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波旅の掟、国内編(サーフトリップのすすめ)

シリーズ「サーフトリップのすすめ」No. 9

出かけるまえに、トリップのルールとマナーを知っておこう

海は誰のものでもない、しかしサーフポイントには『掟』がある。掟(おきて)というとちょっとヘビーに聞こえるかもしれないが、それはいわばルールとマナーであり、ヒエラルキー(序列)、もしくはローカリズムでもあり、また社会の常識(既得権)という一面もある。さて、掟は車の運転にも似ている。まず決められた交通ルールがあり、そして譲り合いのマナーによって車はスムースに道路を走ることができる。サーフィンもそれと同じだ。そのルールとマナーをこのコラムで理解し、サーフトリップのときに役立ててもらえたら幸いだ。

サーフトリップの目的はたった一つ、『グッドウェイブとの遭遇』だ。良い波に乗るために、まずは『掟』を知っておこう。パドルアウトの前に、それはすでにはじまっている… photo by Ri Ryo

サーフポイントを愛する人々をリスペクトすれば、行動も決まる

ローカルサーファーにとって、ホームブレイクは自宅の庭のような存在だ。『その庭で遊ばせてもらう』ビジターはそう考えれば、どういう心構えでサーフィンをすれば良いかが自然と理解できるだろう。さらに、サーフポイントは『ローカルサーファーたちの社交の場』でもあることも理解しよう。その彼らによってポイントの秩序は維持されている。したがって、その秩序を乱さないようにする配慮がビジターサーファーには求められる。

名前の無いサーフポイント

有料波情報には掲載されていないサーフポイントが全国にある。トリップ中にポイントを探していて『あれ、へんだな?』と思うサーファーもいるだろう。そのような名前の無いサーフポイントは、サイト運営側の配慮で情報を公開しないようにしている。その理由は二つある。ビギナーには危険な波であり事故を防止するため、もう一つはビジターが集中するのを避けるためだ。だから、ビジターはそのような場所でパドルアウトしない方が賢明だろう。

サーフポイントは、観光地でない場所がほとんどだ。住民にとってサーファーは頭痛の種という話をよく耳にする。その苦情はローカルサーファーへと向けられて、ビジターお断りというローカリズムが生まれる Photo: RiRyo

サーフポイントは原宿ではない

サーフィンのファッションを否定するつもりはない、筆者もサーフボードやウェットスーツにそれなりのこだわりはある。しかし波が目的で旅をするときには、その地でできるだけ目立たないような行動を筆者は心がけている。例えば国産車に乗り、車にサーフステッカーも貼らない。サーフボードはできるだけ車内に積み、サーフボードも目立たない色にしている。駐車場に車を停めるときは、ローカルサーファーたちが停めそうな場所からは離れたところに駐車する。「なぜ?」と思われるかもしれないが、ビジターサーファーというのは本人が思う以上に目立っているからだ。サーフトリップの目的は「どうやって良い波に乗るか」ということで、ファッションセンスを誇示することではない。もし目立ちたければ、派手なボードを抱えて原宿の表参道を歩いた方が良い。

基本は一人旅で

サーフトリップは一人旅がオススメだ。ヘビーなローカリズムだという噂を耳にして、一人で行ってみたらとくに問題はなかったということがある。一人旅はスッとその場に溶け込みやすい。ときには地元の家に泊めてもらえた、なんていうハプニングも起こるときもある。とにかく、ローカルな場所で楽しくサーフィンができるかどうかは、ローカルたちの気持ちひとつ。派手な外車に乗って、サーフボードをキャリアに満載し、ドアを開ければ大勢のサーファーぞろぞろと降りてきて…そんな光景を見たら誰だって不快感を抱く。一人でやって来て、目立たないように着替えてパドルアウトしていけば、ローカルたちも寛容になる。すべては彼らの気持ち一つということを忘れないようにしよう。

サーフボードは屋根に積むだけでかなり目立つ、だから禁止ということはないが、地元を刺激しない配慮もサーフトリップには必要だ Photo: RiRyo

騒音は知らず知らずのうちに…

静かな早朝は、小さな音も遠くまで響く。例えばワックスを塗るゴシゴシという音。車から流れる音楽。ドアの開閉、話し声などなど。半径100m以内に民家があれば、住民はその音で目を覚ましてしまうだろう。サーフトリップは朝が早く、前夜に到着という場合もある。夜明けまでに時間があるときには、サーフポイントからは離れたところで朝を待とう。例えば高速道路のサービスエリアならば音を気にしなくていいし、24時間営業のコンビニやトイレもある。目的地までの時間を計算しておき、オンタイムでサーフポイントに着くようにしたい。駐車場にテントを貼って朝までパーティーなんていうのは論外だ。

あいさつは、コミュニケーションツール

サーフトリップでは、サーファーに会ったら挨拶(あいさつ)をするように心がけたい。そのときの相手の対応で、サーフポイントの空気感がつかめるという理由もじつはある。というのもサーフポイントには、それぞれにローカル色というのがあるからだ。例えば、湘南はカリフォルニアに似ていて、知らないサーファー同士でもあいさつをすることが普通だが、地方に行くとそうではない場合が多い。初対面の人に声をかけるのは、じっさいのところ難しいが、しかし一つの挨拶によって場が和むことはよくある。それだけでなく、ビジターとして訪れたサーファーが、誰とも目を合わさず挨拶もしないというのも、それはそれで誤解を招きやすい。あいさつは、シャイにならず上手に活用しよう

パドルアウトしてからは

旅に限ったことではないが、サーフポイントでは波をじっくりと観察することが重要だ。またパドルアウトしてからは、ピークへまっすぐ向かったり、ローカルサーファーの直前を通過したりするのも良いマナーとはいえない。まずは波のブレイクしないところに浮かんで、波を待つサーファーたちの雰囲気だけでなく、その技量もジャッジする。技術の伴わないサーファーもいるから。それを見極めておけば、彼らが逃した波をショルダーからいただく、というテクニックも有効となる。遠慮するだけでは良い波を乗ることはできないから、そこは抜かりなく!

まとめ

ローカルサーファーは君を見ている

ビジターにとっては、誰がロコで、誰がビジターかを区別することができない。先日、筆者があるサーフポイントへパドルアウトしてみると、そこにいたサーファーが全員ビジターだったということがあった。最初は、全員をロコだと思っていたから波に乗るのを遠慮していたが、1人のサーファーと挨拶を交わしたのがきっかけで、そのことが分かった。それからは、彼らと同じピークでサーフィンを楽しむことができた。しかし、ローカルサーファーから見れば、ビジターサーファーはすぐに見分けがつく。彼らはビジターがどんな車でやってきて、どこに停めて、どんなボードを持っていて、どんな風にサーフィンをするかを見つめている。君はロコたちから、知らず知らずのうちにジャッジされているんだということは忘れないでおこう。

(李リョウ)

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