出典 TSJJ14-3より

ハリソン・ローチの旅路、最新グラジガン事情ほか、TSJJ14.3号の読みどころ

9月30日に発売された「ザ・サーファーズ・ジャーナル」日本版14.3号の読みどころを同誌のコントリビューティング・エディターも務める李リョウが紹介。


SURF GONZO/モダンアート好きのサーファーなら、まえのめり必至

イラスト出典 TSJJ14-3より

「GONZO」という言葉をどこかで覚えている。でも、ラルフ・ステッドマンとハンター・トンプソンはうかつにも知らなかったなあ。あなたは知っていました?この二人。そんな具合だから、今号のカバーを手にしたときも「オタクっぽいな」という印象だけが強く残った。でもね、この二人をしだいに知るようになってきて、考えが変わった。(じつは編集長に今回の日本版はカバーを変えたほうが良いと進言までしていた。やれやれ)。やがて、画家ラルフ・ステッドマンがローリングストーン誌に寄稿した挿絵をいくつか見て驚き、評価が豹変、にわかファンとなった。どの作品にもなんというか「突き抜けた」ところがあって風刺画家としての訴求力に優れていると感じる。グロいけれど、ポジティブなインスピレーションを感じるので不快感は皆無。デビッド・ホックニーに似たような作風の作品があるが、彼もステッドマンから影響受けているかもしれないと言ったら怒られるかな。

音楽評論家のピーター・バラカンがこの二人のことをあるサイトで語っています。
「前略…ちょうど僕らの世代がまさに創刊当初(ローリングストーン誌)から読んでいたと思うんですけど、ハンター・S・トンプソンの記事が載ると、書き方がほとんどロックに近いものだから、普段政治などにはそれほど興味を持ってない若者も読むんです。当時僕は二十歳そこそこでしたが、彼の文章を読んで初めて政治に興味をもったと言っていいくらいです。それで彼の記事を読むと、必ずそこにラルフ・ステッドマンの絵がついているわけです、それがまた文章に負けない、毒気づいたすごい絵。とてもユニークなイラストなんですね。…後略」

(ウェブサイト DOTPlace に掲載されたピーター・バラカンへのインタビューで、米国ローリングストーン誌とラルフ・ステッドマンについて)
出典 http://dotplace.jp/archives/9293

確かな価値/ハリソン・ローチの旅路、ヌーサシャイアから世界へ

写真出典 TSJJ14-3

デビュー前のハリソン・ローチと海で会ったことがある。デーン・ピーターソンがヌーサに住んでいた頃だ。場所はグラナイトで、彼はボブマクタビッシュのロングボードに乗っていた。重そうなそのボードを、小柄な彼が軽々と振り回していたのを鮮明に思い出す。その数日後、サイズアップしたボイリングポットで、今度はショートボードに乗り換えてバレルに突っ込んでいた。ほどなくして彼がメディアに登場するようになり「あいつだ」と思った。あらゆるサーフボードを乗りこなして世界タイトルも獲得、しかもイケメンという、この世の中はぜんぜん平等でないことをワカラセル人でもあります。モテモテだから、ここには書けない伝説も作っているみたいだけど、結婚したんだね。サーフィンの伸び代はまだまだあるからこれからの彼には期待したい。ローチファンには必読の記事です。

持ちこたえるジャングル/最新グラジガン事情

イラスト出典 TSJJ14-3

G-ランドは行かれたことありますか?このサーフキャンプのメリットは、バリと違ってゲストだけが波を独占できるところですね。セクションもいろいろあるから、サーファーも分散しローカルサーファーに遠慮もいらない。ビギナー向けのライトハンダーもある。サーフキャンプはジャングルに囲まれていて、ボートトリップ特有のストレスが無い。シーズンも終盤になればゲストも少なく波もメローになるという噂を耳にします。
さて、この著者は久しぶりにこの伝説のレフトハンダーを訪れて、その変貌ぶりを記述しています。どこが変わってどこが変わってないか、便利になってはいるけれどその分、何か大切なものを失っている。
波はかなりチャレンジングで、一見パーフェクトに見えるけど、そのブレイクを読むのは、サーフィンの経験値をフル動員しないと手強いです。トム・キャロルが、「Gランドでは最高の事と最悪の事が起きる」と言っていたけど、わかる気がする。ジャングルに囲まれた宿で目を覚まし、獣道を裸足で歩いてキーホールからパドルアウト。サーファーの夢ですね。

ラリー・ライト/米サーファー誌に挑戦状を叩きつけた男

写真出典 TSJJ14-3

ラリー・Flame・ムーア氏は著名なサーフフォトグラファーです。さらに彼は米サーフィン誌のフォトエディターを長年勤めていました。米サーフィン誌には、米サーファー誌に追いつき追い越せという使命感のようなものがあって、ラリー氏はその旗振り隊長のような立場だったことが記事を読むとわかります。ライバルの米サーファー誌が、サーファーの情感に訴えるような誌面作りをめざした一方で、サーフィン誌はもっとスポーツ的というか「Now」と「Hot」をテーマにして、若い世代をターゲットにしていた。それゆえにムーア氏の写真は、順光で鮮やかな写真が多い。いわゆるサーフフォトの王道ですね。最高の一瞬を、高速度シャッターで水滴までもパキッとフリーズさせています。

残念ながらラリー氏はもう亡くなられたけど、サーフィン業界が好景気に湧いた時代にフォトエディターを務められていたこともあり、その勢いのまま思い切った事ができたのは幸運だったんじゃないかなと思う。ネプチューンプロジェクトと呼ばれるコルテツバンクの歴史的セッションもその一つで、顛末が書かれています。お楽しみください。

(李リョウ)


THE SURFER’S JOURNAL(ザ・サーファーズ・ジャーナル)日本版14.3号

●世界でも選りすぐりのフォトグラファーによって捉えられた、サーフィンの美しく迫力に満ちた瞬間。
●新旧様々なライターたちに綴られる、本質的でバラエティに富んだストーリー。
最も信頼されるサーフィン誌として世界中のサーファーたちから愛され、書店では買うことができないライフスタイル・マガジン。

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