中米最小の国でありながらサーフポイントが密集し、その良質な波とアメリカからのアクセスの良さも相まって注目を集めているエルサルバドル。サーフシティ計画でサーフィンを軸とした成長戦略を掲げた政府の取り組みを前編で読んで、行きたくなった人も多いのでは?後編ではエルサルバドルのサーフィン史と、サーフポイントの紹介をしよう。
エルサルバドルのサーフィンの歴史
遅くとも1970年代には冒険心あふれるサーファーが波を求めて中米を放浪し、エルサルバドルのエル・スンザルと言うポイントに既に住み着いたサーファーがいたという。夢のようなレギュラーのポイントブレイクの話が少しずつ広まり、次々と近隣のサーフポイントが発見される。1980年代から内戦の影響で治安が悪化し、一時は観光業が衰退したものの、2000年代から徐々に復活してきた。
世紀が変わり、エル・スンザルよりもハイパフォーマンス向けの波を誇るプンタロカが世界の注目を集め、サーフキャンプやサーフスクールなどが発展し、にぎわいを見せている。北米からのアクセスが良く、米ドルとビットコインも法定通貨なのも人気が高い理由だろう。
今ではメジャーなポイントは地元と海外からのサーファーでにぎわうが、少し冒険すれば、がらがらなポイントもまだある。公用語はスペイン語だが、観光地では英語も通じるところが多い。日本からは乗り換えでやや遠いけれど、足を延ばせば魅力たっぷりの目的地があなたを待っている。
メインのサーフゾーンはラ・リベルタード周辺
国際空港がある首都サン・サルバドルから約40キロ離れたLa Libertad(現地の発音でラ・リベルタ)はエルサルバドルのサーフィンの中心エリア。近くに複数のサーフポイントが点在し、その日の条件や気分によってベストのスポットを選べる。サーファー向けの宿やサーフキャンプが多く、商店やレストランも充実している。エルサルバドルを訪れたら、まずはラ・リベルタード周辺を見て回ると良いだろう。
Punta Roca プンタロカ
多くのサーフポイントの中で、最も長く、波の形が良いのはプンタロカだろう。レギュラーのポイントブレイクはアウトサイドのセクションはチューブがあり、ショルダーの張ったターンセクションも長く、決まるとインサイドまで250メートルものロングライドが可能。比較的人気なスポットで上級者が多いため混雑することも。過去にWSLの大会が開催されたことがあり、2022年には初のCT大会が予定されている。メインのテイクオフゾーンは上級者向き。水際の玉石が滑るので入水の際は要注意!
El Sunzal エル・スンザル
2021年のISA世界大会が行われたポイントの一つ、エル・スンザルは玉石とリーフのミックス。エルサルバドルで最も歴史のあるポイントで長いレギュラーの波が楽しめる。どんなうねりも拾うため、他がフラットでもここは要チェック。厚めなブレイク中心でロングボーダーでも楽しめて、サイズが下がると初心者でも良い波に乗れるチャンスがある。
La Bocana ラ・ボカナ
エル・スンザルから東へ約1kmの河口にあるライト、レフトのピークでエル・スンザル同様にうねりに敏感。レギュラー波が多いエルサルバドルでは数少ないレフトがあり、パワーのあるブレイクが特徴。ここもISAの世界大会の会場となった。
El Zonte エル・ソンテ(別名ビットコインビーチ)
エル・スンザルの西にある小さな村に面しているサーフポイント。村は小さいけれど、巨額な寄付をきっかけにビットコインが広まり、今ではビットコインで多くのサービスを利用できる話題の場所。
La Paz ラパス周辺
ラ・リベルタの東に位置し、Costa del Sol(コスタ・デル・ソル)やEl Pimental(エル・ピメンタル)のビーチが有名。初心者でも楽しめるビーチブレイクがあり、観光客に人気なスポットの一つ。
Oriente オリエンテ方面(東海岸)
首都サン・サルバドルから東へ約160キロのところにLos Mangos(ロスマンゴス・ビーチ)やPunta Mango(プンタマンゴ)など、ビーチブレイクとポイントブレイクが点在する。中心地からは少し離れているが、良質な波があり、少し冒険すれば貸し切りのポイントにも出会えるチャンスはまだある。
シーズン
3月から10月にかけて南西からのうねりが入りやすく、コンスタントに波がある。11月から2月は小波になることが多いけれど、うねりが入れば少人数で良い波を堪能できる。雨季は5月から10月で激しい雨が続くと川が氾濫し、道路が通行できなくなることも。南うねりが入り始め、雨季になる前の3月から4月がベストシーズン。エルサルバドルは一般的には朝は無風か弱いオフショア、昼前からは緩やかなサイドからオンショアに変わり、夕方に再びオフショアに戻ることが多く、サーフィンには朝と夕方がベストのコンディションが整う。
サーフィンで発展してきているとはいえ、エルサルバドルはまだ発展途上のところもあり、冒険を味わいながら良い波を期待できる目的地。年中暖かく、ウエットスーツ不要だが、リーフのポイントもあるため、タッパやリーフブーツはあると安心。
かつて世界でもっとも殺人事件が多い国と言われたエルサルバドルも、近年治安はだいぶ良くなっているという。しかし、高価なものを見せびらかさず、貴重品の管理をしっかりし、夜間は出歩かないなど、途上国を訪れる際の基本的な危機管理を忘れずに旅行を楽しんで欲しい。
ケン・ロウズ