Photo: THE SURF NEWS/ Kenji Iida

「この4年は一生忘れない」五十嵐カノア、金を逃した悔しさと銀メダルの栄光/東京2020オリンピック

史上初の五輪サーフィン銀メダリストとなった五十嵐カノア

準決勝では、2度のワールドチャンピオンであるガブリエル・メディナを相手に、残り8分で決めたフルローテーションエアーで9.33ptをメイクし、見事逆転で決勝進出を決めた。

「あのエアリアルは毎日トレーニングする技だけど、こんなプレッシャーがかかって大切なタイミングでその技を出せて嬉しい。一生忘れないエアリアルになると思う。」そうコメントして挑んだ決勝

ブラジルのイタロ・フェレイラが、得意のエアーよりターンで確実にスコアを伸ばすなか、カノアは波選びに苦戦し、コンビネーションに追い込まれたまま試合は終了。金メダルはイタロの手に渡った。

試合終了のホーンが鳴った後、海から上がってきたカノアは波打ち際に膝から崩れ落ち、天を仰いだあと、板を抱えて座り込んだ。しかしその1分後には立ち上がり、悔しさをにじませながらも笑顔で波乗りジャパンの仲間たちが待つビーチに帰って行った。

Photo: THE SURF NEWS/ Kenji Iida
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カノアが望み続けていた金を逃した悔しさと、銀メダルを手に入れた栄光。あの時カノアは何を思っていたのか。試合終了後のインタビューから振り返る。


■ヒート終了直後

「こんなに大切なオリンピックのファイナルで自分の戦略が合っていなかったのが悔しい」

決勝を終えた率直な気持ちは?

悔しい。ここまできて自分のリズムを作って、いい感じにまとまってきたところだったのに、自分の作戦が良くなかった。ヒート中自分に(勝つための)チャンスを与えなかったのは悔しい。サーフィンはそういう面もある、プラン通りにいかないこともある。でも、自分にチャンスを与えなかったのがショックで、まだよく考えられてないけど落ち込んでいます。

決勝での戦略について

波待ちの位置が合っていなかった。コンディションは10分ずつ変わっていくのに、変わっていくことに気が付かなかった。この戦略を立てた時と、ヒートの時のコンディションは変わってた。そういうミスはたまにあるけど、こんなに大切なオリンピックのファイナルで自分の作戦があってなかったというのは悔しい。本当にここまで来たのに、波に乗らなかったというのは自分のミスで、本当に悔しいです。

イタロが点数を出していくなかで悔しさや焦りはあったか?

自分がプランを作ったら、ぶれなくプラン通りにやりたいと思っていた。イタロのプランはもう少し右の方で波待ちしててそれが合っていた。自分も最初からあっちに移動すればよかった。頭が堅かったというよりも、自分が作ったプラン通りにやりたいという思いが強くて、最後の10分くらいに変更しないとと思ったけど、その時には遅かったんです。

涙を浮かべながら表彰台に向かう五十嵐カノア Photo: THE SURF NEWS / Yasuma Miura

■表彰式終了後

「この4年の全部の準備がそこで集まった悔しい気持ちもあったけどありがたいこともいっぱい考えた」

海から上がってひざまずいて何を考えていたか?

力を全部使い、この4年の全部の準備がそこで集まった。悔しい気持ちがあったけど、ありがたいこともいっぱい考えました。海が毎日のように波を送ってくれて「海の神様にありがとう」って言いました。

(涙を見せていたのは)悔しいから。アスリートは勝つことが凄い好きなので、優勝という目標に凄く近いところでミスしたのが悔しい。悲しいから涙が出たということもあるけど、今日だけじゃなくて、今日のために4年分の準備があったので、その中でよくここまでやったなと自分でも思いました。

Photo: THE SURF NEWS / Yasuma Miura

銀メダルを実際手にしてみた気持ち

初めてのオリンピックで良いサーフィン見せられて日本のためにメダルを獲ったことは本当に嬉しいこと。金メダルに凄い近かったのに逃したことがショックだけど、日本の旗を振って、日本人のファンもいっぱい見てくれて、メッセージも送ってもらって、今回は一生忘れない週。週だけじゃなくて、この4年は一生忘れない。今日も本当にスペシャルな日で感謝です。

サーフィンをメジャーなスポーツにしたいと言っていたが?

