今までオーストラリアレッグを苦手としていたガブリエル・メディナが今シーズンは見違えるほどの結果を残し、カレントリーダーの座を手に入れてシーズンを折り返している。
開幕戦『ビラボン パイプ マスターズ』2位
第2戦『リップカール ニューキャッスルカップ』2位
第3戦『リップカール ノースナラビーン クラシック』優勝
第4戦『ブーストモバイル マーガレットリバープロ』9位
第5戦『リップカール ロットネスト サーチ』優勝
そんなガブリエルの成功の影の立役者になったのが継父チャーリーに変わってコーチを務めているアンディ・キングだ。
RedBullで7年間エリート選手のトレーニングプログラムを開発、ミック・ファニングの2回のワールドタイトルに関わり、ジュリアン・ウィルソンのコーチの経験もあるアンディは元プロサーファーでもあった。
「私は嘘をつかないし、選り好みすることもしない。それは15年前に死を彷徨ったことが理由さ。そのことが私のコーチング方法に影響を与えている。ガブリエル・メディナであれ、他の誰であれ、くだらないことや人間関係などで時間を無駄にしたくないんだ。シンプルなプロセスを邪魔されたくない」
アンディ・キング
2003年、プロサーファーとして活躍していたアンディはオーストラリアのクロヌラのパブで強烈なパンチを浴びて頭蓋骨を骨折。
昏睡状態となり、聴覚を失った。
医師からは二度とサーフィンは出来ないだろうとも言われ、バランスがとれず、耳も聞こえないのにも関わらず、2年も経たないうちに『Volcom Pipe Pro』のQFに進出した。
その後、アンディは人工内耳を埋め込み、少なくとも陸上では聞こえるようになった。
更にコクレア社と協力して水中でも装着可能な人工内耳を開発した。
プロサーファーからコーチ業に転身した後、RedBullを経てサーフィン・オーストラリアのヘッドコーチに就任。
退任後はミック、ジュリアンのコーチを務め、現在のガブリエルのコーチ就任に至る。
「ミックから、ガブリエルがコーチを探していると聞いたんだ。私たちは10年来、対立する陣営にいたから100万分の1の確率だと考えたよ。しかし、ミックが私達の関係の保証人になってくれたおかげで、信頼関係が生まれたんだ。そして、仕事仲間として強い関係になった。ミックは正しかったね。ガブリエルは忠実で楽しい人。とても仲良くやっているよ」
アンディ・キング
継父チャーリーがコーチを務めていた時、ガブリエルはオーストラリアレッグを苦手としていた。
明らかに後半戦に追い上げるタイプの選手だったのだ。
しかし、今シーズンは2勝に2位と最高の成績を重ねて2位のイタロに8,000ポイント以上の差をつけてトップに立っている。
アンディはこの結果を自分の手柄とは言わず、コーチとは何をするべきかをしっかりと把握している。
「サーフコーチという言葉さえも馬鹿げているよ。NFLやサッカーのコーチは、選手をチェスの駒のように使って、綿密な戦略を練っている。しかし、サーフィンでは選手が岸を離れれば、自分の力で行動することになり、適応出来なければ終わりなんだ。つまり、サーファーがすべてを決定するのさ。もし、誰かがガブリエルのようなサーファーに実際のサーフィンを教えたり、コーチングしたり出来ると言ったら、もう自分はこの場から去るしかないね」
アンディ・キング
アンディは自らを才能豊かな人のための’ブロッカー’と表現する。
アスリートがやりたいことを自由にできるように邪魔者を押しのけて障害を取り除くのが仕事だと。
「自立には力が伴う。サーファーが自分で出来ることに気づけば、自分のパフォーマンスをより良くすることが可能なんだ」
アンディ・キング
アンディの哲学は、’高いパフォーマンスは快適さと共にもたらせる’というものだが、それはアスリートの成長の糧になり、バランスのとれた行動でもある。
ガブリエルは特にそのバランスを重視しているそうだ。
「失敗からすぐに学び、常に成長し、向上し続けるという点が他の選手とは異なるんだ。それは経験を積むことで得られるものだけど、これほどまでに常に上昇気流に乗っているサーファーを私は見たことがないね。そんな彼を間近で見ることが出来るのは光栄なことさ」
アンディ・キング
次のCTの舞台は2018年、2019年と2連覇を果たしたサーフランチ。
6月18日〜20日に開催される。
参考記事:Andy King On Gabriel Medina’s Successes And The (Non) Art Of Surf Coaching
(空海)