イタロ・フェレイラが初のワールドタイトル、パイプマスターの座を獲得、ケリー・スレーターが1998年以来、3度目のトリプルクラウンを獲得した『ビラボン パイプ マスターズ』の表彰式の真っ只中、一人の若いサーファーが溺れ、生死をさまよう救助劇があった。
それは丁度、ケリーのインタビューの最中。
目の前のパイプラインで起こっている状況を見て「レスキューの最中だね。ごめんなさい、気が散ってしまったよ」と一度中断した後、しばらく話を続けたケリーだったが、すぐにインタビューをするような状況ではなくなり、「みんな注意して!」と深刻な表情で再び中断され、画面も切り替わり、表彰式は一時ストップした…。
救助されたのはカリフォルニア・サンクレメンテの13歳、ヘイデン・ロジャース。
コンテスト直後にパイプラインに飛び込み、深刻なワイプアウト、リーフに頭をぶつけ、水中に2度引き込まれたそうだ。
ヘイデンを助けたのは、ウォーターパトロールのレジェンド、テリー・アフエ、ブライアン・ケアウラナと息子のチャド。
彼らはカリッサ・ムーアのCM撮影から引き上げてきたところだった。
「あの時、私たちはここに戻ってきたばかりだった。コンテストが終了してまだブイが残っていたよ。テリーと私はいつもこの海岸線を監視しているんだ。パイプでは何度同じようなシナリオが発生したか分からないほどさ」
ブライアン・ケアウラナ
『ビラボン パイプ マスターズ』終了直後、まだ会場が慌ただしかった中での出来事だったが、彼らはタイミング良くその場所にいて救助に向かった。
更にブライアン・ケアウラナが設立した『Big Wave Risk Assessment Group(BWRAG)』というプログラムでライフガードのトレーニングを受けた二人の若いサーファーが協力してヘイデンを無事に救助したのだ。
「BWRAGに通った二人の若者がいた。彼らには救助のためのテクニックを教えていたんだ。合図として片方の手を真っ直ぐに上に向け、もう片方の手は溺れていたサーファーの方向を示していた。更に女性のボディーボーダーと子供がいて救助に加わったのさ。彼女の名前を知りたいね。彼女は水中で溺れたサーファーを浮かせ、頭を上げていた。それほど酷い状況だったんだ」
ブライアン・ケアウラナ
ヘイデンをビーチに引き上げた後、ライフガードがすぐに助けに入った。
呼吸をしながらも、顔に酷い損傷があり、脊髄損傷の可能性もあったため、固定されたまま救急車でクイーンズ病院に搬送されてすぐに治療を受けた。
命に別状はないものの、しばらくはベットの上で大人しく過ごさなければいけないようだ。
パイプラインでサーフィンするには世界一のバレルの裏に潜む危険性も知っておかなければいけない。
数年前にはCTサーファーのビード・ダービッジやオーウェン・ライトが選手生命を脅かすような大怪我をしたこともあり、トッププロでもヘルメットを着用するサーファーが多い。
一年の締めくくりでもあるマスターズの最後に起こったこの事故は改めてパイプラインの危険性と安全を守るためのトレーニングの重要性を強調した。
命を救う知識と能力を身に付けるのはサーファーとして重要なことである。
ブライアン・ケアウラナがこのことを次世代に引き継くために「BWRAG」で教えを説いたおかげで、一人の若いサーファーの人生が拓けたのだ。
「救助に向かった全ての人が役割を果たして上手くいったんだ。これがハワイアンファミリーのベストだよ。まだ学習中だけどね。私達は今回のことを学習の機会として活用し、より良くしたいね」
ブライアン・ケアウラナ
参考記事:Young Surfer Saved at Pipeline Moments after World Title Decided
(空海)