ウィドウ(Widow)は直訳すると「未亡人」だが、サーフ・ウィドウとはサーファーの夫や彼を持つ女性のことを指す俗語だ。
豪Stab Magazineがジャックというサーファーの彼氏を持つ女性、ホリー・ウェストのストーリーをピックアップした。ホリー自身はサーファーではなく、彼女の父や弟はサーフィンをしていたものの嗜む程度。サーフィンフリークなジャックと付き合ったことでサーフ・ウィドウとしての道を歩み始めた。
ホリーの話からは、サーファーをパートナーに持つことがいかに大変なことなのかがわかるが、そこから得られることもあるようだ。サーファーにとっては少々耳が痛いかもしれないが一見の価値がある。
サーファーばかりが見ているメディアでサーフ・ウィドウについて語るのは少し危険かもしれないけど、私が語る番がやってきました。
俗語や慣用句のオンライン辞書サイトUrban Dictionaryは、「夫や彼がサーフィンをしているのを待ちながら永遠にビーチで過ごす女性」と定義していますが、その定義について少し疑問があります。
サーファーの彼を持つと、こんなこともあるからです。
・雨の日は車の中でひたすらじっと待機する
・冷めていく食事とともにワインを飲みながら戻って来ない彼を待つ
・朝5時の夜明けに叩き起こされる
・車中におしっこをしたウエットスーツの不快なにおいが充満する
・波情報に基づいて休日が決まる
私の家族では、父や弟はサーフィンにハマったのはかなり後のことで、サーフィンのために他を犠牲にするような生活は知りませんでした。父はどちらかというと、すべてのコンディションがベストに整わなければ家に残って母や家族と時間を過ごしていたので、サーファーの男の人は皆そういうものだと思っていました。
現在私と彼の関係性は、私、彼、そして愛人(サーフィン)の三つ巴。三角関係、または一夫多妻制のようなものです。サーフィンは彼の人生そのもので、私よりはるか前から存在しているパートナー。もし私と彼が別れたとしてもその後ずっと存在し、誰もその仲を引き裂くことはできないでしょう。
でもこの不調和なトリオ状態は、前向きに捉えると私にはいくつかのメリットがあることに気づきました。彼のことを、私と愛人(サーフィン)がそれぞれのポジションで支えていることに。
まず、彼がよいサーフィンから戻ってくると、普段の1000倍、情熱的で幸せで私に愛情を注いでくれます。公認の浮気のようですが、彼がより幸せそうにサーフィンから戻ってきて私に構ってくれるなら、許します。
ただ誤解しないでください。嫉妬や葛藤がまったくないわけではないのです。
「彼は私よりサーフィンを愛しているのでは?」
「私はサーフィンと同じように、彼を幸せにすることができるの?」
と思うこともあります。
でも、私たちトリオの関係は、信頼と相互理解に基づいています。彼はきっと私よりサーフィンを愛していますが、それでいいのです。彼はサーフィンと結婚したくてもできないし、子供を授かったりはできません。そして波が良くないときは、私にプライオリティが来ます。
もし彼がここで何か言いたいとすれば、私とサーフィンは平等に愛している、と主張するかもしれませんが、正直なところ、それは無駄なことです。
サーファーの男性たちへ。
あなたたちサーファーが幸せであれば、私たちサーフ・ウィドウは幸せなのです。これは別に、私たちをトイレもないような場所に連れていって、あなたたちは3ラウンドサーフィンするというのを、両手を広げて喜ぶわけではありません。ただ、時々でも「付き合ってくれてありがとう」とか「もっとサーフィンしたかったけど早く帰って一緒にディナーを作ろうと思って」と言ってくれたらそれでいいのです。
こんなサーフ・ウィドウの生活を理解して適応することで、私たちの関係性も改善されました。例えば、私が生理のときなどイライラする傾向は彼も理解していて、そういう時は息抜きの時間をくれたりもするし、彼がなかなか海に入れないときに短気になりがちなことを私も許容することができます。良い波を追い求めなければ決して知らなかった遠方へ一緒に訪れたりもできるし、何より彼を幸せにするサーフィンや海に対しては、深く理解しているのです。
最後に、サーフ・ウィドウとして過ごす時間の中で、サーファーがよく使うフレーズの裏の意味が少しわかるようになったので、いくつか挙げたいと思います。サーファーの方、本心を暴露してごめんなさい。そして、サーフ・ウィドウの仲間たち、きっと思い当たる節があるでしょう。
「Y時の予定、後に変更しない?」
(訳)Y時は波が良さそうだから海に入りたい
「一緒に冒険に出よう」
(訳)シークレット・ポイントをチェックしに行こう
「今日はビーチ・デーを過ごそうよ」
(訳)1日中サーフィンしたいからのんびり写真でも撮ってよ
「ちょっとだけ入ってくるね」
(訳)気休めにちょっとって言ったけど、波によってどのくらいになるかはわからないよ
「波はそこまで良くなさそうだけどね」
(訳)いずれにせよ行くけどね
「ちょっと波チェックに行ってくる」
(訳)どっちみち入るけどね
もちろんこの生活はすべての人に適している訳ではありませんし、私も時々不平を言ったりしますが、5時のアラームとおしっこしたウエットスーツには大分慣れました。
Reference: True Confessions Of A Surf Widow|Stab Magazine
(平野ハナ)