「なんでロングボードは先っぽに立てるのか?」のコラムが人気で、じゃあその応用編を作りましょうということになった。ノーズライドのメカニズムは理解できても、実践で役にたたなければ意味がないからね。
さてこの応用編は、膝腰から腹くらいのジェントルなブレイクの波を基準としている。対象はビギナーから中級者。ちなみにビギナーとは、沖までパドルで行けて、波をキャッチし、フェイスを滑って再び沖までパドルで向かう。これを1セッションで10本くらいできる人を指す。したがってコテコテのサーフィン初心者は、まずこのレベルになってからこの応用編を読んでほしい。
さらに中級者とは、ノーズライドの経験があるけどどうも決めきれていない人。例えばノーズまであと30cmとか、ノーズに立つと波がすぐに終わってしまう、もう少しノーズの滞空時間を伸ばしたい、できればハング10にも挑戦したい、そのくらいが中級者のレベルとしている。でも、もっと上手なロガーでも、この応用編はヒントになるかもしれない。
それから解説のなかで『プレーニングとロックオン』という言葉が登場する。その意味が分からない人は『なんでロングボードは先っぽに立てるのか?』その一をまず読んでほしい。
ノーズを狙うためには一歩下がれ?
さて、テイクオフしてからノーズを向かってウォーキング。簡単そうに見えるけどなかなか難しい。サーフボードがフラフラと揺れるし、ノーズもダイブしそうだ。不安定な原因は『プレーニングとロックオン』がフィット(作用)していないからだ。それが十分でないと、まるでスラックラインのように歩こうと思っても歩けない。ところが『プレーニングとロックオン』がフィットすると、まるで踏み固められた大地のようにサーフボードは安定し、楽々とノーズまで歩くことができる。
じゃあ『プレーニングとロックオン』をどうやって波にフィットさせればいいのだろうか?。じつは『プレーニングとロックオン』は、フィットさせようと思わなくても、波を滑っているだけで自然とフィットすることが多い。しかし、サーファーが望むときに自然とフィットするとは限らないし、そうなるのを待つだけでは進歩がない。
インテンショナル(意図的)な『プレーニングとロックオン』
サーファーが自らサーフボードを『プレーニングとロックオン』にフィットするようにコントロールできれば、ノーズライディングの成功率は格段にアップする。そのコントロールを、トリミングまたはトリムともいう。
ということで、サーフボードをトリムしてみよう。それにはまずサーフボードの中心より後方にスタンスをとらなければならない。つまり前に歩くためにトリムしたければ、まずは後ろへということになる。その理由は、サーフボードはフィンでコントロールするようにデザインされているからだ。コントロールするためにできるだけフィンの近くにスタンスをとってトリムし、波にフィットさせてから前方へとステップする。ひょっとして前に行くことしか考えていなかった?
ビギナーは前に立ちすぎ
ところがビギナーの多くは、テイクオフを早くしようと思うあまりパドルが前のめりになり、サーフボードの中心より前方にスタンスをとってしまいがちだ。そのスタンスだとトリムしようと思っても、サーフボードはあなたの言うことをガン無視して真っ直ぐ進んでしまう。けっきょく波の変化に対応できないあなたは、サーフボードに身を任せるだけとなってしまう。
しかし上級者は、テイクオフしたときからすでにサーフボードの中心よりも後ろに立っていることが多い。だからそのスタンスのままでも思うとおりにサーフボードをトリムできるし、さらに半歩ほどバックステップしてクイックにターンする余裕もある。
ちなみに、フィンの近くにスタンスをとればとるほどサーフボードのコントロールは楽になる。上手なサーファーはそのへんのツボをよく心得ていて、たとえ非力でも軽々とロングボードを操ることができる。
しかし後ろといっても下がりすぎるとシーソーのようにノーズが持ち上がり失速してしまうから、さじ加減は必要だ。トリムもできて、かつボードも走ってくれる正しい位置にスタンスしなければならない。
トリムができる正しい位置に自分が立っているかを確認するには、後ろ足に体重を掛けてみるといい。ノーズが反応して上を向くようであれば正しいスタンス、そうでなければ前に立ちすぎだ。そういうときはほんの半歩でいいから後足を下げてみよう。スタンスの位置はなんどかくり返すと、ボードに立っただけで、フィーリングで分かるようになる。
まとめ
トリミングはいわばライディングの微調整。ノーズライディングだけでなく、ショートボードのチューブライドなどでも行われるテクニック。上手なサーファーがサーフィンをすると波が良くなったように見えるときがあるけれど、それはトリミングによって波のフェイスを効率良く使ってサーフしているから。華麗なステップを決めたかったら、ノーズばかりに集中するのではなく、余裕あるテイクオフから、一歩いや半歩だけでも下がってトリミングマスターになろう。
(「その三(実践編)」ではトリミングの種類やその他のテクニックについて解説します)
(李リョウ)