シリーズ「おいらはサーファーの味方」⑮
波情報で効率よくサーフィンを楽しめる時代になったけれど、それでも波のクオリティーが高いとは言いがたい日本、それはなぜ?
「どうしてこんなに長いラインのスウェルが届くんだろう」海外でサーフィンをしたときにあなたはそう思ったことがないですか?
水平線の彼方からやってくるカーテンのドレープのような美しいスウェル。日本では稀にしかお目にかかれない美しい波が外国のサーフポイントでは毎日のようにブレイクしているのはなぜか。それがあたりまえだと思っているサーファーも多いかもしれないけど、もう一度頭をニュートラルにして考えてみると、あのような波が日本のビーチには届かないのはどうしてなのか?そう思うことありませんか?。
2018年7月下旬、インドネシアに巨大なスウェルがヒットした。SNSでその画像がいろいろアップされたからご存知の方も多いと思う。
ところであの波はどこからやってくるのか知っているだろうか?あれはじつは南極からやってきている。正確に言えば南氷洋で発生したストームによって起こったスウェルがインドネシアやオーストラリア、そしてハワイやカリフォルニアにまで届く。だから同じ波が日本に届いても不思議ではないのに、じっさいは届いていない。
どうして?その答えは上の地図を見れば分かる。海の赤色は波高の高いエリアを示している。インド洋は赤い、オーストラリアも、でも日本の周囲はほとんど青色。その理由は、オーストラリやパプアニューギニアが南極と日本の間に存在していてスウェルの行く手を阻んでいるから。
南氷洋で発生したスウェルは北極に向かって北上する。とくに南極で冬の時期に起こるストームは台風の何倍もある勢力だから波も高い。長い時間をかけてスウェルが海を進むとシェープされて美しいラインナップとなる。そういうスウェルがバリなどの南極との間に海しかない地域に届く。インドネシアでは南半球が冬になる5月から10月くらいがベストシーズンといわれる。つまり南半球が冬の時期。
その南極から発せられるスウェルは赤道を越えて北半球へ、そしてときにはアラスカまで到達することがある。つまりハワイのワイキキでブレイクしている波は南極からの贈り物。カリフォルニアでもマリブのような場所で長いラインのスウェルがきれいにブレイクする。あれも南極からやってくる波(全てではない)でアメリカではニュージーランドスウェルと呼ぶ。中南米や南米にも南のスウェルはヒットする。
繰り返すけれど残念ながらこの美しいスウェルは、オーストラリアやパプアニューギニアが壁となっている日本には届かない。
もちろんこの2つの国には罪はない、ないけれどもし日本と南極の間になにも無ければあのウルワツやベルズのような波がブレイクしたかもしれないと思うとちょっと悔しいというか残念だ。タヒチのあのチョープーのビッグウェーブもこの南極からの波。タヒチがハワイのサウスショアより波が大きいのは南極に近いからだ。
ちなみにタヒチにヒットしたサウススウェルは5日後くらいでハワイに届く。
南アフリカのジェフリーズベイも冬が波の季節だ、つまり日本が夏のとき。インド洋の中心にあるモルジブ諸島、そして最近注目を浴びているナミビアは海岸線が南を向いているからダイレクトに南極からのスウェルをキャッチする。
日本は通年で低気圧や台風が通過して波が発生するけど、それは日本列島の近くを通過するためにピリオドの短い波が多い。しかもせっかく良い波がブレイクしても低気圧が移動すればすぐに良いコンデションは終わってしまう。
さて今回のコラムは、日本に住むサーファーにはちょっと残念な話題だけど、でも南極からのスウェルが届く海外へサーフィンに出かければいいわけだ。一週間先の波を予想してエアーチケットを購入する。そんな夢のようなサーフトリップが現実となった21世紀に僕たちは生きているのだから。
(李リョウ)
Reference:https://www.windy.com/