5年目となるサーフィンチャンピオンシップツアー(CT)での活躍に加え、2021年は東京オリンピックで銀メダルを獲得した五十嵐カノア。11月24日、都内で行われた『GQ MEN OF THE YEAR 2021』の授賞式会場で、THE SURF NEWSの単独ショートインタビューに応え、今年1年を振り返った。
オリンピックの経験から「プレッシャーをエネルギーに変える」ことが出来るようになったと自身が語るように、その強靭なメンタルが五十嵐カノアの強さの一つでもある。その一方で、今回のインタビューでは「オリンピック後のメンタルの切り替えが今年一番大変だった」と燃え尽きを感じていたことも明かした。
オリンピックのために4年間準備をし続けた五十嵐カノアが、大舞台を終えた現在見ている景色とは?
■挑戦の2021年を過ごした五十嵐カノアに10の質問
「3カ月以上経ったけどまだオリンピックのことを考えていてリカバリーしている途中」
1.改めて2021年を振り返って
オリンピックの凄さも感じて、日本の力も世界に魅せられて嬉しい。もうオリンピックから3カ月くらい経ったけど、まだオリンピックのことを考えていて、リカバリーしている感じ。一生忘れないと思う。
2.4年間準備をし続けたオリンピックの価値
今年はコロナで、みんなが辛く落ち込んでいる世界の中で、オリンピックで皆を幸せにした。テレビをつけてスポーツをやっているっていうのはインパクトがあったと思う。オリンピックはポジティブなメッセージを世界に伝えたと思う。
皆見てくれて、メッセージも沢山貰った。「今回オリンピックで頑張ってくれて幸せになった」「ありがとうございます」というメッセージを貰って、頑張った甲斐があったと思いました。
「オリンピックで一番学んだのはプレッシャーはネガティブなことじゃないということ」
3.五輪から得た学び
今回のオリンピックで一番学んだことは、プレッシャーはネガティブなことじゃなくて、すごいポジティブなこと。プレッシャーをエネルギーに変えるというのは、今回できたこと。今後もまたプレッシャーを探したいと思う。
4.波乗りジャパンのチームについて
まわりにチームがいて、サポートしてくれる人が直ぐ近くにいるというのは、すごく力になると初めて感じた。波乗りジャパンのスタッフも、一人ひとり違う役割があって、みんな同じ目標に向かって力を合わせている。その一つ一つが力になるというのが印象に残っている。今回の銀メダルは自分だけのメダルじゃなくて、スタッフとも分け合いたい。一生有難いです。
「反対にオリンピック終わってからが一番大変だった」
5.オリンピック後、次の目標へどのように気持ちを切り替えたか
(オリンピック後どのようにメンタルを切り替えるかが)今年の一番のチャレンジ。オリンピックは初めてのことだったので、終わったらどうなるか自分でもよくわからなかった。オリンピックが終わって、身体よりも頭が疲れている感じだった。夜もよく眠れなくて、反対にオリンピック終わってからが一番大変だった。
オリンピックの前は楽しみで、いつも通りのルーティンだった。終わってから、眠れなくなったり、トレーニングのモチベーションが保つのが難しかったり、(オリンピック直後の)メキシコの大会では100%の自分が出せなかった。
でもそれも勉強になったこと。次のオリンピックに向けて、どんな準備かは分からないけど、(大きなイベントの後は)力がなくなると予め準備しておけば、もう少しスムーズなのかなと思います。
6.五輪でエネルギーを使い果たしてどうやってリカバリーしたか?
2週間くらいバケーションとって、メキシコでゆっくりして、電話をいじらないで、ゆっくりサーフィンして、友達とリラックスした旅行をして。そのあとヨーロッパにいって、沢山の友達に会って、メダルを持って行って。「みんなのメダル」って見せて、ゆっくり夜ご飯食べながら、オリンピックの経験を喋って。オリンピックの事を話したのがすごいリカバリーになった。ちょっとずつ元に戻ってきたのかな。
▲ポルトガルで友人達に囲まれて24歳の誕生日を迎えた五十嵐カノア
「普通の選手はもっとリラックスする時間があるけど、僕はそれより練習を続けたい」
7.CS全戦に参加している理由
本当は一個もCS出ない予定だったけど、USオープンには出てもいいかなと思って。
今一番大切にしているのは来年への準備。そのために何が必要かを考えて、ジムでのトレーニングもすごい大切で毎日しているし、当たり前だけど海の中のサーフィンも大事。
あと何ができるかを考えて、コンペティションのためにはコンペティションが一番いい練習。普通の選手はもっとリラックスする時間があるけど、僕はそれよりもう少し練習を続けていきたい。
8.GQアワードのテーマは「YEAR OF THE BRAVE(勇者たちの年)」 今年一番勇気をふり絞った瞬間は?
オリンピック。プレッシャーを感じた。世界が見ているなかで、良いパフォーマンスを見せられたというのが、自分でも感動した。嬉しい。
「どんな時でもDon’t give upというのをみんなにも伝えたい」
9.1年前の自分と一番変わったところは
どんなシチュエーションでもDon’t give upというのを自分にも伝えられた。海の中、大会、オリンピックだけじゃなくて、普通の練習の時もDon’t give up。自分だけじゃなくて、みんなにも伝えたいメッセージ。
10.直近の目標と将来の目標
直近の目標は世界チャンピオンになること。長期的な目標はパリでの金メダル。
日本人で初めての世界チャンピオンになるということと、日本人で初めての(オリンピックの)金メダルを取ることが目標です。
(THE SURF NEWS編集部)