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天気図の台風で、波がどこまで予測できるか(サーファー的、台風の読み方)

パーフェクトウェーブは、誰も知らないうちにスローカーブでやってくる

シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 34


台風を天気図で見てもイマイチわかりにくい。サーファーが知りたいのは「波が良くなるか?」知りたいのはそれだけだよね?
さて君は、天気図に現れた台風を見て、波の予想が立てられるかな?ちらりと天気図を見て、「この位置だと、ホームブレイクはあさっての夕方かも?」なんて予測できるだろうか?この記事では、サーファーが知りたい「台風の波」のイメージの読み方をアドバイスしたい。今年のグランドスウェルはこれでバッチリ、あとはコロナが収束してくれるのを待つだけ。

「台風は大きな竜巻」とみなす

波は風が起こす。風が海面に当たってさざ波が立ち、それが重なるとやがて大きなスウェル(波、うねり)となる。ということは、強い風が長い時間、吹けば吹くほど波は大きくなるという仕組みだ。その強い風を起こす代表選手が台風だ。海水温が上昇してその上昇気流によって台風が起きるわけだから、とてつもなく大きな竜巻が起こって、波を起こしていると思えば分かりやすい。

台風の風はかならず反時計回り

台風の渦は反時計回りと決まっている。それは自然現象で地球の自転や気流が関係しているらしいが、なぜだろうと深く考えなくてもいい。とにかく、台風は反時計回りに回転する竜巻のようなもの、と分かれば波を予想するときに役にたつ。

気象庁「台風予想進路図」を加工して作成

台風は北東に行きたがる

これも自然現象でそうなるようだ。必ずどの台風も北東に進むか、というとそうでもないけれど。だが、だいたいそういうルートを進むとだけ覚えておこう。台風はフィリピンあたりで発生し、台湾や沖縄の近くを通って北海道の方へ去っていくのが一般的。小笠原諸島の方へまっすぐ北上してから北東に進む台風もある。

台風は遠くにあった方が、波が良い

サーファーが求めているのは「パーフェクトウェイブ」だよね。ストーミーコンデションのジャンクな波は見たくもないよね。水平線のかなたからやってくるカーテンのドレープのような美しいスウェルのライン。そのような波のラインは、台風が遠くにあるからこそ発生する。

そのメカニズムはこうなっている。まず、台風は大きな竜巻だから海は大荒れとなる。台風を中心として半径数千kmは、その大荒れの暴風圏となる。暴風圏内で発生したスウェルは、ストーミーでぐちゃぐちゃな波だけど。その圏外へと抜けると、穏やかな風によってスウェルは整い始める。さらにそれは、海上を進むうちに波長が合って重なりだし、ピリオド(周期)の長いスウェルに成長し、やがて美しいラインのような「うねり」が完成するというわけだ。

だからサーファーにとっては、台風が数千km以上も遠くにあって、しかも動かないでじっとしてどんどん勢力だけ強くなってくれるのがつごう良い。(もちろんそのエリアは災害でたいへんだけれど)

台風が接近しすぎると日本列島も暴風圏内に入ってしまい、波が大きくてもジャンクなコンデションになってしまう。

スローカーブのように、スウェルは曲がりながら進む

さて、台風の風は反時計回りと言った。その風で発生するスウェルも真っ直ぐはではない。右から左へとシフトする。それはまるで、右投手が投げたスローカーブのように右から左へと弧を描く。

だから天気図に台風が現れたときは、台風が右サイドスローでカーブボールを投げているようなイメージで、スウェルを予想してみるといい。

気象庁「台風予想進路図」を加工して作成

イメージは、右投げサイドスロー

例えば、小笠原諸島のあたりに台風があると、日本に届くスウェルは東や南東スウェルになる。だから千葉から北のエリアでのサイズアップが早く、湘南は無反応、というケースも起こりがちだ。

九州の宮崎エリアはいつも台風スウェルの反応が良いが、海岸線が南東を向いていて、そのスローカーブのようにやってくるスウェルをキャッチしやすいからだ。四国の徳島県や、高知県の西側も同じ理由により南東スウェルの反応が良い。

気象庁「台風予想進路図」を加工して作成

では、湘南はどうだろう。相模湾で台風スウェルの反応が早いときは、台風が台湾や九州の近くで大きく発達しているときだ、そこからスローカーブを投げたとすると南西のスウェルとなり、相模湾がまるでキャッチャーミットのようにそれをしっかりと捕球する。その南西スウェルは高知県の東側や、駿河湾の奥にまで到達する。

だから、湘南のリアルサーファーたちは、台湾の近くで台風がじっとしていると、にやりと笑う。TVのお天気お姉さんが、「明日も相模湾は穏やかでしょう」と言っても、スウェルが反応するのを知っているからだ。そういうときは、セット間隔の長い腰腹から始まり、夕方には風が止まってオーバーヘッドにジャンプアップすることもしばしばだ。おそらく翌日は大混雑だろう。

※訂正とおわび、反時計回りに風が旋回することを「右旋回」と記述していましたが、正しくは「左旋回」です。訂正すると共におわび申し上げます。李リョウ

良い波に乗りたければ天気図を読め!photo by RR

二次感染も油断できない

コロナウィルスの影響でまだ予断の許さない状況が続いている。そんな厳しい状況でも台風は発生し日本へグランドスウェルを今年も届けるだろう。1日でも早く感染が収束し、サーフィンを思い切り楽しめる日が訪れることを願うばかりだ。

(李リョウ)

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