シリーズ「サーフィン新世紀」⑧
マット・ブロムレイが語ったラグンダリ湾でのナーリーなセッション
南アフリカ・ケープタウンをホームに持つチャージャー、マット・ブロムレイが、SNSで話題をさらったあのニアスでのセッションをトラックス誌に語った。
Reference : https://www.tracksmag.com.au by Craig Javis
豪トラックス・ウェブマガジンより
インタビュアー:クレイグ・ジャービス
どんな風に始まったの?
前の日から海の中でその波が来るのを待っていたんだ。でも夕方になっても波はまだ小さく、バレルもいまひとつだったからみんな失望気味だったね。だから僕は短いボードを使っていた。でも暗くなる直前にいきなり変わった。30分もしないうちに波がドラマチックに変わったんだ。あんなの今まで見たことがなかったよ。4フィートもなかったバレルがソリッドな8フィートから10フィートに上がった。そうしているうちに12フィートのダブルアップがブレイクした。パドルインじゃあぜんぜん歯が立たなかった。波は海水を全て吸い上げてブレイクした。だからラインナップは混乱に陥ったよ。
波がいきなり上がったそのときに君は海の中にいたんだね?
うん。あれはこれまでで一番ラディカルな光景だったよ。波は全部ダブルアップしてブレイクし大混乱だった。その瞬間のエナジーはもう凄まじかった。パドルでテイクオフなんて論外だった。
次の日も凄かったんだろう?
翌朝は暗いうちからまるで津波のような轟音がした。みんな目が覚めていて大量の海水が動いているのがわかった。波はレストランツからサイドアレイそしてロッジへと進んでいった。僕はとにかく気を落ち着かせてサーフする可能性があるかどうか観察した。ローリー・タウナーと何人かのチャージャーがまだ暗いうちからラインナップに向かっていた。波は15フィートがブレイクして一気にボトムで炸裂した。それで奴らが少しずつチャージを試みはじめて、「オーマイゴーシュ!俺も行かなきゃ」ってなったんだ。
ボードは何?
6’9。考えていることが二つあった。波がすごくそそり立っていたから短いボードならばノーズが刺さらないと考えた。でも同時に波が大きくてパドルパワーも考えなくてはならなかった。ラインナップでは僕は一番長いボードを使用した一人だった。僕は誰よりも沖で波を待った。とにかく集中と忍耐だった。「これだ」って波が来るまで待つことにした。
ラインナップはすごく混雑していた。世界的に有名なビッグウェーバーたちもいた。ビリー・ケンパーやイアン・ウォルシュ、それからコア・ロスマン。セットのでかい波はガンガンやってきたけど、みんなパドルで乗り越えてお互い顔を見合わせた。テイクオフなんてとんでもなかった。15から18フィートのダブルアップがブレイクすると水が吸い上げられてリーフがむき出しになった。
君が乗ったベストウェーブは?
ワックスを足の裏に付けようと思って、まずは小さめのやつに乗った。でもそれに乗ってすごく緊張した。再び沖に向かうと、大きくナーリーなダブルアップが向かってきた。「絶対に行く」と言い、頭を下げてパドルを開始すると周囲のみんなが叫び始めた。あのときの心境は味わったことがなかった。波のフェースが僕を持ち上げ始めた。身を乗り出してボードに立つと空中だった。レールがかろうじてフェースに引っかかっているところを爪先だけで堪えた。神様に支えられてるような気分だったよ。
ヘビーだ。
全くね。ボードがボトムに着くまで僕は空中で、そのまま着地して小さくステップしてからボトムターンをして人生で一番大きなバレルの一つに入っていった。立ったままセクションを二つ抜けた。心臓がバクバクした。でも最後はクローズアウトになりそうだったから途中でプルアウトした。ラインナップに戻るとみんなが拍手と歓声で迎えてくれた。最高の気分だった。
最もヘビーだったことは?
セットが通り抜けるとリーフがむき出しになったことかな。それを見て恐ろしくなった。それに水が茶色いからバレルの中は真っ暗なんだ。それも恐ろしかった。
船が波に飲み込まれただろう?
船がラインナップに流されてきたんだ。何人かがロープを持ってパドルして沖に引っ張ろうとしたんだけど無駄だった。船員に船から飛び降りろ、ってみんなで叫んだ。もう見つめるしか他に術がなかった。どんどん流されていって最後はダブルアップの波の餌食になった。笑えたのは船を飲み込んだインサイドの波がマジでソリッドな良い波だったこと。船は舳先で波のリップを突き破るとそのままひっくり返った。見ていた全員が悲鳴をあげた。
それからしばらくは波に乗れなくなったよ。だって転覆したボートがどこにあるか分からなかったから。でも浮いたり沈んだりしながら船はすぐに岸に打ち上げられたけど。それから一日中丸太や流木がラインナップに流れてきた。だからそれをみんなで波にさらわれるように持っていなければならなかった。それらは大波によって引きずり出された残骸だと思うけど。
一番チャージしたのは?
友人のルーカス・シルベイラが12フィートにチャージした、メイクした後にその滝に飲み込まれた。まるで世界の終わりのような大爆発だった。彼はそのまま打ち上がった。
マーク・ヒーリーの午後のチャージはやばかった。午前中は見あたらなかったけれど午後に7’6でパドルアウトするとまるで猛獣に化したように全身全霊で波に向かっていった。誰も手を出さないダブルアップにチャージしてプルインした。目撃者によればニアスでサーフされた波で最も大きな波かもしれないということだった。
どうやってパドルアウトしたの?キーホールからパドルアウトできた?
キーホールからのパドルアウトはナーリーだったね。波に一掃されたから。津波の後からは、キーホールまで歩いていって飛び込むだけで良かったけれど、あの日は大量の海水がサーファーの足をさらってキーホールの穴に吸い込んだんだ。
ハワイの友達でエリ・オルソンが足をさらわれてそこに吸い込まれリーシュが引っかかった。彼は15秒くらい水の中で気絶寸前だった。何度引っ張ってもリーシュが外れなかったらしいが結局は壊れて助かった。彼はしばらく震えが止まらなかった。それからは大回りしてラインナップにパドルアウトした。
他にもインドネシアでエピックなセッションを経験してるの?
なんていうか、インドネシアへサーフトリップといえば、誰もが青く綺麗な波を期待すると思うけど、今回のセッションは茶色い水とブラックホールのようなバレルで、まるでマーベリクスのようにヘビーだったね。
TRACKS ビデオフッテージ
https://www.tracksmag.com.au/video/nias-roars-499080
協力 豪州トラックス誌 https://www.tracksmag.com.au
Special thanks : Luke Kennedy, Craig Jarvis, Owen Miline
構成 : 李リョウ
(李リョウ)