今年8月初旬、WSL公式サイトの年間スケジュール内に登場した「TOKUNOSHIMA TOWN PRO JUNIOR」。
この徳之島町大会は、2023年のWSLジュニアツアー最終戦。今年のアジア代表選手を決定する重要な一戦となるが、「徳之島」でのサーフィンについては、まだあまり知られていないのが現状だ。
ここでは、徳之島町のサーフィンに関する現状と取り組み、アクセスなど現地情報を紹介したい。
WSLが開催するジュニアツアーとは
WSLが開催するジュニアツアーは、年末に開催されるWJC(ワールド・ジュニア・チャンピオンシップ)の予選大会として、各リージョナル毎に開催されているもの。日本を含むアジアリージョナルの場合、今年は全4戦のうちベストリザルトの2戦の合計でランキングを決定し、男女各2名がアジアの代表選手としてWJCの出場権を得る。
2023年の徳之島大会は、クルイ、一宮、ニアスに続く最終戦となり、アジア代表選手を決定する重要な一戦。WJCの優勝者は翌年のCS出場権を得ることもできるため、将来のCT入りを目指すジュニア選手にとって重要な一戦となる。
徳之島のサーフィン
徳之島(とくのしま)は、南西諸島の奄美群島に属する離島の1つ。
その奄美群島のうち奄美大島と徳之島は、アマミノクロウサギに代表される希少種を含む多様な生物が生息・生育していることが評価され、2021年7月に世界自然遺産に登録された。
島の面積は約247.85平方km、周囲およそ89kmの海岸線にはまだ未開のサーフポイントも多く存在するともいわれる。
現在、徳之島在住のサーファーは約50名。島内にサーフショップはなく、徳之島特有のリズムでコミュニティが形成されており、ローカルサーファー達が島の海を守り続けている。
大会会場の「花徳浜」について
「TOKUNOSHIMA TOWN PRO JUNIOR」の大会会場となる「花徳浜(けどくばま)」は、徳之島町を代表するビーチブレイクで、年間を通してサーフィンが楽しめるポイント。
潮の流れや台風等による海底の砂の動きで地形が変化するため、時期によりコンディションの良し悪しはあるが、サイズが上がれば厚くパワフルなブレイクが特徴的で、現在は干潮時がベストなコンディションとなる。
島内のメジャーポイントは、花徳浜のほか、里久浜(りくばま)と山ホワイトビーチの3か所で、どれもビーチブレイク。1kmほどビーチが続く花徳浜はビジターにもおすすめで、ゆとりをもってサーフィンを楽しむことができる。
徳之島町における「サーフィン」の取り組み
なお、これまでサーフィンに関する公な情報が公開されていなかった徳之島町が、WSLの国際大会開催に踏み切ったのはなぜか。
島のローカルサーファーであり、徳之島町おもてなし観光課長を務める吉田広和氏に、その経緯や想いを聞いた。
Q 徳之島町の観光PRとして「サーフィン」の取り組みがスタートしたきかっけはなんでしょうか
具体的な取り組みが始まったのは、2021年7月26日にこの徳之島が世界自然遺産登録された後。きっかけは、7月に千葉で行われたQS3,000のコンテストディレクターを務めた河合さん達の来島による出会いです。
私自身が行政にいながら考えに至ったことはありますが、このような大会をこの徳之島町で開催できるとは思っていませんでした。その決断ができたのは、高岡町長の後押しがあったからです。
徳之島町においては、世界自然遺産登録地としてのPR活動等によって認知度が格段に向上しました。これにより観光客の増加に繋がっているところではありますが、島の規模から1日で島内の景勝地を周ることができるので、観光で訪れた皆さんの滞在期間が短いことが課題でした。
そこで本町の白く美しい砂浜のビーチブレイクでサーフィンの世界大会を開催し、来島してくれた選手や家族、関係者の皆さんに情報の発信源となっていただければという思いで開催を希望しました。この機会に、ぜひ「サーフィン」としての徳之島町も知っていただきたいと考えています。
Q 島内初のWSLイベントとして、ジュニア大会の開催を選んだ理由はなんでしょうか
先ほどもお伝えしましたが、大会開催を通じての情報発信であれば、選手や関係者はもちろん、全国の方に “自然豊かな徳之島町の良さ” を知ってもらうことができます。
そして、この大会を観戦した島の子供達にサーフィンに興味をもってもらい、島を誇りに思ってもらいたい、そしていつの日か、徳之島町からのオリンピック選手が誕生するかもしれない。そのような期待も含めて、ジュニア大会の開催を決断しました。
イベント期間中は、キッズ育成を目的とした16歳以下のコンテスト「TOKUNOSHIMA TOWN KIDS CHALLENGE」も同時開催します。
Q 大会出場予定選手の中で、地元からの注目選手がいれば教えてください
徳之島町としてぜひ応援したいのは、上野陸君ですね。彼は徳之島高校普通科3年生で、サーフィン歴は5年。サーフィンを始めたのは14歳の頃、きっかけは友達に誘われて、波に乗る感覚が楽しかったからといいます。
自宅からポイントが遠いので、サーフィンは花徳浜で年に40回くらい、1日3時間入っています。
Q 徳之島町では、30年続くローカルコンテストがあるとお聞きしましたが、どのような大会なのでしょうか
当初は徳之島のローカルサーファーチーム「FLB(フンニャト・ローカル・ボーイズ)」のメンバーで資金を集めて開催していましたが、私が役場に入職した平成7年に、町主催の祭り「どんどん祭り」の一環として加えてもらい、公に開催するようになりました(※ “フンニャト” は、花徳浜の方言で “大きい湊” の呼び名)。
大会は既に37回を迎え、今年は7月30日に行われました。
参加者は60名。ちょうど台風接近の時期に重なってしまい、島内での足止めも予想されていましたが、島内のサーファー以外にも、奄美大島や与論島からの参加もありました。
Q 徳之島でサーフィンをする際の注意点や参考情報はありますか?
