破するための大きな一歩になった。この2年間、それをクリアできていなかったので、今回は本当に良い感触を得られた。次のイベントに向けて、ポジティブな気持ちよ。そして、今回2位に終わったからこそ、更に上を目指したい気持ちが強くなった。本当に自分自身とこのイベント期間中ずっと持ち続けた”強い意志”を誇りに思う。次の試合がすでに待ち遠しいわ」

PHOTO: © WSL/Cait Miers

遂にケイトリンが2位に転落

11戦中5戦が終了した時点でメンズはイタロ、イーサンのトップ2は変わらず。
今回優勝したロボが3位に浮上している。
ウィメンズはガブリエラがトップに立ち、ケイトリンが遂に2位に転落した。
モリーは変わらず3位を維持している。
なお、メンズは7位のバロンまで、ウィンメンズはトップ2のみがすでにミッドシーズンカットをクリア(青いドット)している。

次の第6戦『Bonsoy Gold Coast Pro』は5月3日〜13日にゴールドコーストで開催。
サイクロンの影響で砂が移動したスナッパーロックスは使えないため、メイン会場はバーレーヘッズ。
コンディション次第ではその他のポイントブレイク使用も考慮される。

『Rip Curl Pro Bells Beach』結果
1位 ジャック・ロビンソン(AUS)
2位 五十嵐カノア(JPN)
3位 モーガン・シビリック(AUS)、グリフィン・コラピント(USA)
5位 イーサン・ユーイング(AUS)、ジョーディ・スミス(RSA)、サミュエル・プーポ(BRA)、ジェイク・マーシャル(USA)

ウィメンズ
1位 イザベラ・ニコルス(AUS)
2位 ルアーナ・シルヴァ(BRA)
3位 ブリッサ・ヘネシー(CRI)、タイラー・ライト(AUS)
5位 レイキー・ピーターソン(USA)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)、ガブリエラ・ブライアン(HAW)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(黒本人志)

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