五輪金メダルに次いで、5度目のWSLワールドタイトルを獲得したカリッサ・ムーアの故郷ハワイでは世界を目指す若手女性サーファーが増えているという。
サーフィンの世界でも徐々に男女公平への動きが強まっているが、ハワイではつい最近までノースショアで女性参加できるプロの大会がなかったりとまだまだ男性優位な現状もある。一方、ハワイではかつては波乗りは男女関係なく行われ、素晴らしい女性サーファーの話がたくさん残されている。
動画シリーズ『Surf Girls: Kaikaina』はオアフ島に住む5人の若手女子に着目。ハワイアン血を引く5人がその歴史を現代につなげ、未来へと伝えている。女性だけの制作チームGnar Gnar Honeysによる4部制の動画シリーズはその友情と情熱を照らした。
Episode 1:メンバー紹介
第1話では、シリーズに登場する5人を紹介する。ハワイでは、子どものころからアロハ精神を忘れないようにと教わる。オハナ(家族)を大切にすること。大地を大切にすること。海を大切にすること。その精神を大切に、現代の若者らしく生きている5人とは:
・社交的なHokulani 「ホク」Topping、15歳。モデルとしても活躍する6代目のハワイアン女性サーファー。
・笑いが絶えないVaihitimahana 「ヴァイヒティ」Inso、13歳。コンペ向けで将来オリンピックのハワイ代表として世界一のサーファーになることを目指している。
・グループの母役Ēweleiʻula 「エーヴェ」Wong、15歳。自分のルーツを知る大切さをアピールして、文化としてのサーフィンだけでなく、大地や海を守る伝統を継承したい。
・マカハ出身のPuamakamae 「プア」DeSoto、15歳。12人家族で育ち、ロングボードでもショートボードでも全国大会の優勝経験がある。
・そして姉的存在Moanalani 「モアナ」Jones Wong、21歳。ここ数年パイプをチャージし、ハワイのノースショアで女性サーファーの居場所を作り上げてきた近代パイオニア。
それぞれフォーカスは違っても、ネイティブハワイアンのルーツを持つ5人は大地や海とつながる精神を根底にサーフィンを続けている。
Episode 2: 希望の星カリッサ・ムーアの秘密に迫る
第2話は、彼女達にプロアスリートになる夢を与えているハワイ出身の女子ワールドチャンピオン、カリッサ・ムーアの姿を追った。カリッサは多くのアロハスピリットを世界に広め、全力で次世代のサーファーをサポートしている。
「ここ数年女子サーファーが増えていることはすごくわくわくする。みんな夢を追いかけている。私が小さかったころ、女子は私独りだったこともあったからね。」
5X世界チャンピオン、カリッサ・ムーア
しかし、努力なしでは夢はかなえられない。一番になりたい人が何万といる中で、実現できるのは一人だけだ。動画では、海から「マナ」(パワー、エネルギー)をもらいながら、日々のトレーニングに励む彼女達の姿が描かれている。
そして、彼女たちにとって、宣教師と植民地化で一度は廃れかけたサーフィン文化を復活させることも大きな原動力になっている。
Episode 3: 男だらけのパイプラインに挑み、未来を拓く
ハワイのサーフシーンにおいて最も象徴的なパイプライン。男だらけのポイントで入るには相当な勇気と覚悟が必要だ。第3話では、姉的存在のモアナを筆頭に、パイプにチャージすることで未来を切り拓こうとする彼女達が描かれている。
女子サーファーは、スポンサーを得るにも、サーフィンだけではなくルックスが重視される。CTの枠も男性より女性の方が少ない。つい最近まで、ノースショアで女子が参加できるプロの大会もなかった。
「多くの女性がパイプにチャージしてみたいと思ってるの。パイプで女子コンテストがあればよいトレーニングの機会になるはずだわ。」-モアナ
2020年12月、初めてパイプラインで開催された女子CTイベントに参加したカリッサは、「次の世代の子たちにバトンを渡していくのが楽しみ」と語る。Kaikainaには「妹」という意味があるように、姉妹のようにお互いを支え合い、高め合って、未来を変えることができる。
Episode 4:制作を振り返る
Kaikainaのシリーズは登場人物だけでなく、制作も女性だけで行われたことで、主役の5人がオープンに本音を語った。
KaikainaのディレクターでGnar Gnar Honeysの設立者の一人、モニカ・メデリンは、女性が活躍している姿を伝えることで次の世代に「自分の居場所がある」、「サーフィンで活躍できる」と気づかせられると語る。
また、ネイティブハワイアンのルーツを持つ女性を通して、ハワイの文化を世界に広めることもこの動画の狙いの一つだ。SNSなどのデジタル媒体で広めることで次世代も先祖と同じように海や大地を大切にしながらサーフィンを続けるだろう。
今後もKaikainaのように女性アスリートを取り上げる作品に期待しつつ、女性サーファーが男性と同様に活躍できるように応援していきたい。
ケン・ロウズ