世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。日本でも急激に感染者数が増えてきたことを受け、ついに7都府県を対象とした緊急事態宣言が発令される見込みだ。
これらの動きにともない、サーフィン界でも様々な動きが出始めているため、既にロックダウンなど先行する海外の動きと日本の現状をまとめてみた。
まず、海外では、罰則が伴う外出禁止やビーチ閉鎖により、事実上サーフィンができなくなったり、一部だがサーフィン自体を禁止している国がある一方で、ロックダウン中であってもサーフィンを許可しているところもある。
海外におけるサーフィンへの対応
イタリアなどのように外出禁止を出し、違反者へ最大35万円の罰金を科している国や、サンディエゴなどのようにビーチ自体が閉鎖されている地域もあるが、ハワイなどサーフィン自体は禁止されていない場所もある。
・カリフォルニア
サンディエゴやロサンゼルスなど一部のエリアでビーチが閉鎖され、海岸に立ち寄ること自体が禁止された。その後、ロサンゼルス北部のマリブでSUPをしていたサーファーが逮捕される騒動があった。
・ハワイ
在宅命令によりロックダウン状態にあるハワイ。ビーチパークは閉鎖され、ライフガードはいない状態だが、波待ち時に距離を置く・パーキングでの集合は無し等の制限はあるものの、サーフィンはジョギングやウォーキングと同様に許可されているという。
・オーストラリア
ロックダウンによりオーストラリア全土で外出禁止令がでているが、エクササイズは許可されている。 現時点で、シドニーのイースタンビーチや、ゴールドコーストのスピット、クーランガッタビーチ、サーファーズパラダイスなど、一部のビーチでサーフィンができない状態にあるが、国のガイドラインでは、最大2名かつ他者との距離を1.5メートル以上保つエクササイズは許可されており、 国の大半が上記エリアを除いて「サーフィン」は許可されたエクササイズだと解釈している。ただ、今後クローズされるビーチは徐々に増える可能性もある。
・ニュージーランド
サーフィンを含むマリンスポーツを禁止。保健当局は、禁止する理由の一つとして、「サーフィンは一般的にケガリスクが高く、そのための医療リソースを割いている場合ではない」と説明した。
・イタリア
3月から全ビーチで閉鎖が続いていて、ランニングや水泳、サーフィンも許可されていない。漁業権を持った人だけが海に出られる。現時点では4月13日が期限とされているが、さらに延期される可能性が高いとみられている。
・ポルトガル
3月時点では、海事局により大人数でのビーチでのスポーツやレジャーアクティビティの禁止が発表。大人数の規定は5人以上としているが、ポルトガルの国内サーフィン連盟からは人数を問わずサーフィンの自粛を要請している。
(マデイラ諸島とアゾーレス諸島も含む)
・フランス、スペイン
全ビーチが閉鎖され、サーフィンも禁止。終了時期は未定。
・コスタリカ
外国からの入国が禁止になっている中米のコスタリカでは全ての海水浴場の閉鎖と夜間の外出禁止など厳しい措置が講じられ、海に入っていたサーファーに対して警官が発砲。ケリー・スレーターがSNS上で弁護した。
・中国
2月中旬に15日間ビーチ閉鎖、今はオープンしている
カリフォルニアやシドニーをはじめ、外出禁止を発令した当初はサーフィンを制限していなかったものの、蓋を開けてみればビーチに多くの人が集まっている状況を受け、後からビーチ閉鎖に至った例が多かった印象だ。
国内でのサーフィンに関連した声
サーフィン自体の知名度を含め、明確に指針を示している自治体や団体はほとんどない上、日本の緊急事態宣言自体が、個人に対しては基本的に外出自粛にとどまる形で、外出をした人が法律違反になるわけでもなければ、罰則が課せられることもないため、個人の判断に委ねられているのが実情である。このため、サーフィンの自粛に関して個々に様々な意見が飛び交っている。
・日本サーフィン連盟
2月末より各支部に対してイベント等の開催自粛を要請しており、今月に入り要請期間を5月24月までに延長。主催するイベントの延期も発表した。
(4/8追記)
緊急事態宣言の発令を受け、2020年度の主催4大会を全てを白紙にすると発表。公認大会についても、今年度の大会開催と受付を中止とした。
