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バレル勝負となるパリ五輪のサーフィン用語とサーフスタイルについて

サーフィンにおけるマニューバは大きく区分すると3つに分けられ、ターン、エアー、バレル。

その中でチョープーでのサーフィンコンテストになると、バレルを形成しないほどスウェルが小さい時を除けば、基本的にバレルライドこそが全てとなります。

そこでオリンピック観戦で役立つバレルライドでは頻出となるサーフィン用語、そしてバレルライドにおけるサーファーのこだわりなど事前に知っておいた方が良いポイントなどがあるので紹介していきます。

バレルライドにおける専門用語

Photo: WSL / ED SLOANE

サーフィンはハワイ発祥とも言われる通り(ペルーのトトラと言う説もあり)、海外発なので基本的に用語は英語ベースとなります。

その英語ベースの専門用語を、かつてのメインメディアであったサーフィン専門雑誌社が文字数制限のある紙媒体だったので短縮したり略した言葉がサーフィン用語となっています。

ここからは各用語を説明していきます。

*バレル(barrel):波が巻き上げて筒状になった状態を指し、「チューブ」と呼ばれることも多々あり「バレル」と同意語です。使用頻度の体感として日本では「チューブ」の方が多く、海外では「バレル」の方が多い印象です。

*スラブ(slab):底ボレするバレルを表現する用語で、「バレル」と「スラブ」の違いは波のホレ具合だけなのですが完全に区別して使われています。そしてチョープーの波は「スラブ」と呼ばれています。

*ドロップ(drop):パドリングして波に乗ろうとサーフボードに立ち上がる動作のこと。一般的には「テイクオフ」や「ポップアップ」と言う表現の方が多く、「ドロップ」と言うとバレルのようなコンディションにおけるテイクオフを指している印象。

*ストール(stall):バレルになるような波は極端に波のフェイスがホレているので自然とハイスピードになります。ハイスピードになるとバレルの前方を走ることになるので、バレルに入るためにスピードダウンさせるテクニック「ストール」が求められます。ストール方法はウィリーであったり、腕やお尻を波のフェイスに当て抵抗にしたりと多種多様。

*プルイン(pull in):バレルに入る事をプルインと言い、正式な英語表現では「pull into a barrel」。

*トラベリング(travelling):バレルの中を滑走している動作。基本的にロングバレルで使用される言葉で、通常ならば波に巻き上げられておかしくない状況ながらライディングを続けている時に「still travelling」などと表現されます。

*メイク(make):横乗り系全般に共通する表現で、技を成功させた時に使う表現。バレルライドに関しては、バレルを抜けてきた時に使う表現で、一般的な英語表現では「come out of the barrel」と言います。

*スピッツアウト(spit out):バレルになると波の内部の空気が圧縮されるので、バレルの出口へ向かい内部の波しぶきが勢いよく吹き出します。この波しぶきを背中に浴びて後押しされながらバレルを抜けてくる事をスピッツアウトと言います。英語だとリアルタイムと言うよりも、スピッツアウト後に説明することが多いので過去形となる「spat out」と使われる事が多いです。

*フォームボール(foam ball):ブレイクした波の泡状になっている箇所で、日本ではスープと呼ぶことが多いです。英語では「フォームボール」だけではなく「ホワイトウォーター」とも呼ばれ、主な違いとしてはライディングを続けられるかどうかで、ライディングを続けられる場合の呼び名がフォームボールで、ライディング終了となるスープがホワイトウォーターといった感じです。

*グラブレール(grab rail):サーフボードの両端が「レール」と呼ばれ、グラブレールとはレールを掴むこと。特にバレルのようなホレた波では安定させるためにグラブレールします。

上記の用語の中でもライブ観戦している時に「フォームボール」と「グラブレール」について、深堀した内容を知っておくと見え方が変わるので、もう少し解説を加えておきます。

バレルライドにおける「フォームボール」と「グラブレール」

「フォームボール」

Photo: WSL / KELLY CESTARI

バレルライドにおけるフォームボールとは、バレル内部に発生するスープのこと。

バレル内でフォームボールに追いつかれてサーフボードが乗り上げてしまうと、極めて不安定となってワイプアウト(転倒)してしまうことが以前は一般的でした。

ただし、出来るだけ長時間バレルに滞在するにはフォームボールと上手く付き合う必要があり、フォームボールと波のフェイスの際を走ることがかつてのスタンダードでした。

しかし、今ではよりディープなバレルライドのため、フォームボールに乗り上げるほどのポジションを取りながらもバレルを抜けてくるサーファーが増えてきています。

道具が進化したのか、はたまたテクニックが進化したのか定かではありませんが、確実にパフォーマンスレベルが向上しているのは明白。

フォームボールに乗り上げているのかどうかは、ウォーターショット視点の映像だと確認できる事が多いのでチェックして見て下さい。

「グラブレール」

Photo: WSL / MATT DUNBAR

バレルライドにおけるグラブレールとは、波に背中を向けながら乗るバックサイドサーフィンのみに該当するので、レフトハンダーのチョープーではスタンスがレギュラーフッターのみ対象となります。

グラブレールとは前述した通り、レールを手で掴むことでサーフボードの挙動を安定させる働きがあります。

一方、レールを掴まない「ノーグラブ」だと不安定になるので難易度が上がり、ノーグラブにこだわりを持つサーファーも多いです。

テイクオフから完全にノーグラブでバレルを乗り切ったり、テイクオフだけグラブするもののその後はすぐに手を放すパターンなど様々。

ノーグラブは難易度が上がるものの、個人的な感覚としてスコアに大きく直結しているとは思えません。

それでもなお、ノーグラブにこだわるサーファーの理由としては、シンプルにバレルライドにかけるプライドでありスタイルだと思います。

そんなサーファーのスタイルも併せて楽しんで見て下さい。

(World Surf Movies)

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