Image: Vans(YouTube)

たった一本の中古サーフボードが人生を変える? グダスカス三兄弟の壮大なプロジェクト

カリフォルニアのデーン、パトリック、タナーのグダスカス三兄弟。

彼らはプロサーファーとして自らの活動を行う他、非営利団体「Positive Vibe Warriors」を2012年に立ち上げ、発展途上国での子供達のサーフィン普及と支援に力を注いでいる。
困難な国の子供達にサーフィンを通じて生きることの素晴らしさを教え、将来の夢を与えるのが大きな目的だ。

彼らの活動は賛同する周囲を巻き込み年々広がっている。

2016年には200本のサーフボードをジャマイカのサーファーに寄付。
2018年には自身のSNSなどを通じて寄付を呼びかけて約700本のサーフボードや、200枚以上のウェットスーツ、何百個ものフィンを南アフリカのケープタウンに寄付

そして、遂に彼らの素晴らしい活動は企業さえ動かしたのだ。

グダスカス三兄弟の古くからのスポンサーであるVANSが協力してカリブ海の小アンティル諸島南部に位置するトリニダード・トバゴの子供達に200本のサーフボードを届け、その模様が新しいドキュメンタリー動画として公開された。

たった一本のサーフボードが人生を変える可能性を秘めている

Image: Vans(YouTube)

「Breaking Boundaries(境界を破る)」と題したこの動画は、トリニダード島が故郷のプロサーファー、クリス・デニスの物語でもある。クリスは「Waves For Hope」というファウンデーションを2019年に設立し、子供達に海でサーフィンを教え、悪い道に進んでしまう若者の命を救っている。

「もし、一本のサーフボードがあれば、一人の子供を助け、世界を変えることができる」

そんなクリスの言葉から始まる今回の動画。

小アンティル諸島南部に位置するトリニダード・トバゴはカリブ海でも裕福な国。トリニダード島、トバゴ島の2島からなる共和国で、豊かな石油と天然ガスが国の経済の中心になっている。

しかし、雇用率は非常に低く、2018年、2019年の殺人事件件数が約500件と治安の悪化が問題になっているのだ。

トリニダード・トバゴは美しい海がある素晴らしい国である一方、犯罪、貧富の格差、苦痛の闇を抱えているとクリスは話す。
そんなこの国でサーフィンを子供に教えることは彼らの人生を救うことにも結び付くのだ。

それは決して大袈裟ではなく、現実的だと言うことがスポットで流れる映像を見れば理解出来るだろう。

クリスの取り組み

デーンとクリス
Image: Vans(YouTube)

幼少時代に見たサーフィンに衝撃を受け、15歳の頃、いとこのサーフボードでサーフィンを始めたクリス。
未知の世界だったコンテストに参加して以来、QSで世界中を回り、経験を積んでいった。

クリスとグダスカス三兄弟との出会いは12年前まで遡る。

クリスの友人だったディラン・グレイヴス(「Weird Waves」で有名になったあのサーファー)が、デーンにバージニアビーチのコンテストで紹介してくれたのが初対面。
当時のデーンはトリニダード島がどこにあり、波があるのかも分からず、そこからプロサーファーが来たことに驚いたそうだ。

小さなトリニダード島からサーフィンを通じて世界を見たクリスは自国の社会的問題を認識。
サーフィンのカルチャーとの密接な関係にも刺激を受け、まずは地元の現実的な問題に向き合うことを始めた。

10年前、初めて数名の子供達にサーフィンを教え、当初は特別な計画がなかったが、時が経ち、子供達が抱える家庭の問題、貧困、退学、暴力、虐待など深刻な状況があることに気付いた。
クリスは問題を抱える子供達と話し合い、自らの経験を元にアドバイスを与えるようになったのだ。

当時教えていた18人の子供達の中には文字や文章を書けない子供達もいたが、クリスは彼らが興味があるサーフィン雑誌を教科書代わりにして文字や文章を覚えてもらうことを思い付いた。
少しでも興味があることから始め、教育の重要さを理解して欲しかったのだ。

クリスの元で育った若者は、彼を「人生の指導者」だと言う。

グダスカス三兄弟が200本のサーフボードを届ける

(アメリカ中から集められたサーフボード)
Image: Vans(YouTube)

部屋の片隅や倉庫に眠っているサーフボードが子供達の人生を変える可能性があると聞いたら、あなたはどうするだろうか?

グダスカス三兄弟は世の中に溢れているそんなサーフボードをアメリカ中から自らの手でピックアップして発展途上国の子供達に届ける架け橋を行なっている。

ジャマイカ、南アフリカ。
そして、今回のトリニダード・トバゴ。

グダスカス三兄弟にディラン・グレイヴスが加わり、200本のサーフボードと共にトリニダード・トバゴに向かった。

クリスのサーフィンを通じての教育活動が発展し、サーフィンに対する地元の熱意が高まるにつれ、サーフボードの不足がプログラムの進歩の妨げになっていた。そのなかでの今回の大規模な寄付はトリニダード・トバゴのTVニュースでも取り上げられた。

「今回のボードドライブプロジェクトを始めた時、人々に狂っていると笑われてしまったんだ。なぜカリブ島の小さなこの国に世界的なアスリートが訪れてくれるのか?その理由を考えて、感情的になってしまったんだ。特に自分が子供の頃には何もなかったから」とこのプロジェクトを振り返って涙ぐんでいた。

ある子供は初めてサーフボードで波に乗る感覚を「鳥になって空を飛んでいるようだ」と表現していた。

「サーフィンは自由になれるし、サーフボードはその言葉以上の意味がある。 それは人間が関わるものだから。私達が分け合い、お互いを本当に気にかければ、多くの問題が解決できる。それはかけがえのないものだよ」
クリス・デニス

(空海)

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。