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エボルバー、ジョン・ビルダーバック写真集ほか、TSJJ14.1号の読みどころ

5月30日に発売された「ザ・サーファーズ・ジャーナル」日本版14.1号の読みどころを同誌のコントリビューティング・エディターも務める李リョウが紹介。

エボルバー

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デレク・ハインドが選んだサーファーのランキング100です。独断と偏見に満ちてます。彼にとってリスペクトに値するサーファーかどうか、ということでしょうね。だから世界チャンピオンというだけではダメ。どうやって飯を食っているか、とか社会や自然への貢献度、さらに本人の影響力による二酸化炭素の排出量なんていう評価もされる。とりあえずは、スコット・ヒューレットとデレク自身の序文を読んでいただければ、主旨は理解できます。あとはざっくり目を通して、興味のある名前が目に止まったらそこを読み、その前後のサーファーもついでに読んでみるというのが、肩が凝らずに楽しめると思います。

ちなみにこの記事の翻訳に関しては、難解なところはデレク本人に直接聞くという、突撃作戦を敢行しました。わたしの拙い英語にも関わらず、デレク氏は真摯かつ忍耐強く対応してくれました。この場を借りてお礼を申し上げたい。さらにその翻訳原稿を、井澤編集長を中心に日本版編集部が時間をかけてブラッシュアップしています。彼の伝えようとする真意をできるだけ損なわず、かつ読みやすくという高いハードルに挑んでみましたがいかかでしょうか。とにもかくにも、自分(あなた)と同じような、サーフィンに情熱を燃やすサーファーが世界中にはたくさんいる。という当たり前をみんなで共有できるだけでも意義があるな、とこの記事を通じて感じました。

ジョン・ビルダーバック写真集

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天才トムカレンの見開き、やられちゃいます。これぞ『スタイリッシュ』。もうなんども見ているはずだけど新鮮です。黄色のショートジョンが似合う人、他にいるかな?。このパイプラインのアングルはアマチュアがオートフォーカスで撮ると99%ピンボケしますね。さて、ジョン・ビルダーバックは米サーファーの元シニアスタッフフォトグラファー。シニアというのは編集部から給料をもらうフォトグラファーのことですね。この憧れのポジションは、サーフフォトグの世界では、貴族社会の爵位のようなもの。つまり彼ら以外のフォトグは貧民階級~。でも貴族と異なるところは、シニアはその実力をしっかりと示す必要があるってこと。そのためにビルダーバックは、ハワイのノースに住んでサーフコミュニティーとも密接に結びつくという選択をした。ジョンは彼らの写真を撮って気に入られ、やがて撮影ができないサーフポイントでも撮影が許されて…という具合に裏技を増やしていったんだと思う。彼はスタジオでも撮れるから、サーファー誌のハワイの案件は彼のところへ、という自然の流れもできたんだな。ホクレア号の作品集もそういう布石があったんですね。今回の写真は彼のフィルム時代の特集です。昔どこかで見たとこがある、そんなデジャブを起こすかもしれません。デジタルワールドの現代でも遜色のないクオリティーはさすがです。スティーブ・バリオッティのハードボイルド調の文章もノースショアーのリアルな匂いが感じられて秀逸です。

バリーマッギーの美学

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「これでいいのだ」ってバガボンのパパが言いそうな記事。登場する写真はエキセントリックですが、彼の描く作品をエンファサイズ(強調)しその世界に引きずり込む強い力を感じます。記事のレイアウトも編集デザインとして成功していると思う。巻頭にこの記事を持ってくるジャーナルってすごいな。

ポートフォリオ:キルバン・バルダサリ

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このポートフォリは、彼の紹介文をまずお読みください。出自は宿命といえばそれまでだけど、彼の生い立ちにジェラシーを感じないと言ったら、わたしは嘘をついたことになります。タヒチに生まれて、美しい自然に囲まれて育つとこうなるってことでしょうか。タヒチ訛りのフランス語が話せるってどうよ〜。恵まれた環境で美を追求しながらも、流される事なく地に足をしっかりつけて生きているようです。さてデジタルフォトの最前線はここまで来たかという印象の作品群で、特にドローンの底力を見せつけられます。ただレタッチに関しては、ちょっといじりすぎの感は否めないかな〜。ごめん。

ゲン・カツラガワ作品集

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サイケでバタ臭いエアーブラシの世界。エアーブラシという芸術手法は、60年代のCAのサーフィンカルチャーから生まれたかもしれないと、ふと思いました。ヘルスエンジェルスのようなチョッパーのタンクに描かれる作品を、まさか日本のアーティストが制作しているとは知らなかったなあ。サーフボードやキャンバスの作品もあり、すべてギャラリークオリティですね。カツラガワさんは湘南でよくサーフィンをしているということで、どこかですれ違っているかもしれません。相模湾はすごい人が普通にサーフィンしています。

ノーズライドオブセッシブ

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この筆者は「LONGER」がバイブルだったようです。「LONGER」は「Adrift」の成功を踏み台にしてJ・ブラザーが製作した渾身の作品ですね。90年代のロングボードブームで、ジョエル・チューダーが白馬に乗った王子さま状態だった時代です。

日本のオヤジロンガーはきっとこのエッセイを読んだら、「わかるわかる」って共感するんじゃあないかな。翻訳を進めているとき、筆者がこの映画の詳細をあまりに細かく分析しているから、気になって久しぶりに観賞しちゃいました。ノーズライドに取り組んでいる若いロガーにも観ていただきたいです。ぜひ…。

(李リョウ)


THE SURFER’S JOURNAL(ザ・サーファーズ・ジャーナル)日本版14.1号

●世界でも選りすぐりのフォトグラファーによって捉えられた、サーフィンの美しく迫力に満ちた瞬間。
●新旧様々なライターたちに綴られる、本質的でバラエティに富んだストーリー。
最も信頼されるサーフィン誌として世界中のサーファーたちから愛され、書店では買うことができないライフスタイル・マガジン。

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