シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 57
『なんか超ダル〜』と海で固まっている君へ
年が明けて、湘南も海水温が下がってきました。みなさんのサーフポイントはいかがでしょうか。12月まではがんばって素足でサーフィンしていた湘南サーファーも、すでにブーツ、そしてグローブ、キャップと防寒対策が必要となってきています。
防寒アイテムが増えるごとに、サーフィンはどんどんタイトになります。つまり窮屈(きゅうくつ)。ブーツはひっかかってパーリングするし、グローブは怪獣の着ぐるみみたいだし、キャップは耳に水が入ったら抜けなくて、となりの友人が話しかけても、口パクで何も聞こえない。春はまだ先…しばらく修行はつづきます。
さて、冬のサーフィンって、めちゃくちゃ疲れる、そう思いませんか?セッションが、2時間続かないときだってある。パドルはビギナーに戻ったように辛く、ポップアップしてボードに立てる気がしない、レイトテイクオフしたらパーリングはギャランティー、冷たい海水が首からどっと入ってきてもうフラフラ。でも、なんでこんなに疲れるんでしょうね、冬のサーフィンて?
そこで今回は、その疲労の原因を究明し、その対策を考えてみたいと思います。しばしお付き合いください。
ウェットスーツ+ギア+水= 2L PET 2.5本の重量
ぶっちゃけ『ウェットスーツ+防寒ギアが疲れる原因』ということは誰も分かっている。
でもその何が、疲れの要因となっているのか考えたことある?「…ウェットの伸縮(しんしゅく)かな?」
適正なサイズのウェットスーツならば、その『伸び縮み』が疲れの原因ということは、じつはない。現在のウェットスーツはすごく進化している。ゴムは柔らかいし、裁断も考えてあり、パドルなどの運動性能の妨げには、ほぼなっていない。だから、ウェットスーツの伸縮が負担となってサーフィンが疲れるということは、あまり考えられない。
では、ウェットスーツのなにが負担になっているのか?それは、『ウェットスーツの重量』だ。とくに真冬用ウェットスーツは、君が感じているよりも重い。そこに防寒ギアを装着すると、重さはさらに増える。それだけでなく、ウェットスーツはかなりの量の『水』を吸収する。とくに起毛の生地は水をよく吸う、起毛は暖かいんだけど、水を吸って重くなるんだな。
ウェットスーツの重さを計ってみた
3/5mmセミドライ・ウェットスーツとブーツ、グローブそしてキャップを合わせると、乾燥している状態で合計が約3kgだった。(ギアは全て2mm)
3kgというと、2Lのペットボトル1.5本分。海に入るときに、君は大きなペットボトル1.5本を背負ってパドルアウトしていることになる。
さて、水を吸うとどのくらい重くなるか?海から上がってウェットスーツを計ってみた。脱いだウェットとギアをビニール袋に入れて、体重計で計ってみたら、4.6kgだった。ということは1.6kgもの水をウェットスーツとギアが吸収していたということだ。
4.6kgというと、2Lペットボトル2.5本分だ。けっこう重いよね。ちなみに防寒ギア(ブーツ、グローブ、キャップ)だけでも1kgくらいはある。
2Lのペットボトル2.5本を、背中にせおってサーフィンをしているところを想像してみると、これは笑えない。ペラペラのショートボードにそれを載せたら沈むかも!?そんなことはないけど、かなりやばいことは確かだ。
なかなかてごわい、ゴジラの手(グローブ)
冬のサーフィンが疲れるのは、『ウェットスーツの重さ』、ということが分かった。しかし調査を進めていくと疲れる原因がもう一つあることが判明した。それはグローブだ。
グローブは暖かいが、『疲労』という観点から考えると、なかなか「困った君」。まず、グローブをはめてみるとわかるが、手がゴジラのように大きくなる。手が大きくなるから、水をたくさんつかめるようになる。
つかめる水の量が増えれば、パドルは速くなる。パドルが速くなれば、テイクオフも速くなるんだからいいじゃないか?と思うかもしれない。
