スノーサーファー玉井太郎、サーフィンと映像技術の変化、ほか(TSJJ10.5号の読みどころ)

1月15日に発売された「ザ・サーファーズ・ジャーナル」日本版10.5号の読みどころを同誌のコントリビューティング・エディターも務める李リョウが紹介。

An assemblage of bones

The surfers journal Japanese edition10-5

「なんだあ、この姉ちゃん」という印象は確かにある。だけどサーフィンの写真を見る限り「俺よりサーフィンうめえや」と焦ってしまう、きっとあなたも…。コンテストに偏重しがちな昨今のサーフィン界ですがサーフィンはやっぱりフリーサーフィンでしょう。そういう意味ではこういうファッショナブルというかアーチスティクな個性のサーファーは許せる。レディガガみたいなパワーを感じる、新しいジャンルを確立してほしいね。

Pixel by pixel

サーフィンは自然の音に囲まれているのがいい。波のブレイクするサウンドは最高だし、波よりも沖に出ると驚くほどの静けさに保たれていて、それも好きだ。サーファーにしかわからないあの静寂。波の手前と向こう側ではこんなに違うものかと驚く。しかし、そのスピリチュアルな静けさを台無しにする輩が現れた。ドローンである。あれはまるで蠅。あれがブーンと飛んでくると撃ち落としたくなるくらいイライラする。ドローンに限らず、映像の世界は大きな変化を遂げたけど、でも失ったものも多い。そんなことを徒然に書いたエッセイです。

The writing on the wall

デジタルによって映像表現の幅は広がった。確かにそうかもしれない。だがフィルム時代の、カメラマン情念のようなものはどうだろう?水中撮影で36枚しか撮れなかった時代が懐かしい、と言ったら笑われるかもしれない?でも本当ですよ。当時の気合はデジではもう入りません。36回のチャンスに賭ける思いは、筆者が自分でいうのもなんだけど相当なものでした。

畠山芳久氏は日本の黎明期のサーフメディア界で多大な業績を残したフォトグラファー。マニュアルフォーカスのニコノスで、しかもシングルショット(シャッターの連写ができない)で作品を数多く残している。誌面で写真を拝見しただけだけど、機会があればそのポジフィルムをライトボックスでぜひ覗いてみたいものだ。この記事では見応えのあるフィルム写真がずらりです。

The Snow Surfer

ゲンテンスティックのファウンダー玉井太郎氏の登場です。これは米国ジャーナルの編集部による記事。つまり英文を日本語に訳して記事にしています。じつは僕は玉井さんとはちょっとした縁がある。最初の出会いは種子島だった。当時はサーファー/スノーボーダーというのはまだ少数派で、僕もまだスノーボードは未経験で、バックカントリーというジャンルを教えてくれたのは玉井さんだった。あの頃はゲンテンを立ち上げる前で、オクスボウの契約ライダーだったと思う。WSLの近江さんから、スノーボード界のカリスマと紹介され、アイゼン履いて雪山を登って滑り降りるという話を本人から聞いてぶったまげた。あれからスノーボードの世界は大きく変わったけど、すでにあのころに玉井さんは今をイメージしていたんじゃないかな。流氷の海でサーフィンというのもこの人らしいなと思う。

Singularity

ゴープロのサクセスストーリーとも読み取れるけど〜じつは将来、人間の社会は現実と仮想現実の区別が無くなるだろうという話がオチとしてあり、そうかもしれないと思うと背筋が寒くなった。映像に興味なくても読み物として面白いから読んでみてください。

Life’s a beach

レニー・エリスという写真家の話。サーフフォトグラファーというより社会派の写真家というスタンスの人ですね。日本でいう森山大道のような写真スタイルといえば遠からずだと思うけどいかがでしょう。エリス氏はサーファーで、サーフジャーナリストのフィルジャレットと親交があり、その縁で今回の記事が組まれたが惜しくも最近この世を去った。彼の出世作はライフスアビーチという写真集。タイトルからするとカジュアルな感じだけど、じつはこの人の写真はかなり切れ味が鋭くてバタ臭い。というのもシドニーの白人社会を撮った作品が多く、ストリップ嬢の陰部を見つめる男たちの写真なんかもある。この人は写真の表現力をフルに活用しているなと感じる。

Being toots

近くても遠く感じるサーフシティ、ワイキキ。ここはビジターで通っても奥が深すぎてつかみどころが無い。できることなら、五月から十月くらいまで長期でステイしてみたいな。どこかに安いコンドないかな~。さて、記事の主役ツースは、フィリピンからアメリカへ向かう途中にハワイでサーフィンに出会う。そこからサーファーとしてスタートだから、サーフィンの掟もしらずにトラブル多発したみたいです。それでも地道にやっていればコミュニティーに受け入れられるね。こういう名もなきサーファーをとりあげちゃうのもジャーナルらしさです。この人怒ったら喧嘩強そうだな~キャッパオみたいでもある。さて、ビギナーからエキスパートまで楽しめる波が在るハワイってすごいなと改めて思う。あたりまえのように在る奇跡だと思う。

(李リョウ)


THE SURFER’S JOURNAL(ザ・サーファーズ・ジャーナル)日本版10.5号

●世界でも選りすぐりのフォトグラファーによって捉えられた、サーフィンの美しく迫力に満ちた瞬間。
●新旧様々なライターたちに綴られる、本質的でバラエティに富んだストーリー。
最も信頼されるサーフィン誌として世界中のサーファーたちから愛され、書店では買うことができないライフスタイル・マガジン。

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