5度のワールドタイトル獲得に東京五輪での金メダル獲得。
その他にも数々の栄光を手に入れながら第二の人生を歩むために2024年に競技を引退したカリッサ・ムーア。
来年2月には第1子誕生も予定されており、彼女の近況報告ではすでにお腹が大きくなっている。
実はパリ五輪は妊娠3ヶ月で挑み、1ヶ月後にはモルディブでの『Four Seasons Maldives Surfing Champions Trophy』にも出場していた。
そんな彼女が将来についてインタビューに答えた。
CTから離れることを発表した時、家族を作ることを視野に入れていたの?それともオリンピックに集中することが主な目的だったの?
今年の初めにその発表をして決断をした時、私はオリンピックで良い結果を出すことに全力を注いでいた。
また、フルタイムの競技から離れ、タヒチで過ごしてチョープーでのトレーニングに全力を尽くす時間を確保したいと考えていたわ。
その時点では、それが私の頭の中にあったことよ。
しかし、今年のあるポイントで家族を作り始めたいとも考えていたの。
ドリームツアーと呼ばれているCTだけど、実際には過酷な一面もあると思う。あまり知られていない大変な点は?
CTは本当に素晴らしいライフスタイルで、これを仕事にできるのは感謝しかないわ。
13年間続けられたことも幸運だった。
しかし、あのレベルで毎年競争し続けるのは、精神的にも肉体的にも非常に負担が大きい。
休息を取るのが難しく、特にここ数年はオフシーズンが長くなったとはいえ、私の場合、休めるのはほんの数週間。トップを維持するには、すぐにトレーニングを再開しなければいけない。
また、大会中にすべてのコンディションが完璧に整うことは稀で、ほとんどの場合、理想的とは言えない波で戦う必要がある。
みんなベストなスウェルや風を活かそうと努力するけど、上手くいかないことも多いのよ。
良い波を求めて数ラウンド悪いコンディションで戦ったり、その逆もあったりする。
そして、各イベントで勝者は一人だけ。
年間10回の大会があるということは、負ける回数が圧倒的に多いということ。
家に帰ってリセットすることもできず、モチベーションを維持しながらツアーを続けるのは本当に大変なの。
これは多くの人が気付かないアスリートの課題だと思う。
ツアーに復帰する予定は?
今のところは未定。
ただ、自分がどれだけ競争心が強く、チャレンジを楽しむ性格かを考えると、いずれワイルドカードでいくつかの大会に出場して、その感覚を試してみたいなと思っているわ。
まずは体を回復させ、自分が理想とするサーフィンに戻れるようにしたい。
どうなるかは分からないけど、競技の世界に戻る可能性は完全に閉ざしていない。
これまでの競技生活には満足しているけど、母親としてその世界に戻り、家族と一緒に旅をし、自分の子供に私が関わった世界を見せるのはとても素敵なことだと思う。
プレッシャーは感じていないけど、新たな挑戦として面白そうだとも思うの。
今のツアーには、母親になりたいと願いながらも自分の情熱を追求し続けたいと思う女性たちが増えているわ。
妊娠していることはオリンピック前に知っていたの?
はい。
比較的早い段階で妊娠が判明していたわ。
6月中旬には気付いていて、オリンピックの時点で妊娠10週目くらいだった。
それまでストレスや移動が多い状況だったから、妊娠するとは思わなかったし、自分のキャリアと妊娠のタイミングが合うかは分からなかった。
実際に妊娠を知った時、このタイミングは幸運だったと思ったわ。
オリンピック後に次の人生のステージが待っているのは素晴らしいことよねって。
チョープーは危険な波です。妊娠中での競技に影響はあった?
全くなかった。
振り返っても後悔はなく、アプローチや競技の仕方に影響があったとも思わない。
まだ妊娠初期だったし、医師とも相談して胎児は骨盤に守られているので、腹部にボードが当たらない限り安全だと言われた。
ただ、一番大変だったのはつわりや倦怠感で、自分らしくないと感じることも多かった。
それでも「これは乗り越えなければならない障害だ」と考え、毎日全力を尽くしたわ。
他のママサーファーに相談した?
オリンピックに向けて準備してる間、妊娠初期だったから、夫と二人だけの秘密にしてたの。まだ流産のリスクも高かったし、何が起こるか分からないから。だから、他の人に頼ることもできなかった。
正直、それがちょっとクールだなって思う部分もあったんだけど、私は基本的にコミュニティの力をすごく大事にしてるから、ちょっと孤独に感じることもあったわ。
でも、妊娠を公表してからは友達とか、同じようにママになった人たちと話せるようになって、凄く助かったし、心強かった。
サーフィンしながら妊娠を乗り越えた女性も見つけたけど、まだ情報が足りないなって感じよ。
もっと色々知りたいって思っているの。
妊娠中に競技を続けたプロサーファーを知っている?
