サーフィンが初めて五輪競技となる2020年東京大会の開催を前に、世界各国で五輪関連組織やイベントの開催基盤が強化されている。
1月21日のISA(国際サーフィン連盟)発表によれば、特にアジアとオセアニアで大きな影響が表れており、2019年末に『アジアサーフィン選手権』『オセアニアカップ』『東南アジア競技大会』が立て続けに開催された。
ここでは、日本代表に関わる『アジアサーフィン選手権』と主催者のアジアサーフィン連盟について説明するほか、その他2大会の概要も紹介する。
アジアサーフィン選手権
2019年11月17日から23日にかけて、中国・汕頭市で第1回『Asia Surfing Championship(アジアサーフィン選手権)』が開催され、10か国が参加。男女それぞれ、ショートボードオープン、ショートボードU20、ロングボードオープンとSUP2部門の計5部門が実施された。
2018年世界ジュニア選手権王者である上山キアヌ久里朱が、ショートボードオープンとU20で金メダルを獲得したほか、参加した日本代表選手は全員メダルを獲得。改めてアジアにおける日本勢の強さを再確認する結果となったが、ロングボードでは中国のHuang Wei(黄伟)が金メダルを獲得し、中国選手の急速な成長も垣間見えた。
『2019 第1回アジアサーフィン選手権』結果
■ショートボード(OPEN)
男子
1位:上山キアヌ久里朱(日本)
2位:松原渚生(日本)
女子
1位:中塩佳那(日本)
2位:松岡亜音(日本)
■ショートボード(U20)
男子
1位:上山キアヌ久里朱(日本)
2位:松原渚生(日本)
女子
1位:中塩佳那(日本)
2位:松岡亜音(日本)
■ロングボード(OPEN)
男子
1位:Huang Wei(中国)
2位:浜瀬海(日本)
女子
1位:田岡なつみ(日本)
2位:Xinying Chai(中国)
■SUP ロングディスタンス 6km(オープン)/インフレータブルボード 500m (チャレンジ)
日本代表派遣なし
アジアサーフィン連盟とは
本大会を主催したAsian Surfing Federation(アジアサーフィン連盟)は、アフガニスタン、中国、台湾、香港、インド、インドネシア、イラン、日本、モルディブ、フィリピン、韓国、スリランカ、タイの13か国で構成される。
五輪本大会でサーフィン競技を統括するのは、IF(国際競技連盟)であるISAだが、これまで4年に1度、五輪と五輪の合間に開催されるアジア競技大会(通称アジアオリンピック)を統括するための組織がなかった。
そこで日本が主導を取り、アジアサーフィン連盟を設立。ISAの承認も受けており、今後アジアオリンピック等におけるサーフィン競技採用を目指し、統括を進めていく。今回初開催された『アジアサーフィン選手権』は、今後も年に1度開催される予定で、将来的にアジアオリンピックの選考大会となる可能性がある。
既にこのような五輪の下位組織が機能している大陸もあり、南北アメリカ大陸の国々が参加する『パンアメリカン競技大会』は4年に一度、五輪の前年に開催される。2019年大会のサーフィン競技優勝者は五輪の出場枠を獲得しており、「ゆくゆくはアジアサーフィン選手権やアジアオリンピック経由からも五輪出場枠を獲得できるようにしていきたい」と連盟関係者はコメントしている。
アジアサーフィン連盟公式サイト
https://asiansurfing.org/
オセアニアサーフィンカップ
2019年11月23日から30日にかけて、サモア・サバイイのアガノアビーチで第11回『Oceania Surfing Cup(オセアニアサーフィンカップ)』大会が開催された。
南太平洋のオーストラリア、ニュージーランド、バヌアツ、タヒチ、サモアの6か国が参加し、ニュージーランドが団体優勝。
今後、2023年にソロモン諸島で開催されるパシフィックゲームス(アジアオリンピックの南太平洋版に相当する)の選考イベントになる可能性がある。
東南アジア競技大会
2019年11月30日から12月8日にかけて、フィリピンのサンファンで第6回『Southeast Asian Games(東南アジア競技大会)』 が開催され、今年初めてサーフィン競技が採用された。
東南アジアのインドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイが参加し、男女それぞれショートとロング部門を開催。4部門中3部門で、フィリピン選手が金メダルを獲得した。
ISAは「わずか数か月前にISAの108番目の加盟国として登録されたばかりのミャンマーの選手が、初めて国際イベントに出場した歴史的な瞬間」とコメントしている。
加速する五輪ムーブメントの未来
2020年東京、2024年パリに続き、2028年ロサンゼルス五輪でもサーフィン競技採用への期待は高い。五輪競技として継続採用されれば、本大会だけではなくその周辺大会や組織なども更に整備されていくだろう。
五輪に付随する大会として、各大陸での競技大会のほか、ユースオリンピックなどもある。2022年セネガルユース五輪では既にサーフィンの採用が決定しているが、このまま流れが加速すれば、毎年のように五輪関連の大会が開催され、WSL(CT・QS)などのプロツアーで世界転戦をする選手にとってはスケジュールに大きな影響を受ける可能性も考えられる。
それでもサーフィンをメジャースポーツに引き上げるために、オリンピックほどの起爆剤は他になかなか見つからないだろう。既に“五輪”は2020年東京五輪だけの一過性のものではなくなっており、この持続的な五輪ムーブメントが、長期的にアスリートの育成やサーフィン業界の繁栄、また世界の人々にサーフィンの素晴らしさを広めていく布石になればと思う。
(THE SURF NEWS編集部)