家族全員で愛を注ぐようにリノベーション。オーストラリア・バイロンベイの家族と共に成長してゆく家

World Beach House – 世界のビーチサイドの⾃宅を紹介

「この家はすごく狭いの。でも家族5人で1年間、キャラバン生活をしていた時に比べれば、わたしたちにとっては十分なスペースよ」。ディフェンダーでエアーストリームを牽引しながら一年間オーストラリア旅をしたファミリーは、永遠とつづくポイントブレイクに虹が架かる町へと辿り着いた。


築40年の邸宅は海から歩いて約10分、デッキや寝室からバイロンベイのビーチがチラリと見える好立地に建っている。子供たちも自転車で海やスケートパークまで行ける、家族全員にとって最高の環境だ。

吹き抜けの天井から自然光がたっぷりと降り注ぐ家の中を案内しながら、エアストリームでキャンプ生活をしていた思い出を楽しそうに話してくれたケリー。彼女の横でお茶を入れながら、兄弟みんなの面倒をみるのは長男のフィン。遊びたい盛りの16歳にも関わらず、サーフィンとギターを弾く時間以外は、テキパキと家のお手伝いをする優しいティーンネージャーだ。そんな彼の姿から伝わってくるのは、親子の固い絆。それは限られた空間でタイトな旅をしていたファミリーだけが手に入れられる、ご褒美のようなもの。そして狭い家の長所と言えば、家族全員逃げ場がないこと。みんなが自然に同じ空間を共有することで有無を言わさずに会話が生まれ、家族をギュッとひとまとめにしてくれる。

家族が集まるリビングはダイニングとラウンジスペースに分かれている。丸テーブルはみんなの顔が見える大家族にぴったりのシェイプ
ビーチハウスに欠かせないシーグラスのラグ。水草のみを使用しているため土に還るサステイナブルな素材。雑草の上を歩いているような何ともワクワクした感触。シンプルな柄を選べばどんな家具とも合うし、パターンやトーンで個性を演出することも可能
階段下は収納兼ワークスペースとして使用。見せる収納は参考にしたい
存在感抜群のオーク材のヴィンテージチェストの上にレコードプレイヤー。センスの良さが光る

家具やアート、そしてディスプレイされているすべての小物にこだわりとセンスを感じる一方で、5人が生活しているとは思えないほどモノが少ないことに驚く。その中で圧倒的に広いスペースを使っているのはサーフボード。家の外にあるストレージスペースを隠さず、むしろ見せる空間として活用しているところがなんとも大胆。ショートからロングまであらゆるサイズのクイーバーが並び、家族全員の遊び道具だということが窺い知れる。さらにボードは室内でもインテリアとして活躍。オーストラリア・ヌーサ出身のウッドボードシェイパー、トム・ウェグナーの有名なクリエーションの一つであるアライア(古代のサーフボードの原形を桐でシェイプしリバイバルさせたボード)や、木材のみで作られた希少価値の高いサーフボードがアートのようにディスプレイされている。“家の中でも海を感じていたい”というシンプルな発想も、インテリアのアイデアには大切な要素。ディスプレイするアイテム一つひとつにセンチメンタルな想いがあれば、その空間は部屋という域を超え、心安らぐヒーリングスポットにすらなり得る。

自然と家族で会話が生まれる場所は、期待以上の価値がある。外と中を分け隔てないゆっくりとくつろげる空間

「外装と内装をささっとペイントして、簡単にバスルームをリノベーションしただけ」と、シャイに語る夫のグレンは大工さん。実はこの家は、多くの人が競りに参加したオークションで手に入れたもの。家の内外装をペイントするだけでもかなりの大仕事だが、本当のリノベーションはこれからだと言う。家族全員で、愛を注ぐようにリノベーションしていくと教えてくれた。

涼しさに重点を置いたコンクリートのフロアは夏仕様のビーチハウスならでは。ラグやカーペット、ウッドの家具でナチュラルさを演出
バスルームのタイル、シンク、ミラーはモダンなトーンで統一

自然光が降り注ぐ大きな窓からは灯台が一望できるオーシャンビュー。チーズクロス素材のカーテンでふわふわとした柔らかさをプラスしている



キッチンはサイズに関係なく、工夫とパッションで素敵な空間を生み出すことができる。ツールとディスプレイはシンプル且つクオリティにこだわったもので統一

庭をニワトリが走り回り(家の中も走り回っていた!)子供たちがその後を追う。屋内のスペースが限られている分、庭やデッキに手をかけたことで家族それぞれが個々の時間を楽しめる空間が創出。ビーチタイムを楽しんだ週末には夕方からファイヤーピットに火を灯し、丸太の椅子で囲みながら夕食をいただく。幸せが溢れているこの家は、家族の成長と共にさらに温かみを増していく。

年代も雰囲気も異なるディフェンダーの奥にサーフボードがラインナップ。用途と気分によって使い分けるサーフボードとクルマは、どことなく共通点を感じる
まるでジャングルのようにグリーンが生い茂るバックヤード。ランチやディナーをウッドデッキで食べるのも、オーストラリアならではのアウトドア文化
「ブレックファーストカウンターがお気に入り!」とケリー。朝のラッシュアワーに6人が一緒に座れるようにと、キッチン横に設置

Photo : Ryuichi Komiya

(Maki Mukaeda(3 little spirals))

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