先日、満を持して発売となったDVD作品『STONE BREAK DREAMS』、既にご覧になっただろうか。
本作品は、1978年に公開され“幻の映画”ともいわれた「STONE BREAK」のリメイク作品。
オリジナル版は今から40年前、まだシングルフィンのショートボードが全盛期だった時代に、日本を代表するサーファー川井幹雄が、当時のトップサーファーらと共にハワイ等で撮影を行い、期間限定で日本公開された作品。
今回は、このリメイク作品を作り上げた鈴木晴雄(PARUO)氏に、制作の過程や見どころなどお話しを伺ってみた。
ーこのリバイバル作品の話を聞いてどう思いましたか?オリジナル版の印象は?
今回のお話しを頂いた際、まずはじめにオリジナルの映像を拝見し、純粋に驚きました。
70年代はまだ8mmフィルム映像の時代です。当時のサーフ映像は、海外のものは見たことがありましたが、国内の映像は初めてです。
それに作品として「仕上がっているな」という印象を受けました。
-8mmフィルムの映像、作品はどのように感じましたか?映像の取り込み作業は?
オリジナル版「STONE BREAK」は、ミッキーさん(川井幹雄)の作品として知られていますが、撮影は弟のヤスヒロさん(川井康弘)と共同で行われているんです。
当時の映像は、既にヤスヒロさんがデジタル化されていて、保存状態も良かったので映像の取り込みは容易でした。
それに今はハイビジョン~4Kの時代ですから、僕にとってはこの8mmのフィルム映像が逆に新鮮でした。
僕はまず作品の構成から考えて撮影を行っていくことが多いのですが、本作についてもすぐにイメージが沸きました。
あとは、この独特な雰囲気とオリジナルの空気感を壊さずに、どのように新しい映像を加えていくかを課題と感じ、過去と現在を対比させながら作品を作り上げていこうと思ったんです。
-川井幹雄さんはどのような方ですか。もともと交流はあったのでしょうか。
ミッキーさんとは、以前にも撮影させて頂く機会があり面識程度はありましたが、ここまで一緒に行動をさせて頂いたのは初めてでした。
はじめは国内で新たなフッテージの撮影、オリジナル版にも登場する千葉のクラシカルポイントを一緒に回らせて頂きました。またノースショア撮影では、当時ミッキーさんがハワイで過ごした家を訪れるため、シェアメイトだった蛸操さんにも同行頂きました。
このお二人、サーフィン業界の方なら誰でも知っているレジェンドサーファーですが、普段は本当に“気さく”な方で、おそらく周りの人はそんなに凄い方たちだということは分からなかったと思います。笑
ですがお二人とも、やはり海を見るととたんに顔つきが変わりますね。カメラ越しでも「さすがだな」と感じた部分ですが、お二人のライディングを撮影して更に驚かされました。
-ハワイでの撮影は一週間、波も当たったと聞いています。
海外撮影については、もともとノースショアがマストではなく、他にもトリップ候補がいくつかあったんです。でもオリジナル版がノースをフィーチャーした作品なので「やっぱりノースだろう」ということになりました。
ハワイはミッキーさんと蛸さん、お二人に来て頂いたのですが・・、凄いですよ。
トリップ中は常に波があり、最終的には8-10feetくらいまでサイズアップしたのですが、二人ともいっちゃうんですよね。本音を言えば、本当に大丈夫?とも思ったのですが、さすがです。
最終日~翌日には更にサイズアップしたのですが、撮影期間がもう1日ズレていたらやるつもりだったようです。普通に考えたら、70歳で行けるコンディションではないと思います。
-改めて、この作品の見所とは。
先にもお伝えしましたが、本作品は40年前に制作されたオリジナル版の映像と、現在の映像との対比を意識して作成しました。
また当時を知る方はもちろんですが、オリジナルを見たことが無い方も、味のある8mmフィルム映像はもちろん、古き良き70年代の風景や当時のシングルフィン・サーフィンは新鮮に写るのではと思います。
そして、そんな格好良い時代を生きてきた「レジェンド」と言われる方たちが、40年経った今もなおサーフィンと向き合って楽しんでいる生き様を、ぜひご覧になってみてください。
今回プロジェクトの企画から制作まで、数年を要して完成したという『STONE BREAK DREAMS』。
古希を迎えた今もなお、多くのファンに愛され続けるサーファー川井幹雄の全盛期を目に焼き付けながら、40年前の日本サーフシーンの空気と、シングルフィン・サーフィンの奥深さを、じっくりと味わえる作品になっている。
あなたが70歳を迎えたとき、変わらずサーフィンを楽しめているだろうか。
そんな勇気をもらう意味でも、ぜひご覧になって頂きたい作品である。
【映像作家:鈴木“PARUO”晴雄】
1972年生まれ、茨城県出身。
地元茨城のサーファーをフィーチャーした「EXIT」、セカンドボードをコンセプトにした「オルタナティブボード」シリーズ等を手がけ、「波巡礼」などのヒット作を持つ。
日本のサーフムービー界に、様々なジャンルの作品を送り続ける映像作家。
【STONE BREAK DREAMSについて】
日本を代表するレジェンドサーファー川井幹雄が、1978年に発表したオリジナル・サーフムービー『STONE BREAK』のリバイバル版。
たった1本残されたオリジナル8mmフィルムに新たな映像が追加。40年の歳月を経て、全く新しい形で蘇ったDVD作品。