知らなかった。
それがこの決断をするのに時間がかかった理由だと思う。女性にとって、妊娠、出産には9〜10ヶ月という多くの時間が必要で、回復にも時間が必要になる。その間は競技から離れなければいけない。
特に妊娠初期を過ぎるとお腹が大きくなり、ラインナップでの動きが制限される上、赤ちゃんを守る必要もある。だから、ある時期を過ぎると競技を続けるのは難しいと思うわ。
以前は、母親になるとプロキャリアが終わると考えられていて、それが怖かった。しかし、最近ではスポーツ界でその認識が変わりつつあり、多くの女性が両立を目指している。自分の優先順位も変わるだろうけど、それでも高いレベルでサーフィンを続けたいという情熱は変わりはないの。
全てを両立できるかは分からないけど、挑戦してみたい気持ちはあるわ。
妊娠中のサーフィンはどう?
良い感じよ。
この数週間はとても謙虚な気持ちになっている。週に4~5回海に入っているけど、考え方を大きく変える必要があった。
以前のようにコンテンツを作るためにサーフィンをしたり、ターンや技を向上させようとは思っていない。
ただ純粋にサーフィンを楽しむために海に入っているの。それはとても素晴らしいことだと思う。
こうやって新しい形でサーフィンを愛せる機会を持てたことに感謝しているわ。
でも、正直言うとちょっと落ち着かない部分もある。長い間ずっと競技者としてサーフィンを見てきたからね。サーフィンは楽しいし、ずっと私の情熱の対象だったけど、競技モードをオフにして、違った視点で楽しむのは正直言って少し不思議な感覚なの。
娘があなたの足跡をたどってサーファーになることを期待している?
本当にそう願っている。
彼女がサーフィンを好きになってくれることが一番だと思う。毎日学校の後にでもビーチへ行き、海に飛び込むようなライフスタイルを楽しんで欲しいの。
私自身の人生を振り返ると、それが大きな喜びをもたらしてくれたから。
両親と一緒に海で過ごした時間は、絆を深める特別な瞬間だった。
娘とそんな時間を共有できたら最高だなって思う。彼女がプロを目指すかどうかは別として、とにかくサーフィンを楽しんでくれたら嬉しいわ。
親として尊敬している人やアドバイスを求めたい人はいる?
最近、感銘を受けるママたちが沢山いる。
面白い話で、父が最近もう一人子供を授かり、私には3歳になる弟がいるのよ。大人になった今、自分の父親が親としてどう向き合っているかを見るのは本当に刺激になるわ。
父は弟と真摯に向き合っていて、自立させながらも、必要な時にはちゃんとフォローしている。そのおかげで弟は自信に満ちた活発でとても賢い子に育ってる。礼儀正しくて、愛情深くて、優しい子なのよ。
また、私のヒーローの一人であるキミ・ワーナーはインスタグラムでフォローしている。
彼女の母親としての話や、キャリアと情熱のバランスを取る方法を読むのが大好きなの。
いつか彼女とコーヒーを飲みながら話を聞きたい。
最近、ケリア・モニーツとも話す機会があった。彼女もここ数年で母親になり、キャリアの大きな変化を経験しているけど、自分らしさを大切にしている姿が印象的よ。
彼女のようにサーフィン界やその外でも影響力を持ち続ける女性が増えているのはとても素敵なことね。
競技を離れて、他のことに集中する時間は増えた?
はい。
凄い充実しているわ。
今年はRed Bullと映像作家のピーター・ハムリンと一緒に、長編の映画兼ドキュメンタリーの制作に取り組んでいるの。
テーマは“自分探し”と“自己愛”で、来年みんなにシェアできるのが楽しみよ。
それから、自分のチャリティ団体『Moore Aloha』にも沢山力を注いできた。2025年にはプログラムをもっと拡大していけるのが楽しみね。
あとは、家族や友達と一緒に過ごす時間を作って、自分自身をリフレッシュさせることにも専念していたかな。
Carissa Moore Discusses Surfing Teahupo’o Pregnant and If She’ll Ever Compete Again
https://www.theinertia.com/surf/carissa-moore-discusses-surfing-teahupoo-pregnant-and-if-shell-compete-again/
(空海)