・宮崎県サーフィン連盟
県内での感染者が確認された8名がすべて県外から帰ってきた方々であり、また県外ビジターサーファーで海が混雑している状況をうけ、「県外からサーフィン目的での来県は控えてほしい。」と4月5日にFacebook上で呼び掛けた。
・宮崎市サーフィン業組合「サーフカルチャー宮崎」
連盟と同様に苦渋の決断として、市内のサーフショップ等が加盟する同組合は、4月12日~25日の2週間、県内外を問わず全ての方のサーフガイドやスクールなどを自粛することを発表した。
・NSA静岡伊豆支部
「このような状況下でも駐車場は満車に近い状態で、地元の方々も困惑している。このような状態が続けば諸外国のようにビーチ封鎖サーフィン禁止になりかねない。首都圏からのサーファーの皆様、少しの間我慢してください。」とFacebook上で呼び掛けた。
白浜海岸有料駐車場は、土日祝日は利用禁止。平日も禁止となる駐車場がある。
・NSA千葉東支部/一宮町サーフィン業組合
また、オリピック会場でもある千葉・一宮では「一宮の海を愛してくださるサーファーの皆様へ」とし、4月4日にSNS上で以下の要請を掲載。
1.海ではお互いの距離感を保つ事
2.海に入る上がった後は複数人での会話は避ける事
3.人込みは避け、店舗利用はなるべく混んでいる時間はさける事
4.各自消毒やマスク着用を徹底して頂く事
5.発熱や体調不良の場合来訪は避ける事
上記についてはサーフィンを禁止、または自粛を促す内容ではないが、自分の身を守る、大切な人を守ると同時に、サーファーのモラルと責任ある行動を問い、 隣り合う「いすみ市サーフィン業組合」も同様にサーファーへの理解を求めた。
(4/9追記)
緊急事態宣言の発令を受け、一宮~志田下(キレメ)まで駐車場が閉鎖。
しかし、代わって路上駐車問題が多数報告されている。サーファーとして良識ある行動を願いたい。
サーフィン自粛に関する様々な意見
日本国内でも、様々な地域に、様々な立場を持つ方がいることも知って頂きたい。
・某プロサーファー
「ハワイではサーフィンはOK、但しサーフィン後はビーチにいつづけることは禁止されていると聞く。人が多いサーフポイントは控える、ビーチでは団らんしない、など、できることは何か?を考え、感染しないように行動することが大切だと思う。」
・某プロサーファー
「自身のYouTubeチャンネル上では、海の撮影をやめ、撮影は自宅のみにするなど、今できる方法を考えて活動を続ける。」
・某ショップ経営者
「一人で車で行って誰もいない海でサーフィンするのもダメなのか。自粛についても、(すべて禁止ではなく)やり方が有ると思う。出来ればサーフィンするにあたっての指針を出して欲しい。」
・サーフィン業界関係者
会社員が仕事を続けているのと同様、プロサーファーにとってはサーフィンが仕事であり生活がかかっている。そんなプロサーファーについて、「この先試合が無くなる訳じゃないからトッププロは練習も必要。アマチュアの人もこの状況を色々と考えながら、車を走らせている。海に入るなと言い切れるのか。」
・サーフィン業界関係者
「アスリートサーファーにとって1ヵ月は重要。海に入れなくなり、自宅でならまだしも、設備のあるジム施設などへトレーニングに行き、感染するなどは悲惨なこと。日本人的な横並びの安心感ではなく、各自の立場により自分自身で考える事が重要だと考える。」
などといった意見もある。
・自粛賛成派の声
「自粛要請が出ている中でサーフィンをしている事自体おかしい。みんなも我慢しているのに自分勝手」
「仮に感染した際、感染経路を辿ったなかにサーフィンがあった場合、本当はサーフィンが原因でなくてもサーファーに対して悪いイメージがつく」
「実態として、感染者数の多い他県ナンバーの車がこの週末も海に来ており、迷惑というか、心配をしている」
「普通に考えたら分かる事を、ローカルの方々に指摘されないと分からないサーファーが居るのが情けない」
「今は少しでも感染者を出さないよう一人ひとりが意識して行動してほしい。自粛が感染の拡大を抑えて医療者の負担の軽減にもつながる」
「車から海まで完全に外に出ないのであればまだしも、途中でトイレに行くし、食料も買う。完全に人と接触しないのは不可能」
