神奈川県・足柄にできた人口波施設「ラ・レイエス湘南」。
最初にお断りをしておきたいのが、この記事は2022年5月末~のメンテナンス改良工事(耐衝撃工事)に入る寸前の施設体験レポートとなり、その後、その体験時に問題点と感じたものを改良するための工事期間に入っているという事。
そして、工事完了後の比較対象とする目的に加え、早い再開を期待したいという個人的な想いも加えたレポートであるという事をご理解頂けると有り難い。
さて、ウェイブプールというと「静波サーフスタジアム」やケリーの「サーフ・ランチ」などの波を思い浮かべるが、「それらとは全く異なる立ち位置の施設だと考えた方が良いよ!」と事前に言われていた通りの印象だった。
まずは、その点からお伝えしていこう。
サーフィン経験者が遊べるのか
自分視点にて誤解を恐れずに表現をすると、現状では、サーフィン中級者以上が技術向上を目的として行くべき施設ではなく、その視点においての楽しさは感じられないではと感じた。
とはいえ、全く遊べない訳ではなく、更にその対象者を初心者や初級者として考えると、とてもお手頃といえ、むしろテイクオフに癖のある「静波サーフスタジアム」より乗りやすい波だとも言える。
また、中級者以上であっても、波の発生メカニズムの仕様上、長めとなってしまうインタバールを逆に利用し、ボードやフィンを交換したりしながら、究極の小波テストを繰り返すなどの活用法はあると言えそうだ(ポジティブな発想w)。
実際、この点については、施設側も顧客対象をまったく異なる視点で考えていると話しており、先行して開業していた神戸(コウベレイーズ)での経験により、一定層には十分訴求できるという確証を得て、神奈川の地での開業に至った模様だ。
また、レジャー層を狙うという点においては、もともと温泉宿泊施設である「いこいの村あしがら」の施設を引き継ぎ利用できた点では、その可能性に注目していたものの、現時点では、宿泊施設も含め、大き過ぎる元の施設が足かせになっている⁉という印象もあった。
では、肝心の波の話に移ろう!
ラ・レイエスの波と造波システム
一言で言うと、サイズが小さ過ぎるがショートボードでもギリ乗れなくはない。
波情報風に言うと「ごくたまーのセットで膝。スモールながら形良いためショートライド可能。25点」という感じだろうか。しかし、膝サイズでの25点評価は高いとも言える。
公式SNSなどで見る映像には、一部、腰~腹サイズのものもあるが、一般営業時には、そこまでのサイズが出せない事情が幾つもあるのだろうな⁉と感じてしまった。
というのも、その造波システムにその限界を感じざるを得ない。
シンプルな仕組みにより経費を抑えたという造波システムをウリにしている模様だが、素人目に見ても「ちょっと無理ない?」と感じてしまう点が複数個所にある。
まず、仕組みを簡単に説明すると、重いオモリをワイヤーで引き上げ、そのワイヤーの開放により、オモリの自重に任せて水面に落とし、その圧力により波を造り出すというプリミティブな仕組みになっている。
このため、オモリを引き上げるだけでも時間を要する訳だが、18分割されたオモリを持ち上げるワイヤーが絡みやすい様子で、毎回、2名の作業者がワイヤーの巻き取り準備をしてから巻き取りモーターを動かすため、最低でも2分程のインターバルを要しており、トラブルが起きると15分から30分にも及ぶメンテナンスが入る事となってしまう。当方体験時に3回の中断があったが、その分の時間延長対応はしたものの、その後の予約枠のスケジュールなども全て遅れる事になり、時間売りの施設運用的には大きな課題になっている事が分かる。
春先にもクラッチ誤動作による改修工事を公式サイトで発表しているが、完全に解決は出来ていないという事になりそうだ。
この2名の作業者が行う作業は、傍目に見てもハードと想像でき、比較的涼しい場所(標高200m程度)とはいえ、夏場の作業には懸念を抱かざるを得ない。
そして波待ち時間についてだが、長めのインターバルにより1セッションを100分、定員8名に設定してはいるが、正直、4名まででないと厳しい印象を持つのではと想像してしまった(体験日の利用者は最大で4名だった)。
身内のみであれば、レフト、ライトに分かれるなどにより、待ち時間を最小限にする事(有効活用)が出来るが、貸切枠(100min税込11万円~)を利用するのには費用対効果的に疑問を感じてしまう。
水質の心配点など
続く問題点として水質の問題が指摘できる。
というのも、写真や映像でも分かる通り、真茶な色合いとなっており、波の無い平水時には、あめんぼう?か何かの波紋が見えていた。
連れが「ブラックバスが居そうで怖い!」と言っていたが、正にその表現の通りであった。
この人口波施設は、旧施設の営業時に利用されていたプール施設に隣接しているものの、排水工事が厳しかったのか、循環システムが無いのか、雨水などが溜まりっ放しの状態になっている模様。抜本的な水質改善策が必要と感じたが、今回の工事案内(公式インスタグラム)の記載を見る限りでは「水質改善用井水再注入」と書かれているため、今回の工事に伴い水を入れ替えるだけで終わってしまう模様だ。
国交省などが定めるプール等遊泳施設の安全指針や施設基準を適用されない様、サーフィン練習場と定義し、プールという名称も使用せずにいるものと思われるため、隣接する旧のプール施設は、今後も営業されないのだろうなぁとも勝手に想像しているが、安定した水質の維持策については、メインとすべき顧客ターゲット層からしても、今後の施策を期待したいところだ。
施設への期待
実は、自分自身、今回の施設体験により、サーフィン初心者の体験場所やシニア層のサーフィン復帰の第一歩としては優れた施設と感じ、次の来場計画を企て問い合わせをしていただけに、工事により営業が中断する事を聞いた際は残念に感じた次第だ。
サーフィンに興味を持った人を楽しませる事ができ、サーフィン初心者にロングライドを体験させる事が可能な施設の早い再開とより安全かつ充実した施設への変身を切に願っている。
ラ・レイエス湘南
https://la-reyes.com/
(齋藤 丈)