World Beach House – 世界のビーチサイドの⾃宅を紹介
オーストラリア・クイーンズランド州で出合ったファームハウス。葡萄の蔦が絡まるアップサイクル感たっぷりの建物は、ビーチの側に佇みながらも森の中のような静けさを醸し出している。1階を倉庫や駐車スペースとして使い、2階に居住する“クイーンズランダーハウス”と呼ばれる建築スタイル。室内に入ると、旅先で集めた幾多のトレジャーとともに、シンプルで丁寧な生活をするカップルがいた。
自然派志向の若い世代の人たちにとって、古い住居をモダンに修復して住むというスタイルは、近年当たり前のことのようになってきた。それにしてもクイーンズランダーと呼ばれる古いファームハウスを丸ごと移動させてしまうなんて、とてつもないとをいとも簡単にこなしてしまうカップルがいるとは……。
環境保護活動家であり、フリーランスのライターとして活躍しているローレンの本業は、“プロのフリーサーファー”。コンテストをベースとするプロサーファーとは一線を画し、旅をしながら写真や映像、ストーリーを残し、自身のありのままのライフスタイルを通じて「サーフィンとは」を表現していくオーガニックな仕事。
「はじめは新しく家を建てるために、イチからプランを組んでいたんだけど、途中でなんでこんなことをしてるんだろう?って我に返ったの。コストはかかるし、何よりも無駄が多く出ることに改めて気づいたの」
こうしてローレンは、アップサイクルできる古いクインズランダーを探し始めた。“クインズランダー”とは、クイーンズランド州に多く見られる高床式住居のこと。洪水やシロアリからの被害を避けるためにデザインされた木造の建物。部屋が小さく仕切られ風通しが悪いといわれるデザインだが、試行錯誤を繰り返し3年という月日を費やして完成させた。
「彼の友人が新しい家を建てるために、築90年を超えるクインズランダーを取り壊そうとしていたの。それをタダ同然で譲ってもらったの」
完成した自宅は自然光にあふれた潮風の通るオープンなビーチシャック。自分たちのライフスタイルとニーズに合った希望通りのスタイルとなった。2人がこの家に費やした労力は計り知れず、これからも常にリペアを繰り返していかなければならないが、それも家に愛を注ぎ込む楽しみのひとつだろう。
一年の半分以上を海外や旅先で過ごす2人にとって、この家は安らぎそのもの。旅から戻ったローレンが真っ先にすることといえばガーデンでの収穫作業。庭には野菜、ハーブなどバラエティ豊かな果物がたくさん栽培されている。さらには蜂の巣から蜜をダイレクトに収穫する養蜂家のようなことも。魔法のようなベジガーデンがいつでも彼女の帰りを待っているのだ。
自宅にいるときの一日のルーティーンを聞いてみると、朝起きてストレッチから始まり、サーフィン、ブルーベリースムージー作り、読書、執筆、摘みたてのガーデンサラダでランチ、お昼寝、ガーデニング、サーフィン、スクラブル(ボードゲーム)というまるで休日のような平日。自宅から離れている時間が多い多忙な生活だからこそ、シンプルな日々をありのままに過ごせる穏やかな家が、その大きなギャップを潤しているに違いない。
※HONEY special edition「BEACH HOUSE 2」より抜粋
Photo:Carly Brown
(Maki Mukaeda(3 little spirals))