昨年、惜しまれながらもツアーを引退、17年の長いキャリアに終止符を打ったミック・ファニング。
引退後は「Rip Curl」が長年行っている世界中の未知の波を探す『The Search』のメンバーとして第二のサーフィン人生を送っている。
そして、今年8月には台風スウェルを追って四国に滞在しているところをスクープされていたが、これは『The Search』ではなく、独自の視点でサーフィン界をぶった切るStabmagの企画『Stab in the Dark』の撮影だった。
『Stab in the Dark』はシェイパーの名を明かさずにサーフボードをテスト。
毎回豪華なサーファーが参加して映像も凝っているために有料なのだが、Stabmagは宣伝を兼ねて12月1日に南アフリカでの新たなエピソードが公開される前に前回の四国でのミックのテストを無料で公開した。
舞台が日本だけに興味がある方も多いだろう。
Mick has a stab
37分間の映像は台風直撃の荒れた天候からスタート。
ミックがチェックするフォーキャスト「Windy」は二つの台風が日本を囲んでいる。
今回、テストするサーフボードは11本のエポキシ。
まずは真っ黒に塗られたサーフボードを9本を並べ、デザインなどで誰のシェイプか当てていく。
台風接近前、オンショアの難しいコンディションで初入水するミック。
「エポキシはこのような波に適している」 と話し、次々とボードをチェンジして現役時代と変わらないライディングを披露する。
ミックの現役時代のメインシェイパーはDHDのダレン・ハンドレーだが、2011年のトラッセルズ戦ではコロへ・アンディーノのお下がりのメイヘム、2006年のパイプラインマスターズではトコロのサーフボードを乗っていたそうだ。
台風のウネリが入り、誰も入っていないワイルドな海外のようなコンディションでテストを繰り返すミック。
JSのボードは僅か3本で折れてしまった…。
台風直撃時、スマホでフォーキャストをチェックすると165-260ftとあり得ない数値に苦笑い。
荒れ狂う海を見て流石にこの日は「明日は良い波だろう」とつぶやきながら、大人しく宿に戻る。
翌日、台風一過の晴天。
落ち着く傾向ながら十分にパワフルなブレイクでジョン・ジョン・フローレンスのメインシェイパー、pyzelのボードを試す。
この動画では全てのサーフボードのサイズに加え、サーフィンした時間、波に乗った本数、トップスピード、最も長い波の距離を『Rip Curl Search GPS』で数値化してくれるので、分かりやすい。
宿に戻り、マジックボードについて語るミック。
「自分にとってマジックボードは全てのコンディションでスピードボードのように完璧な重さで浮くボードさ」
ケリーのサイモン・アンダーソン、タジのメイヘムのマジックボードのことを話した後、自らの2本のマジックボードのエピソードへ。
2007年、2009年に手に入れたDHD、どちらの年もワールドタイトル獲得に大きく影響したマジックボードだ。
台風スウェルがなくなり、スモールコンディションになった四国でもテストは続く。
DHDとSlater Design。
最後のHaydenshapesのテスト時は特に波が良くなり、ボードとの感触も良くてサーフィンした時間も長かった。
後半、最初に用意された9本のサーフボードに加え、台風で到着が遅れた2本のサーフボードが追加される。
その内の一本は手渡しで、唯一の日本人シェイパー、SMACの竹内栄治シェイプ。
ミック曰く、「カリフォルニアのボードに乗っている感じだった。決め手はないけど、普通に良かったかな」
デーン・レイノルズ、ジョーディ・スミスと過去の『Stab in the Dark』を振り返るとシェイパーに対しての悪口も出ていたが、ミックの場合は全てにおいてポジティブな感想だったのが印象的だった。
11本の中から選ばれた3本のファイナリストはDHD、Channel Island、PUKAS。
四国からLAにフライトしたミックはトラッセルズでテストを行う。
ところが、ここで問題発生。
「86番のボードは絶対DHDだよね。だったら僕は選べない。チーティング(不正行為)だ。」
20年以上もDHDに乗っているミックは、当然板のことも知り尽くしている。ライダーである自分が1位として選ぶのはフェアでないと、DHDの板を選考から外した。
Channel Island、PUKASの2本に絞られた最後のテストはオーストラリアで行われ、Channel Islandのブリット・メリックが勝利。
オールラウンドで良く、全てのターン、ドライブ、スピードにおいて優れていたのが理由だそうだ。
ちなみにスペインのバスク地方が拠点のPUKASのことはミックも知らなかったようで、「良いシェイパーが見つかったよ」 と話していた。
PUKASではこの時にミックが乗っていた同じサーフボードを「DARK」の名前で販売しているので、興味がある方はチェックしてみては?
なお、『Stab in the Dark』の次作はミック、デーン、ジョーディによる南アフリカでのテスト。
ミックはこの旅で膝前十字靱帯損傷により僅か1日で帰国、全治半年〜一年と診断され、現在もリハビリをしているそうだ。
(空海)