World Beach House – 世界のビーチサイドの⾃宅を紹介
海までは徒歩1分。都会の喧騒からしばし離れて、週末やホリデーをゆっくり過ごせるビーチハウスを南カリフォルニアの隠れ家的スポットで見つけた。夫婦ふたりで、または友達やゲストを招いて、特別な時間をシェアするセカンドハウスを紹介。
平日は都会でバリバリ仕事をして、休日は海沿いの別宅でのんびり過ごす——。そんなライフスタイルに憧れる人は、世界共通で多いのではないだろうか。LAを拠点に、フォトグラファーやクリエイティブディレクターとして活躍するジョアンもその一人だった。
普段は都心で暮らす彼女のビーチハウスは、LAからクルマで1時間半ほど北上した、ハリウッドビーチと呼ばれる場所にある。もともと、このエリアに妹家族が住みはじめたことから何度か訪れる機会があり、すぐにこの地に魅了されたのだとか。
「海まで徒歩圏内でとても静かなところ。夕方になると決まって海風が吹いて、空気をクリアにしてくれるの。街にはクラシックなスパニッシュ調のレンガ造りの建物が並び、LAとはまた雰囲気が全然違う。それに、歴史的な場所でもあるのもユニークな点ね」
かつてハリウッドの黄金期と呼ばれた1920年代、広大な砂丘を擁していたこの場所が、アラビア砂漠を舞台にした映画の大掛かりなロケ地に使われたことから、観光客が急増。いつしか、“海沿いのハリウッド”と呼ばれ、それがハリウッドビーチの由来となった。
現在では、観光地というよりも閑静な別荘地として、ビーチハウスの並ぶ隠れ家的なエリアになっている。周辺には、マリブやサンタバーバラ、それにサーフボードのブランド名としても知られる島・チャンネルアイランドなど、個性の異なるビーチやサーフスポットが点在しており、LAの人々が週末のショートトリップへでかけるにはピッタリだ。
「私はこの家をビーチ・バンガローと呼び、日常を忘れてリフレッシュできる場所にしている。でも、インテリアはあえて海っぽさを意識せず、極力シンプルにまとめたわ」
確かに、このジョアンの家には、わかりやすい海モチーフの雑貨は一切ない。それでも、どこか海らしさを感じるのは、爽やかな白で統一されたウッドの壁や天井、陽当たりの良い窓、ほどよい光量の照明、見るからに風通しの良さそうな解放感……など、海に近いという立地もさることながら、ビーチにいるときの気持ちよさを連想させるような、快適な空間づくりにあるのかもしれない。
「1980年代後半に建てられたこの家を買い取って、リノベーションの際にこだわったのが、家じゅうを白いペンキで塗ったこと。キッチンやバスルームに天窓を作ったこと。もともとあったレトロなシャンデリアなどの電飾をあえてそのままにしたことよ」
インテリアは華美な装飾のないプレーンなものが好きだと言うジョアンだが、そのひとつひとつを良く見ると、ディテールが凝っている。なかでも気に入っている家具のひとつが、10人座れる広いダイニングテーブル。
「ここで、ときどき写真関連のワークショップやパーティをするの。人が集まってくつろぎやすいように、ダイニングテーブルは大きいものが良くて。これは、この家の前のオーナー家族から引き継いだものなのだけど、脚のデザインが素敵でしょ」
また、空いている日はバケーションハウスとしてゲストに貸し出しているというこの家。当初、軽い気持ちでオンラインにアップしたところ、どんどん予約が入ったという。
「約2 年前に初めて貸し出した日のことは良く覚えているわ。当時この家のインテリアコーディネートに満足できず、予約の数時間前まで大慌てで雑貨屋などを回った。
もともとインテリア関連の写真を手掛けたことはあったけれど、それ以来インテリアそのものにはまって。しかも、ゲストにもっと快適に過ごしてもらうために、という新しい視点が加わったの」
現在では宿泊の希望だけでなく、自分の家のインテリアコーディネートをしてほしい、撮影に協力してほしい、などさまざまな問い合わせが届くようになったそう。ジョアンにとって、このビーチハウスは、リラックスできるけれど決して退屈はしない。新しい出会いやインスピレーションに満ちた家だった。
Photo:Yuri Hasegawa
(Yuka Marmo Okamura)