ところが、水をつかむ量が増えるから、パドルすると、素手のときよりもパワーが必要となる。素手でパドルするのに慣れている腕にとっては、それは大きな負担だ。しかもフルスーツの重みがそこに重なる…。
ボディブローのようにじわじわと疲れが…
さて、グローブでパドルをすると、海に入ってすぐには疲れを感じない。むしろテイクオフが、思いのほか早かったりして、「今日は調子いいぞ~♫」なんて思ってしまう、そのうちに急速にパドルがパワーダウンして、テイクオフが遅れだし、ついにはビギナーのように腕が上がらなくなってしまう。「なんだか今日は特に疲れるなあ」と思った日は、たぶんグローブをした初日では?思い出してみよう。
グローブの重みはワックス4個分
じつはグローブが疲れる原因が、まだある。それはグローブの重みだ。水を吸ったグローブの重さは1ペアで約260g。片方で130g。グローブ内部には水が溜まるから、それを考えると150gほどの重さにはなるだろう。
150gというと、セックスワックス2個とだいたい同じ重さだ。ということは、両手で、ワックス2個分ずつを、パドルのときに上げたり下げたりしていることになる。この重さは、じっさいにはあまり感じないが、やがて、ボディーブローのようにじわじわと効いてくる。
その対策は、まず『グローブを外すかそれとも外さないか…』
ポパイのホウレン草があればいいんだけど、残念ながらそんな特効薬はない。しかし疲労感を和らげる方法はある。それは、冷たい海水に耐えられるならば『グローブを使わない』という方法だ。これが1つの解決策。
グローブを使わない代わりに、キャップで寒さを補ってもいい。濡れた髪を寒風にさらすのは、体温の著しい低下を招くから、キャップは防寒ということでは大きな効果がある。むしろグローブよりもキャップを選ぶ方が暖かいかもしれない。(個人の感覚に違いはあると思いますが)
いや、どうしてもグローブは使いたい。そういう人は、『グローブを一度使い始めたら、春まで必ずグローブを使い続ける』のが疲労予防の対策になる。つまりグローブをしたパドルに、身体を慣れさせるという作戦だ。
人間の身体には対応力があって、その能力は捨てたもんじゃない。例えば、新しい仕事を初めたりすると環境が変わって疲れるが、数日間がまんして続けると疲労を感じなくなることがある。それと同じ。グローブをして、パドルが疲れてもがまんして使い続けると、やがてグローブの抵抗や重みに身体が慣れていくというわけ。だから、付けたり外したりしているとなかなかグローブに慣れず、時間がかかる。もちろんグローブを外せる地域は限定されるけれど…
サーフボードの浮力を上げる
4.6kgの重量に、サーフボードで補おうと思ったら、どのくらいの浮力をアップさせればいいだろうか?体積でいうところの5Lくらいかな?でも浮力に関してはサーファーのレベルによっても異なるし、サーフボードの性能も数値だけでは、なんとも言えない場合も多々ある。夏のボードでもぜんぜん平気という人もいるだろうしね。とにかく浮力が増すということは、疲労軽減ということだけに関してはメリットとなる。
筆者の場合、冬のサーフィンはトレーニングと割り切って、長いボードでサーフィンをするようにしている。ミッドレングスやロングボードだと、攻めるサーフィンはできないが、パドルが楽だし、ポップアップでブーツが引っかかることもない。波にもたくさん乗れる。
まとめ
冬のサーフィンが疲れる原因はウェットスーツとギアの重さが原因だ。特にグローブはパドルが疲れる大きな要因となっている。
疲労軽減の対策としては、できるならば、グローブを外す。それが無理ならばグローブを使い続けて、重いパドルに早く慣れる。そしてサーフボードの浮力を増やす。
冬のサーフィンがダルイのは君だけではない。トレーニングと割り切って、冬もサーフィンを続けておけば、春が来たときに、サーフィンが100倍楽しくなる。それまでがんばろう!
番外的アドバイス
グローブでパドルするときは、素手のときよりも10~20%力を抜いてパドルすると疲れを軽減できる。
(李リョウ)