(タイラーは2020年から左肩にLGBTQフラッグを付けている PHOTO: © WSL/Aaron Hughes

LGBTQが死刑になる可能性があるアラブでのCTイベント開催にタイラー・ライトの妻が痛烈な批判

ケリー・スレーターの「サーフランチ」のテクノロジーを利用したあの夢のような波が一般サーファーも利用可能な商業施設として遂にオープン。
すでに9月にLTが開催され、その他にも有名プロサーファーが招待されて次々と映像を公開していたので、指をくわえて待ち望んでいた方も多いだろう。

日本円で90分約14万円とウェーブプール史上最高額とアラブ首長国連邦(UAE)という場所が関係してからか、公式サイトの予約状況を見ると結構空きは多い。

「Surf Abu Dhabi」公式サイト
https://www.surfabudhabi.com/

その「Surf Abu Dhabi」で2025年に開催予定のCTイベントに大きな問題が浮上しているのをご存知だろうか?

それは「Surf Abu Dhabi」があるアラブ首長国連邦(UAE)が大きく関係している。
イスラム教が国教のこの国では、LGBT、LGBTQ、所謂同性愛が禁止されており、国内で同性間の性的行為が発覚した場合、死刑判決を受ける場合もある。

© Surf Abu Dhabi

「Surf Abu Dhabi」でのCTに参加する多くの選手や関係者はアブダビの隣にあるドバイの華やかさやワイルドな砂漠ツアーなどの非日常体験を期待しているだろうが、自身がLGBTQであることを公言して同性婚もしているタイラー・ライトとその一家はWSLの判断を批判している。

タイラーの弟、マイキーはInstagramでWSLに対して以下の批判をしている。

「姉が法律で死刑を宣告される可能性のある場所でイベントを開催するなんて不適切だよね。あなたたちは男女平等や平等な権利を謳っておきながら、それがWSLにとって都合の良い時だけの話になっている。WSLは彼女の肩にLGBTQフラッグを付けることを支持してきたのに、今になってその旗を外し、彼女がこのような罰のリスクにさらされる場所に連れて行こうとしているんだ。あなたたちには選手を守る責任がある。法律に対して彼女をどうやって守るつもりなのか、興味深いね」

2年前、タイラー・ライトと結婚式を挙げた妻のリリ・ライトもこの批判に参加。
WSL側からの返答は今のところない。

「残念ながら、今回の開催地の一つでは同性愛が違法で、その場所に行こうとすれば、法的に死刑や投獄される可能性がある。タイラーは14年以上ツアーに参加しており、2020年からはユニフォームにプライドフラッグを掲げている。WSLは2度もワールドタイトルを獲得している彼女のことを考慮してイベントを契約しなかったのね。WSLは選手を守る責任があるはずなのに、こんな危険な状況に彼女を置くことは許されないと思う。私はLGBTQIA+の権利がどうなっているのか、この開催地の法律や歴史について学ぶのが本当に辛かったし、正直言って、愛する人がこんな場所で競技をするなんて、心から納得できる解決策なんてないと思っている。でも、タイラーがそのイベントに出場しないことが、彼女のキャリアにどれだけ不利になるかも分かっている。3年間もその場所が使われることを考えると、欠場することは大きなデメリットだわ。タイラーの性的マイノリティが彼女の職場で負担や障害になるべきではない。私がここで言いたいのは、白人女性として特権があることを認識しているし、他国の法律や価値観にどうこう言うつもりはない。ただLGBTQIA+に対して厳しい法律がある国がプロスポーツの開催地として国際的に多額の投資をしていることには問題があると思う。唯一性的に少数派である選手のタイラーが黙って従うだろうと期待して、このイベントを開催するWSLは間違っているわ」

イスラム教国でのその他のプロスポーツでは、2022年にカタールで開催されたサッカーのワールドカップでLGBTにまつわる様々な問題が起きたことがある。
また、UAEでは近年F1やUFC、NBAのプレシーズンゲーム、eスポーツなど数多くの国際的なプロスポーツイベントを開催しており、同じ問題について議論を呼んでいる。

実際に死刑執行の例は少ないとされているが、LGBT、LGBTQの外国人旅行者が逮捕や拘留される事例は報告されており、リスクがあるのは間違いない。

WSLは「Surf Abu Dhabi」と3年契約を結んでいるため、今後も議論は絶えないだろう。
CTイベントは第2戦として2025年2月14日〜16日に開催予定だ。

(空海)

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