南台湾は国内旅行のように気軽に訪れることができるのに、真冬でも水着やタッパーで入れる温暖な気候が魅力のサーフスポットだ。2023-2024の年末年始、前年に続き、再び南台湾へ飛んだ。待っていたのは、盛り上がる南台湾サーフカルチャーと、南国気分満点のファンウェーブだった。
年末年始の数カ月前から、親友サイトウさんと、どこへ行こうか思案していた。新型コロナウイルス禍ですっかり遠のいたバリ島を望んでいたが、エアチケットが高すぎた。ジャカルタで真夜中に7時間トランジットで、往復30時間かかるような旅程が15万円以上。いつの間にか、日本人には高嶺の花になっていたインドネシアを諦め、南台湾トリップを決めた。
目的地は台湾南端「佳楽水(チャーロースイ)」
目指すは台湾南端の佳楽水(チャーロースイ)。冬型の気圧配置が強まるこの時期は北東からの季節風が強まることも多く、2022-2023の年末年始は、牙をむいた。入水中に突然、台風並みの暴風が吹き始め、波は一気に頭半までサイズアップ。川のように強烈なカレントも発生し、死にそうな思いをしながら、岸までたどり着いた。
以後半年間、波への恐怖心が抜けなかった。なので、昨夏は穏やかな小波のベトナム・ダナンを旅先に選んだことは、昨年9月の記事に書いた通りだ。だが、いい加減、過去の恐怖心に苛まれるのはやめて、もう一度、南台湾にチャレンジしようと旅立った。
お世話になるのは、前回トリップと同じチャーロースイの宿「Summer Point」。ポイントの目の前で、ローカルのクリスとモニカ夫妻が営み、日本人ガイドのタカシさんも常駐する。インスタグラムのストーリーズでは、毎日の波動画をチェックできる。クリスもタカシさんもチャーロースイの波を熟知したサーファーで頼れる存在だ。クリスは片言の日本語と完璧な英語を話すため、世界中からゲストを受け入れている。
LCCでまずは高雄へ
エアチケットは、タイガーエアの成田-高雄で1人12万円だった。シーズンオフなら7、8万円で購入できそう。タイガーエアはLCCだが、20㎏まで預けられるクラスを予約したので、ショートボード2枚が入ったボードケースと大き目のリュックを預けても、追加チャージは不要だった。
重さ以上に注意が必要だと思ったのは長さ。チェックインカウンターで、係員がメジャーで計測していた。ケース自体が6フィート以下なら、長さ規定もクリアできる雰囲気だったが、いったい何センチだとどんな問題が発生するのか、心配な人は航空会社に直接問い合わせた方がいいかもしれない。
年末年始で気温は27℃
12月29日、台湾南部の大都市、高雄は快晴だった。気温27℃。一気に夏気分だ。Summer Pointの宿泊代は部屋ごとに異なるが、私たちは3泊朝食付で1人約7万円。少々お高めだが、高雄空港からSummer Pointまで車で片道2時間の送迎と、日々のガイド代、車での移動代などがすべて含まれている。
高雄空港の到着ロビーに懐かしいクリスの顔があった。道中、クリスは運転しながら、台湾を訪れた宮坂麻衣子プロ、川合美乃里プロと食事をした話や、最近の台湾サーフィン事情も教えてくれた。近年、東台湾を中心に、日本人選手が出場するQSイベントも多くなっているのだ。
夕方、Summer Pointに近い町「恒春」に到着した。ローカル食堂で、前回の恐怖体験を共に味わい、すっかり旅仲間となったケンさん、コニタン御一行や、空港でワックスを没収された経験を昨年10月の記事で取り上げたケイト君ファミリーらと合流。ワイワイと大皿料理を囲みながら夜は更けた。
待っていたのはレフトのファンウェーブ
さて、問題の波について。結論から言うと、トリップ期間中ずっと、よかった。Summer Point正面のポイントでは、腹~頭のレフトのファンウェーブ。右手の奥には、レフトよりワンサイズ大きいライトの波が割れ、連日、ローカルや日本から来たサーファーらで賑わった。
水温は20度以上。ロンスプで入ったが、タッパーやビキニサーファーもたくさんいて、千葉の真夏の装備で全然平気だった。まさに、寒い日本から抜け出すにはうってつけの場所。ロンスプでパドルした瞬間、セミドライとは比にならない肩の軽さに心躍った。
