西オーストラリア、パース出身のプロサーファー、「フリック」ことフェリシティ・パーマティアが待望のサーフ・アート・ムービー『Skin Deep』をリリースした。この4分間のヌードサーフムービーは、当初2018年に公開予定だったが一度頓挫し、今年の12月1日にようやく公開された。
ヌード動画をネットにアップするには様々なリスクが伴うが、ビッグウェーブサーファーのフリックはそのリスクを冒すことに戸惑いはない。
フリックは、オーストラリアン・オープン優勝経験があるほか、マウイ島ジョースで行われた女子のビッグ・ウェーブ大会では2位の好成績を記録した強者。しかし、今回の動画は彼女のそうした経歴以上の波紋を起こすかもしれない。
およそ3年がけでフィジー、ハワイやオーストラリアで撮りためたヌードサーフィン映像は監督JJジェンキンズによって約4分のショートムービーに編集され、先日Vimeoの有料レンタルで公開された。今作では彼女の最大の趣味であるアートとサーフィンを融合し、「自由であること」を模索する。
「この作品を作る過程は私に大きな力を与えてくれた。自分のフェミニニティー(女性らしさ)をオープンに受け入れることで、自分に大きな自信を与え、ありのままの自分を受け入れられるようになった。私にとって、サーフィンもアートも瞑想であり、原動力であり、現実逃避でもある。一番心地よいのはサーフィンをしている時か、作品を作っている時だ。」
Felicity Palmateer
有名サーファーのヌード写真がメディアで取り上げられるのは初ではない。ESPNマガジンのBody Issueでは過去にケリー・スレーターやココ・ホーなどのビッグネームが裸で撮影されているのが思い浮かぶ。しかし、今回のように、こんなにオープンに、自分が生まれたそのままの姿でサーフィンをしている姿を映像に収めて公開されたのは初めてだろう。
ヌード映像の公開には様々な意見があるなか、モデルでありアーティストでもあるフリックは「芸術作品だ」と主張する。
「ソーシャル・メディアの世界では、コーヒーの淹れ方を失敗しただけで、それを指摘する人が必ずいる。これは芸術であり、考えさせられる作品であって欲しい。これを見た人がいろいろと意見を交換するのはうれしいことだ。」と動じずに前向きな姿勢を前面にだしている。
撮影の最大の困難は他人がいないポイントで良い波を当てることだったという。当然この映像は他人のカメラで撮影されたりしてしまうと、大きな問題にもなりうる。実際に撮影や編集をしていても、邪道すぎるアングルや慎ましくない映像も多く、上品で美しさを前面にした作品を作るのに多くの映像を切ってしまったそうだ。
今のプロサーフィンの世界はブランドやスポンサー、大会結果など外部の圧力に大きく影響されているが、本来サーフィンという行為は自然とのつながりを鮮明に感じながら自由に波に乗るものである。
この自由度を最大限に求めて、素肌で太陽や風を感じ、素足で昔ながらのシングルフィンのサーフボードを操るフリックは、「私にとって大事なのは、常にその瞬間を生きるにあたって、自由に自己表現すること。それと、美しい場所でプラスな経験をすること。この作品は私の最大のパッションであるサーフィンとアートを一つにしたもの」と語った。
しかしながら、2018年末の公開目前に突然リリースをやめてしまった。それまでにWSLを含む関係者への確認と、多数のメディア取材を受けていたが、噂では映画に関係のあるブランドが突然ストップをかけてしまったというのだ。
あれから2年ほど、その内情は公開されていないが、謎のブランドとの契約期間が過ぎたのか、心を込めて作った映像はとうとう日の目を見ることができた。
無料で見れるサーフムービーが多い中でたったの4分間で383円という価格はやや高く感じる人も多いだろう。しかし、実際のところサーフムービーというより、アート作品として考えた方が良いのだろう。最先端のPhantomやRED EPICで撮影されているだけに映像も非常にきれい。オーストラリアのグループRüfüs Du Solの曲も絶妙に合い、美しい風景の中で優美に波に乗っている姿は他で見られるものではない。
これを芸術と呼ぶかどうか意見は様々だとしても、この映像を見て何かしらの感動を得ない人はいないと思う。ピュアで美に満ちた行為が女性をエンパワーするきっかけとなれば、なお影響は大きいと言えるだろう。
ケン・ロウズ
『Skin Deep』のレンタル詳細:https://vimeo.com/user126450741/review/483477636/25afad6fe9