今年9月のUSオープンの開催時期に合わせてプレミア試写会がカリフォルニア州ハンティントンビーチで行われたサーフムービー『Snapt4』。
インディーズ系サーフムービーシリーズ作品のなかでは高い人気を誇る同作品は、11月にオンライン上で無料公開の運びとなりました。
そこで同作品のこれまでの歴史、今作の内容、今回新たに実施されたアワードなどについてお届けします。
Snaptシリーズの歴史
『Snapt』はローガン・デューリエン監督が指揮を執るインディーズ系のサーフムービーシリーズ。
Snaptの初代作品がリリースされたのは、アンディ・アイアンズが初めてワールドタイトルを獲得した2002年でした。
Snaptが人気を博した理由の一つとしては、多くのビッグネームが出演したことにあり、初代作ではアンディとブルースのアイアンズ兄弟、ミック、パーコ、ディンゴのクーリーキッズ、タジ・バロウなど錚々たる面子が出演しました。
テイラー・スティール監督がモーメンタムをリリースしたのがちょうど10年前の1992年だったので、モーメンタム世代の次世代に光を当てた作品といったところでしょう。
時代背景で言えば、今ほどCTサーファーのアスリート化が一般的ではなかったので、フリーサーフィンにも力を入れるCTサーファーが多くいたことが、この豪華な顔ぶれにも繋がったと思います。
現在であれば、コンテストに専念したいからビデオパートから離れると口にするCTサーファーもいるくらいですし。
そんな時代背景の後押しを受け、翌2003年には続けざまにSnapt2をリリースし、前作以上に豪華メンバーが揃ったことで、シリーズ作品として確固たる地位を築いたと言っても過言ではありませんでした。
その後、続編を期待する声がありながらも、15年ほどの沈黙を貫くことに。
第3弾となるSnapt3が満を持してリリースされたのは2017年終わりのことで、長らく振りの復活に加え、1と2で出演したブルース・アイアンズも出演とファンとしては堪らない復活劇となりました。
2017年という時代はすでにSNSでのショートクリップが主流となり、フルレングス(長編)作品を作るだけの製作費を集めることが厳しい時代。
テイラー監督のハイパフォーマンス作品後継者として腕を奮っていたカイ・ネヴィル監督さえも、2015年の作品『Cluster』以来はフルレングス作品をリリースしていません。
この時代でもフルレングス作品のリリースはあったものの、基本的にはドキュメンタリーがメインで資金集めはクラウドファンディングが主流となっていました。
そんな時代にハイパフォーマンスサーフィン作品が復活し、よりスペシャル感が増したとも言えました。
最新作『Snapt4』の内容
さすがに今の時代ではCTサーファーがバシバシ出演というわけにはいかないのですが、十分に見応えのあるトップフリーサーファーが多数出演しています。
カイ・ネヴィル作品の常連サーファーなどは全く出演していないので、何らかの線引きが存在しているのだと思います。
出演サーファーは登場順に以下となります。
*ベンジ・ブランド
*シェルドン・パイション
*カルロス・ムニョス
*アッシャー・ペイシー
*イアン・クレーン
*イーサン・オズボーン
*バロン・マミヤ
*ジョシュア・モニーツ
*パーカー・コフィン
*イズキール・ラウ
*クレイ・マルゾ
*セス・モニーツ
*ジャック・ロビンソン
*メイソン・ホー
シェルドンとカルロスの間にはワイルドカードセクションが挿入されていて、同セクションではまだ自分のパートを持つには至らないアップカマーによる各自数本のライディングをまとめた内容となっています。
作品の構成自体は、これまでのSnapt同様にサーファーベース。ワイルドカードセクションがあることも含め、作品構成はテイラー監督と同じです。
今作は当初2020年8月のリリース予定でしたが、コロナ禍により1年遅れとなる2021年9月リリースに変更。それにより撮影期間も延びて2年間を費やして制作されました。
テイラー監督作品でさえ1年おきのリリースだったということは、概ね撮影期間は1年間だったと思われるので新型コロナによる思わぬ副産物と言えますね。
2年もの期間があれば、極端な話、数百回に1回しかメイクできないようなマニューバのメイク映像を撮れる可能性も高くなるので、作品内のパフォーマンスレベルの高さは容易に想像できることでしょう。
Snapt4のアワード
非常にユニークな試みとして、今作ではリリース後にジャッジパネルが「ベストバレル」部門、「モンスターマニューバ」部門、誰のパートが良かったのかランク付けする「ベストセクション」部門を決めるというルールが設けられていました。
ジャッジパネルは、スタブ誌スタッフに加え、かつての出演者であったボビー・マルティネス、ミック・ファニング、タジ・バロウといった面々。
賞金まであり、「ベストバレル」と「モンスターマニューバ」は1万ドル、「ベストセクション」は1位が5万ドル、2位が2万ドル、3位が1万ドル。
「ベストバレル」部門
「ベストバレル」部門は、ベンジ・ブランドによるパイプラインでのビッグバレルチャージが受賞しました。
「モンスターマニューバ」部門
「モンスターマニューバ」部門は、イーサン・オズボーンによるバックサイドのフルローテーションが受賞。
「ベストセクション」部門
「ベストセクション」は、ボビー、ミック、タジの3名が出演者のパートを10点満点で採点していき、合計30点満点でのランク付けとなり、3位までに賞金が贈られます。
結果は以下となります。
1. ジャック・ロビンソン(27.6ポイント)
2. メイソン・ホー(26.8ポイント)
3. セス・モニーツ(26.65ポイント)
正式な結果は上記となるのですが、実はジャックを上回るスコアを叩き出したサーファーがいました。
そのサーファーとは、28.8ポイントをマークしたバロン・マミヤ。
だったのですが、実はこのアワードには基本的なルールがあり、作品に使われるのは完全未公開動画であるため、プレミア試写会以前にSNSなどで公開した映像の使用はNGとされていました。
この点についてはローガン監督とバロン共に承知していて、バロンはスポンサーへアピールするために、事前にローガン監督に許可を得て、SNSに投稿していました。
ローガン監督はSNSに投稿したパートを作品からカットすればベストセクションの選考対象になるけどどうするとバロンに判断を委ね、バロンは自身のパートのクオリティを上げるためには選考対象外になることを承知で作品に盛り込みました。
そして実際にトップに立ったものの、選考対象外になっていたというカッコいい裏話がありました。
まとめ
前述した通り、数多くのサーファーが1本の作品に出演するサーファーベースのフルレングス作品は、監督別の直近では2015年のカイ監督の『Cluster』、2017年のローガン監督の『Snapt3』くらいしかありません。
つまり、それだけ貴重と言える『Snapt4』であり、さらには2年もの製作期間を経たので見るものの期待を裏切らない作品になっている点については言うまでもありません。
そんな力作がYouTubeで無料で公開されているため、サーファーであれば見ないと言う選択肢はないでしょう。
50分超の長編になるので、時間のある時にじっくりとチェックしてみて下さい。