ここ徳之島町に限った話しではありませんが、来島してサーフィンをする際には、ポイント付近での地域住民への気配りや挨拶を心掛けていただけると、気持ち良くサーフィンが楽しめると思います。島のローカルサーファーはフレンドリーですので、挨拶とルールを守っていただければ、きっと友達になれます。
また、徳之島の観光スポットやビーチの場所などは、島の観光パンフレット等に情報が記載されています。サーフィンで分からないことがあれば、おもてなし観光課の吉田をお尋ねください。
徳之島町観光パンフレット
http://www.tokunoshima-town.org/omotenashikanko/kanko/pamphlet/index.html
吉田広和氏 プロフィール
徳之島町おもてなし観光課長
サーフィン歴32年、ローカルサーファーコミュニティの中心のひとりとして、島のサーフィンの発展にも従事。
徳之島の伝統文化である闘牛も好きで、自らも3頭を飼育。サーフィンだけでなく釣りも趣味。
吉田広和氏
なお、今大会の同時開催イベントとして、16歳以下の男女を対象にしたコンテスト「TOKUNOSHIMA TOWN KIDS CHALLENGE」の開催も決定。こちらはWSL非公認試合ながら、将来を夢見るキッズ達が、世界で戦うプロジュニア選手と同じ舞台で戦い、経験を積んでもらうというもの。
徳之島町では、本大会の継続開催に加え、今後は障がい者サーフィンの大会開催なども視野に、取り組みを検討していくとのこと。
今後、徳之島へサーフトリップを検討されている方は、本大会を通して発信される情報等を踏まえて、世界自然遺産の島のサーフィンを楽しんでもらいたい。
徳之島町で初となるWSLイベント「TOKUNOSHIMA TOWN PRO JUNIOR」は、10月12日(木)~14日(土)の日程で開催。
本大会の模様はWSL公式サイト/アプリより全世界に配信されるほか、大会オフィシャルサイト(http://www.tokunoshimatownpro.com/)でも、ライブ配信やヒート表など各種情報が更新される予定だ。
WSLジュニアツアー
「2023 TOKUNOSHIMA TOWN PRO JUNIOR」
WSL Men’s Junior Tour(MJQS 1,000)
WSL Women’s Junior Tour(WJQS 1,000)
日程:2023年10月12日(木)~14日(土)
会場:鹿児島県大島郡徳之島町花徳(花徳浜)
公式サイト:http://www.tokunoshimatownpro.com/
同時開催「TOKUNOSHIMA TOWN KIDS CHALLENGE」
カデットクラス(男・女)
日程:2023年10月13日(金)~14日(土)
年齢:16歳以下 ※2023年10月14日の時点で16歳以下
※オフィシャルサイトにて近日中にエントリー開始の予定
徳之島へのアクセス
徳之島へアクセスは、鹿児島、奄美大島、那覇を経由する方法が一般的
●フェリーを利用する場合:那覇、または奄美大島を経由
●飛行機を利用する場合:鹿児島、または奄美大島を経由
※那覇から飛行機を利用する場合は、沖永良部島か奄美大島経由となる
※繁忙期を除けば、那覇か奄美大島からフェリーを利用する方法が最安値
飛行機はJALグループのJAC(日本エアコミューター)、フェリーはマルエーフェリー A’Lineまたはマリックスラインが運航中。
※利用時は、各社ホームページ等で運行状況を要確認
徳之島の宿泊など
宿泊や島の観光スポット等は、徳之島観光連盟ホームページで検索可能。
http://www.tokunoshima-kanko.com/?post_type=shop&s=&shop_cate=stay&area=
(THE SURF NEWS編集部)