昨年は天気が悪く、コロナ禍が明けて間もなかったこともあったのか、サーファーの数は多くなかった。恐怖体験をした時は、私たちの仲間5人しか入っていなかったし。それが一転、今回は朝から夕方まで、数十人が集い、混雑気味だった。
ローカルの女の子にはロングボードが人気
波がメローなので、ローカルは長めのボードが多め。コーチらが崖の上から指導するキッズサーファーらは、バキバキのパフォーマンスボードを使っていたが、特にローカル女子はほとんどがロングボーダーだった。
なので、ショートボーダーにとって波取りは容易ではない。私はと言えば、まあ、レフトの波としては2023年の最後に一番いい波に乗れた、かな。プチリベンジ成功と言ったところ。ただ、少しでも風が吹くと、昨年の悲劇を思い出し、海の中でドキドキして落ち着かなかったのが本音だ。
今回、天気がよくファンウェーブのチャーロースイを味わうことができたので、次回はもっとリラックスして、少し大きめのボードも持ってきたい。ちなみに、Summer Pointでは、ボードの貸し出しも行っているので、手ぶらでもサーフィン可能だ。
海沿いには自然公園が広がっており、サーフィンをしない老若男女がのんびり過ごしていた。私たちも芝生で1時間、ヨガを満喫。木陰は最適な気温と湿度で、波音を聞き、潮風を受けながら、体をほぐすと、心底リフレッシュできた。
朝食や居室も魅力のSummer Point
Summer Pointはポイント目の前というロケーションもさることながら、クリス、モニカ夫妻のセンスが光るインテリアやおいしい朝食も魅力。夜には、日本人ゲストや、地元のサーファーらが集い、大晦日のBBQ&カウントダウンも大いに盛り上がった。
Summer Pointの唯一の欠点は周囲に飲食店がないことだが、宿代には、恒春の町へ昼食や夕食に繰り出すための送迎代も含まれているため、毎日、海に入った後、みんなで大きなバンに乗り込み「今日は何食べよう」とルンルンしていた。
日本人の口に合う台湾料理
台湾料理は日本人の口に合う。小籠包やチャーハン、揚げ物や野菜炒めなど、何を食べてもおいしかった。ほのかに八角の香り漂うスパイスも癖になる。物価は日本より少し安い程度。カップラーメン1個が40元(約189円)、缶ビール1本が35元(約165円)といった具合で、ビールは少しお得感があるかもしれない。
スーパーマーケットやマッサージはアジア旅の醍醐味。恒春のマッサージ店は指圧、オイル、カッピングを90分で行うてんこ盛りメニューで、約6000円だった。カッピングは疲れている部位ほど、赤く跡が残ると言われ、大きな波に猛チャージしていたサイトウさんは真っ赤。海でビビりまくっていた私はそうでもなかった。
ちなみに、サイトウさんは前回の年末年始、航空券の予約時に苗字と名前を反対に書いてしまったために、飛行機に乗せてもらえず、10万円ほど追加で払った上、1日遅れで南台湾へやってくるという苦渋をなめた。みなさんもお気をつけ願いたい。
年々増え続ける台湾サーファー
最近の台湾サーフィン事情について、クリスは「台湾のサーフィン人口は約2万人で、年々増えている。特にコロナ禍で多くなった。理由として思うのは、インターネットなどで、サーフィンについての情報がどんどんもたらされているからかな。それが、サーフィンを学ぼうという人の助けになっている。大きなコンペが開かれるようになったのも少し関係しているかもしれない」と話す。
サーフィンは自然を愛でる遊び、スポーツなので、天候によってコンディションが悪いことは、いつどこでもあり得る。冬型が強くなれば、チャーロースイよりリゾート色が強い南湾といううねりをかわすポイントもある。
真冬でも水着で楽しめるファンウェーブが待っている南台湾。このまま現地のサーフィン人口が増え続け、サーフスポットとしての魅力が国内外に広まれば、来年はますます波を取れなくなりそうだ。
All Photos by Chiaki Sawada
(沢田千秋)