2019年にWSLが世界中のサーフィンファンのために立ち上げた「WSLスタジオ」の最新シリーズ、ビリー・ケンパーのドキュメンタリー映像『BILLY』が公開!
2020年の年末に公開されたトレーラーを見て公開を待ち望んでいたファンを裏切らない素晴らしい映像になっている。
「BILLY」概要
このドキュメンタリーはマウイ島・ジョーズを舞台とした『ジョーズ・ビッグウェーブ・チャンピオンシップ』で4度の最多優勝記録を達成したマウイ島出身のビッグウェーバー、ビリー・ケンパーが主役。
ビリーは2020年の2月、世界中がパンデミックで身動きできなくなる直前にルーク・デイビス、コア・スミス、ローカル・チャージャーのジェローム・サヒュンと共にモロッコへビッグウェーブハンターに向かう。
しかし、そこでワイプアウトをして生死を彷徨うような大怪我を負ってしまう。
モロッコでの天国と地獄。
そして、復活。
全6チャプターのうち、3までが更新。日本語字幕も用意されている。(YouTubeの設定メニューから「字幕」で言語を選ぶことができる)
「BILLY」 Chapter 1
海に入るたびに運命に挑むビッグウェーバー。
文字通り命をかけたサーフィンは常にリスクを伴うが、その見返りは大きい。
だからこそ、彼らは日々トレーニングを重ねてその日に備えるのだ。
人生さえかけて。
ジョーズという世界トップの波があるマウイ島で生まれたビリーはある意味運命のように限界に挑戦を続ける。
’粘り強い’
’刺激的’
’優しい’
’頑丈’
’情熱’
’英雄’
’猛り狂うライオン’
周囲の人は彼をこのように称賛する。
2020年の2月、ハワイのノースショアが終盤となり、コンテストシーズンが終了。
次なるハント先を求めたビリーは、大西洋に面するアフリカに巨大なウネリの源を発見、親友のルーク・デイビス、コア・スミスに声をかけた。
目的地はモロッコ。
ビリーにとってビッグウェーブを追いかけることは仕事であり、生きがいだが、彼には奥さんと4人の子供と愛すべき家族がいる。
妻タヒチが「ミニビリー」と称するほど子供達はやんちゃだが、彼女は旅立つビリーに向かい「無事に帰ってくれればそれで十分」と話す。
ビリーは「心と魂を込めてサーフィンをやる。でも、家族が生きていくためにやっている仕事でもある。養うためにね。子どもたちは成長したら気づく。これが僕の仕事だったとね」と語った。
ビリーのようなビッグウェーバーがプロとして生活していくには、コンテスト以外にも自分たちの価値を証明する手段が必要になる。
「フリーサーフィンと波を追うのは僕に必要なことだ」
ビリー・ケンパー
「僕らが好む波は一瞬のもの。たぶん計算すれば人生でビッグウェーブに乗れるチャンスが本当に少ないのが分かる。だから逃せない。その場にいるかいないかだ」
マーク・ヒーリー
ビリー達が目指すのはモロッコのスラブと呼ばれる底掘れする危険なブレイク。
モロッコに着いた初日にローカル・チャージャーのジェローム・サヒュンのナビゲイトで向かった先はウォーミングアップには最高のシリンダーバレル。
ローカルに混じって次々とメイクして大満足のようだったが、彼らが求めていたのはもっと大きなウネリだった…。
「自分の求めていた波は来なかった。仲間も同感だったと思う。少し味わえたけど求めていたものではなく、後味が悪かった。次の大波ではどんなことが起こるか?」
ビリー・ケンパー
「BILLY」 Chapter 2
Chapter 2の序盤は2019年/2020年シーズンのビリーのコンテストでの活躍を振り返る。
『ジョーズ・ビッグウェーブ・チャンピオンシップ』での4度目の優勝、『ビラボン パイプマスターズ』のトライアル優勝、『サンセットオープン』の優勝。
更にコンテストの合間に波を求めてオアフ島とマウイ島を往復するビッグウェーブに対しての情熱など、このシーズンのビリーが凝縮された内容だ。
場面はモロッコに戻る。
2020年2月18日。
モロッコ最大の都市カサブランカから車で約2時間南下したサフィ。
仲間との時間を過ごした後、予想通りのウネリが入った。
6-8ftのロングバレル、間違いなく最高の波に恵まれて至福の時を過ごしたビリーと仲間達。
本来ならば歴史に残るようなモロッコのトリップムービーになるはずだったが、この後最悪な事態が待ち受けていた…。
ビリーがワイプアウトした際に体が動かなくなるような大怪我を負ってしまったのだ。
「BILLY」 Chapter 3
2020年2月18日
午後5時25分。
ビリーが大怪我を負う1時間前。
9時間にも及ぶセッションを振り返ったビリー。
皆が疲れ果てていた一方、人生で最高の一日だったかのように満面の笑顔を浮かべていた。
ここで一日が終わっていれば、180度違う映像になっていたが、一生に一度かもしれない特別な波を前にもう一度パドルアウトしたのだ。
そして、運命の時。
セットに乗ったビリーはストールしてバレルに入るが、ちょっとしたミスでボトムに叩きつけられることに…。
完全に気を失い、意識が戻った時には体が動かず、声も出なかった。
’足が20個くらいにちぎれた感じだった。
恐怖とは次に何が起こるかわからないこと。
再び歩けるのか?死ぬのか?’
この表現でビリーがいかに危険な状態だったかが分かる。
港から救急車で病院に運ばれ、レントゲン台に乗せられた時も痛みで全く体が動かせなかったと言う。
かつてないほどの恐怖におののいたビリーは妻タヒチと子供の声を聞くために電話をかけた。
その後、カサブランカの大きな病院に搬送され、レントゲンとCTスキャンの結果、骨盤の骨折で緊急手術と判断されたが、手術自体にリスクがあると感じたために過去の怪我で何度も助けてもらったマシ・レイノルズに連絡。
マシはレントゲンとCTスキャンを見てモロッコの医療チームに意見を伝えた結果、緊急手術は見送られた。
しかし、ここからが本当の地獄だった。
カサブランカでの大きな病院でさえ、その処置は適切ではなく、痛み止めの薬の副作用により下痢が続き、シーツを交換するだけでも叫んでしまうような激痛。
膝が砕け、肺に水が溜まって呼吸困難に陥ったのだ。
妻タヒチ曰く、彼は心が折れていた。
身体的、精神的、感情的にも。
あの勇敢な夫が始めて諦めたところを見て、たまらなかったと涙ながらに話す。
ビリーの姿を側で見ていたコア・スミスはこのままではビリーの命が危ないと感じ、WSLと妻タヒチに連絡する。
その深刻な状況にWSLも支援を考えるが、飛行機で搬送するにも座ることが不可能な身体を運ぶのが困難であり、加えて新型コロナウイルスが蔓延し始めたのだ。
多くの国が国境を封じ始めたこの時期。
一刻を争う事態になった。
2020年2月23日。
ビリーは心臓発作を起こし、ICUに移され、呼吸補助を受けた。
生死を彷徨うような緊急事態にWSLは医療用航空機を用意。
二人の医師と共にロスアンゼルス空港に向けて飛び立つが、パンデミックで航空機の乗り入れがシャットダウンされた…。
ようやく受け入れてくれたヴァン・ナイズ空港に着き、ビリーと側にいたコア・スミスはあらゆる感情が溢れたと言う。
二人は泣きながら救急車に乗り、九死に一生を得たと思ったが、実は最悪な状況はまだ始まったばかりだった…。
Chapter 4へ続く。
(空海)