サーフランチ戦でのジャッジに不満を持ったガブリエル・メディナのSNS投稿から始まったWSLのジャッジ論争。
簡単に説明するとサーフランチでのCT第6戦『Surf Ranch Pro』でガブリエルはブラジリアンサーファーに対するスコアリングが不当と感じ、ジャッジ基準に一貫性が見られず、サーフィンの進化を阻害。スコアリングについて説明を受ける事はできるものの不明瞭なケースが多いという内容の投稿を自身のInstagramに投稿した。
ガブリエルのInstagramのフォロワー数はWSLの約3倍で、影響力も絶大。
この投稿にはファンだけでなく、同じブラジリアンのイタロ、フィリペ・トレド、エイドリアーノ・デ・スーザ、ジョアン・チアンカ、ヤゴ・ドラなどが賛同。
他国の選手も巻き込んで、論争が過熱。遂に殺害予告まで出てしまったのだ…。
WSLサイドはすぐにCEOのエリック・ローガンが反論。
ジャッジ基準は常に一貫していて明朗であり、コンテスト出場の全アスリートはいつでも質問をする機会がある。適切なプロセスを踏まずにSNSで不満を漏らす事は容認できないし、公となるSNSでのジャッジ批判により殺害予告といった脅迫が蔓延ったことに憤慨しているといった内容の声明を出した。
サーフランチ戦の後に開催されたエルサルバドル戦の会場を見る限り、この論争は沈静化したと思われたが、反対側の立場にいたグリフィン・コラピントが和解を申し出たことが裏目に出てしまい、SNS上ではまだ論争が続いている。
WSLが公開したスコリングの解説動画
もし、この問題が沈静化しないまま次のブラジル戦に入り、サーフランチと同じく納得できないジャッジがあった場合、ただでさえ血の気が多いブラジリアンファンの不満の矛先がどこに向かってしまうのか?
サッカーの試合でファンが暴動を起こすことは珍しくなく、サーフィン会場でも暴動が起こる最悪のケースでさえ考えられる。
WSLにとっても、選手にとってもそれは望ましくないことである。
WSLはそのブラジル戦を前に元ヘッドジャッジのリッチー・ポルタによるスコアリングの解説動画を公式YouTubeで公開した。
カリッサ、イタロ、フィリッペの昨年のブラジル戦の動画を使用してジャッジがどのように評価しているかの要点を伝えている。
基本的にハイスコアに結び付くのはメジャーマニューバーの組み合わせだが、ケースバイケースでもあることを説明。
この時のブラジルのサクアレマの波はロングライド可能な波ではなく、およそ2ターンでクローズしてしまう波が多かった。
カリッサがファイナルの最後で出したバックハンドの9.50は同じような二つのターンだったが、パワフルなマニューバーが評価された。
Round of 16でのイタロのバックハンドのフルローテーションはテールハイと完璧な着地でほぼ1マニューバーながら、8.67がついた。
自身4度目の優勝を決めたフィリッペは2つの例が取り上げられている。
まずはターンオンリーでのハイスコア。
フローターからの2つのビッグターン、エンドセクションと派手さはなかったが、大きなボトムターンからのバーディカルなストレートアップ。全てのターンが流れるようにコンビネーションされたことで8.67のハイスコアがついた。
そして、エアーの1マニューバーによる10ポイント。
バックハンドのフルローテーションは前例のイタロよりも飛距離があり、革新的さを評価された。
この動画の説明を紐解くとサーフランチで指摘されていた技の数ではなく、一つ一つの技の完成度の高さやコンビネーション、流れなどがスコアリングの重要な焦点となることが分かる。
とはいえ、過去のブラジル戦でのスコアリングは世界一熱狂的なファンによる異様なまでの会場の雰囲気からか、ブラジリアンにアドバンテージがあるように思える。
事実、2017年にサクアレマに会場を移して以来、エイドリアーノ、フィリッペと全てブラジリアンが制しているのだ。
ファイナル5、2024年パリオリピックの代表権と共にこのジャッジ論争がどこに向かうのかにも注目が集まる第8戦『VIVO Rio Pro』は6月23日から開幕する。
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(空海)