自分が良いサーフィンをした結果、サーフィンが世界に、メジャースポーツに少しでも近づいていたら嬉しい。
自分も毎日、世界にサーフィンをよく見せるにはどうしたらよいかを考えていて、それがモチベーションにもなっていた。今朝、(ガブリエルとのヒートで)エアーを決めたとき「世界が見てくれるエアーだ」と思った。これは見ていて面白いと感じて欲しいし、ファンが増えたら嬉しいと思いました。

「今回カノアを見てサーフィンしたくなった人がいればそれだけで目標成功」

目標のために毎日努力し続ける姿に勇気をもらった人も多いはず。そんな人達へのメッセージは。

1人でも「今回カノアをみてサーフィンしたくなった」「嬉しくなった」と言ってもらえるのが嬉しい。今回のオリンピックはそれが一番でメダルよりも大切。1人だけでもいればそれが幸せで、それだけで今回の目標は成功だと思います。

次のパリオリンピックに向けてのイメージは?

オリンピックはこういうプレッシャーなんだと学びました。今回ものすごいプレッシャー感じて、それが一番面白かった。プレッシャーを感じて、それに勝つというのが、特に面白かった。今日だけでなく、最初の日から毎日のようにプレッシャーがあったので、毎日毎日目標を掴んで、金メダルに近づいて、それがチャレンジャーみたいで幸せな感じ。2、3年後、もうすぐまたオリンピックに行きたいと思います。

「次の大会のために明日からジムでトレーニングしたい。それが俺のカフェイン」

五輪が終わった直後の今、食べたいものややりたいことは?

(何かを食べたり飲みに行ったりするより)早く次の大会のために準備したい。明日からジムに行ってトレーニングしたい。それが一番やりたいこと。それが俺のカフェインなのかな、力になるので。今回銀メダルだったことがモチベーションになって、金メダルとれなかったことで、まだまだいっぱい上手くならなきゃいけないことがある。また明日から上手くなるように頑張ります。

■表彰式後の記者会見

史上初のオリンピックメダリストとなりどんな1週間だったか?

今週だけではない、過去4年間の戦いだった。皆さんは今週の結果だけに注目するかもしれないけど、この大会に出場した40人の選手は、もっともっと前から準備をしていました。母国を代表しているサーファーとして、ここで戦うことができ、国にメダルを持ち帰れて嬉しいです。

Photo: THE SURF NEWS / Yasuma Miura

1カ国2名という五輪の選考プロセスについて

世界のそれぞれのジェンダーの20名のトップ。各国の1位、2位が選ばれただけでも十分に才能がある人が集まった。
代表選考は、一つの国に偏重することなく、全ての国が公平に、様々な国地域が参加できていろんな多様性があった。
世間やメディアは気付いていないかもしれないけど、選抜プロセスは大変で簡単ではない。それぞれの選手がそれぞれの仕事をして、いろんなプレッシャーと戦ってこの舞台にいる。それぞれの国が公平に選考プロセスを行った結果だと思う。

「日本の子供たちに良いサーフィン世界を贈りたい。その夢がモチベーションになっている」

改めてカノアがサーフィンをする意味とは?

それは3時間くらい話せる難しい質問。家族ももちろんモチベーションになっているし、いつも遅い時間や朝早く、日曜も、見て応援してくれるファンの皆さんにも力を貰っている。一番のモチベーションは、ネクストジェネレーションのため。日本の子供たちに良いサーフィン世界を贈りたい。サーフィンだけじゃなく、海を綺麗にしたり、オリンピックスポーツとして子供たちのために良い基盤を作りたいという夢が、モチベーションになっています。

(THE SURF NEWS編集部)

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