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NIKEがサーフィン界に戻ってきた理由とは?

週末に終了したばかりのWJCこと『World Junior Championships』でオーストラリアのシエラ・カーがNIKEのロゴをサーフボードに貼っていたことが話題になっている。

グロム時代は元CT選手のジョシュ・カーの娘という付帯があったシエラだが、現在はケイトリン・シマーズ(USA)、エリン・ブルックス(CAN)と並ぶ天才として崇められている。

昨年のWJC優勝、ISAでもワールドジュニアで優勝と2冠を達成してQSでも圧倒的な成績でリージョナルトップに君臨。
17歳にして今年はCSに参戦、来年にはCT入りというシナリオもほぼ確実と言われている。

そもそもシエラは過去2年間NIKEとフットウェアのパートナーシップを結んでいたが、新たにグローバルアスリートとなり、サーフボードのレール付近にNIKEを象徴する「Swoosh(スウッシュ)」が加わった。

NIKEがサーフィン界から撤退して10年以上が過ぎ、何故今になって戻ってきたのか?
それを考察してみた。

NIKEのサーフィン界参入と撤退

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約20年前にサーフィン界に参入していたNIKEは10年で撤退した経緯がある。

2002年にボブ・ハーレー率いる「HURLEY」と資本提携を結び、2011年にはアメリカ最大のサーフイベント『US Open of Surfing』のメインスポンサーにもなった。

ジュリアン・ウィルソン(AUS)を始め、ミシェル・ボウレズ(PYF)、アレホ・ムニーツ(BRA)、コロヘ・アンディーノ(USA)、カリッサ・ムーア(HAW)、レイキー・ピーターソン(USA)、ローラ・エネヴァー(AUS)などの強豪チームを作り、コロヘの契約金は75万ドルとも言われていた。

しかし、エリートなイメージが定着していたNIKEと自由でカウンターカルチャー的なサーフィンの市場がミスマッチであり、世界的に見ると限られたサーフィン市場の規模では、大手ブランドとしての収益性が見込めなかったことなどを理由に傘下の「HURLEY」に注入する方針に切り替え、あっさりとサーフィン界から撤退。
契約した多くの選手は「HURLEY」に移籍してスウッシュのマークは消え去った。

NIKE再参入の理由

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では、何故2025年になってNIKEがサーフィン界に再参入してきたのか?

まず、オリンピックの正式種目に決まったことでサーフィンの注目度が上がり、若年層やグローバル市場での影響力が増大したことが挙げられる。
次のオリンピックがアメリカということも市場拡大に繋がる可能性が高い。

また、新たに社長兼CEOに就任したエリオット・ヒルが「ブランドのスポーツへの情熱を再燃させる」ことを掲げた再建計画を発表。従来のスポーツを超えてブランドを再構築して現状からの脱却を目指すということも理由の一つとして考えられる。

シエラ・カーのような将来性がある若手に早期から投資することで、ブランドの革新性と最前線での存在感を強調する狙いもあるのだろう。

今回のサーフィン界再参入が長期的に続くのか、再び失敗に終わるのかは未知数だが、「Just Do It.」の精神でリスクを取る姿勢を示したNIKEの動きに今後も注目したい。

(空海)

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