World Beach House – 世界のビーチサイドの⾃宅を紹介
ムンダカから車で30分ほど南下した、バラエティ豊富な波が立つバスクコーストに住むアーティストカップル。彼らの家と隣のアトリエを訪ねると、そこは厳選された“好き”と、飾らない日常から作られるナチュラルな空間だった。
ジュエリーデザイナーのイネスがパートナーと暮らす家とアトリエは、ビーチから歩いて5分のところにある。「最近は開発が進んじゃって」と、できたばかりの幹線道路を指差して言うものの、周囲に高い建物や集合住宅はない。空が広く緑が豊かに生い茂り、スペインのバスクカントリー風情が十分に感じられる。潮風がほんのり漂う、風通しのよい場所だ。
「赤い屋根に白い壁、典型的なバスク様式の外観が気に入ったのと同時に、中が改築しやすそうだと思って2年前に購入したの。最初の1年間はほぼ内装工事の期間。もちろん工事はすべて自分たちの手でやったわ。でなければ1年間もかからない(笑)。玄関ドア以外に、家の中で空間を遮断するものは何もない。つまり壁という壁、ドアを全部取り払ったのよ。空間をできる限りオープンにしたくて」
家に対しての2人の大きなこだわりは、空間のみ。
「インテリアのテーマは特にないわ。好きな物と使う物を置いている。ただそれだけ」
置いてある家具も多くはなく、そのほとんどがアンティークだ。
「100年かもっと前の物が多いかな? 知り合いからもらったり、親戚からの物だったり。たまに骨董屋さんで発見したり。長く使えて頑丈な作り、かつ好きなデザインを探していると、自然とアンティーク品に辿り着くの。それも地元スペイン・バスクの物がほとんど」
塗ったばかりのペンキの白さがまだ残る壁と味のある家具。広いスペースに新しさと懐かしさがうまく共存している。そこに潤いを与えているのが、イネスがサーフィンの行き帰りや日々の散歩の途中に摘んだ草花たち。古いものに囲まれていても、時間が止まった印象がないのはそのおかげだろう。
家はまだ製作途中だという。
「ダイニングまわりはまだ仮の状態。いずれ2人用テーブルと椅子を外して、ベンチのような長椅子を壁に沿って作りたいの。友達が来たときにワインを飲みながらピンチョスをつまめる、くつろの場所を作りたい」
仲間と快適に過ごせる空間……2人の家作りは、こんなふうにシーンを想像するところから始まる。
Photo:Roke
(Michiko Nagashima)