・自粛慎重派の声
「テレワークが続いている人や、医療従事者で疲れ切っている人にとって、メンタルヘルスを保つためにもよいはず」
「海に入る事は、免疫力を高め、ウィルスから身を守る方法として有効なのでは」
「集団行動や前後での立ち寄りなどを排除し、誰とも接触せずに、単に海に入る事についてはむしろ良い」
「海外では健康を保つために、ロックダウン中であってもサーフィンが推奨されているところもある」
「パチンコは人で溢れてるのに。。この時期のサーフィンはどうやっても2m以上人に近づく事はないよ」
「感染のリスクも少ないのに、楽しんでるように見えるものを自粛しろって言うのはおかしい」
ここまで、新型コロナウイルスに関連し、サーフィン界で発せられている事などを簡素にまとめてみた。
様々な意見があり、それぞれが理解できるが、それ自体も刻々と変化していく事になるだろう。
ただ、既にご存知の通り多くの感染者が苦しんでいる事実があり、亡くなった方も少なくない。
そして、まだまだ感染者は広がり、いつ自分の家族や友人、知人達に感染者が出るかも知れないという現実も存在する事から、サーフィン界に関わらず、ネガティブなムードが蔓延しやすい状況にあると言える。
そして、解明されていない、対抗策が見えない敵を考えると、決して軽視してはならないし、これから他国のような重篤患者が適正な医療行為を受けられないという悲惨な状況を避けるためにも、皆が団結し協力する必要性を強く感じる。
しかしその一方で、かつて震災時にネット上で横行した「不謹慎狩り」のように、むやみやたらと揚げ足取りで騒ぎ立てる行為が増えるのではないかとの不安も感じざるを得ない。
時にフェイクで作られた内容や徐々に拡大解釈された内容に尾ひれが加わり、皆が便乗しバッシングを繰り返すようなことが起き、濡れ衣でリンチ殺人を招いたメキシコの事件とまではいかないまでも、罪の無い人を苦しめるようなことが起き得るのではないか。サーフィン自粛議論の中にも、その様な圧力を感じるものが出始めていた。
精神科医の岩波明氏は、著書『他人を非難してばかりいる人たち バッシング・いじめ・ネット私刑』(幻冬舎新書)の中で、「現在の日本社会では、バッシングすること自体を目的化したバッシングが横行している」との認識を示している。それは一部の人間を指している事とはいえ、そこから始まる不安や不満などのネガティブの連鎖により、普通の人々をも巻き込み拡大、拡散した事例も少なくない。
災害などの緊急時に発揮される共感能力は、人間らしい、素晴らしい心の働きと言え、共感に基づき自粛する事も素敵なことなのだが、問題なのは共感が自発的なものではなく「強制」されてしまう事であり、それに従わない者を攻撃し始めることだと思う。
日本のPCR検査数が少な過ぎるため、本当はもっと多くの感染者が居るのではないかとの指摘も多いが、今後、仮に日本でもニューヨークやイタリアの様な医療崩壊が起きた場合、まともな医療行為が受けられず病院にすら行けない、行かない人も出る事になり、患者自らの免疫力が生死を分ける事になる。
また、外出自粛とはいえ職種によっては職場に通っている人もいるように、それぞれの生活環境が異なり、事情や視点が異なる中でそれぞれの意思と責任を持って選択をするのであれば、その選択を尊重することも必要といえるのではないだろうか。
サーフィンの話から、ここまで発展するのは行き過ぎとも感じたが、「不謹慎狩り」の様なバッシングは身近なところから発生すると聞き、書き加えさせて頂いた。
最後に、何であれ近い将来、皆さんが海に向かい気持ち良くサーフィンできることを願って「うがい、手洗い」はもとより、「3つの密」をご自身で判断のうえ感染リスクを避けて頂きたい。また、暫くの間は様々な場所でも小さなパニックが起きると想像するが、自粛対象であるか否かに関わらず、身近なスーパーなどの人混みに入る事などにも注意頂きたい。くれぐれも、悔いを残さない、落ち着いた判断を頂けるよう願いたい。
(THE SURF NEWS編集部)
★第1回TSNアンケートは締め切りました。途中経過はこちらから。
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