「海暮らし・サーファー移住」全国サーフタウンの取り組みを紹介(その③)

海近くの暮らしを実現するためには「移住」という選択肢もある。住み慣れた土地を離れての新生活は、仕事や住まいなど現実的な課題は多いが、国や地方自治体の支援制度を活用することで、そのハードルを下げることも可能だ。

本記事では、移住支援に力を入れているいくつかの自治体をピックアップ。前回の第一弾記事第二弾記事と併せて、将来の“海暮らし”を考えるサーファーはぜひ参考にして欲しい。


南房総市の千倉海岸(同市提供)

⑧ 千葉県南房総市

千葉県房総半島の南端に位置する南房総市は、2006年、6町1村が合併し、内房、外房をまたぐ唯一の自治体として誕生した。外房には、白渚(しらすか)や千倉など、上級者から初心者まで楽しめるポイントが多数ある。リーフが混在するため地形が決まりやすく、千葉北エリアより暖かで鮮やかなリゾート感あふれる海が特徴的。普段は波がない内房の岩井海岸でも台風などで強いうねりが来た際、いい波に出会える可能性がある。

「ワーケーション」で暮らしを体感

南房総は東京からバスで90分という意外とアクセスがよいのが利点。市では、移住を前に、働きながら観光地で休暇を取る「ワーケーション」で、南房総の自然や暮らし、課題に触れてもらう取り組みに力を入れている。

市が提案するプランは3つで、「自然と文化」「SDGs」「新しい働き方」のそれぞれに出会う2泊3日~3泊4日の旅。仕事時間を挟みながら、海や山でのアクティビティや伝統文化、漁業、農業、ジビエBBQやビーチクリーンなどを体験する。コンシェルジュに相談しながら、日帰りなどの独自プランも策定できる。

移住支援サイト

起業、就業者への移住支援金

連続して1年以上、東京23区または東京圏(千葉県を除く)に在住し、東京23区に通勤していた人で、千葉県が運営するマッチングサイトに掲載された法人に就業し、千葉県内の条件不利地域に勤務する人や、起業支援金の交付決定を受けた人らを対象に、移住支援金が支給される。
※住宅や対象者に関する要件あり詳細はHP参照。

・一世帯100万円(単身60万円)
・18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合は100万円を加算

授業でサーフィンを習う南房総市の中学生(同市提供)

ユニークな教育制度

南房総市はユニークな教育内容にも定評があり、移住を検討する子育て世帯から熱い注目を浴びている。
「習い事助成金」…小学校高学年と中学生を対象に、市内の学習塾や習字、そろばん、ピアノ、クラシックバレエなどが選択でき、年額で小学生48,000円、中学生60,000円。
「南房総学」…小中学校9年間の総合的な学習の時間などで、自然や産業、伝統文化を地域の大人たちとの実体験を通じて学ぶ。例えば、白浜地区では小学校でビーチコーミング、中学校で釣り船体験など。
「完全米飯給食」…2011年から、給食はパンや麺類ではなく100%南房総市産のコメを使用し、「子供たちに食べさせたい」をモットーに和食中心の献立で地産地消を推進している。
「保幼小中一貫教育」…市内2カ所で運営。同一敷地内で園児から中学生が過ごす。2013年度に、保育所、幼稚園の所管部署を教育委員会に移管し、職員が子供たちを15年間切れ目なく見守る。待機児童はゼロ。スクールバスも運営している。

移住に関する問合せ先:南房総市役所 企画財政課
0470-33-1001(内線428)
南房総市移住・定住情報サイト「七色の自然に暮らす」


国府白浜
市後浜海岸

⑨ 三重県志摩市

三重県志摩市は、プロサーファーも多く輩出する東向きの国分の浜がメジャーポイント。加えて、世界最大クラスの人工波施設「パーフェクトスウェル志摩」が2026年開業予定で、さらなるサーフシーンの盛り上がりが期待される。行政も「海と暮らす」をテーマに積極的に移住者を受け入れている。

若者の奨学金返済や家賃を補助

若者の移住を促進するための独自施策が充実。大学などで奨学金を借りた人の返済を補助する制度があり、上限は年間20万円で計60万円まで。また、40歳未満の移住者を対象に、家賃を最大で月額2万円、年間24万円補助。さらに、市外からの移住者が、空き家を住宅として使用する際の改修工事費用を、100万円を限度として補助する。

漁師や海女への就業支援

海と深くかかわりながら暮らす志摩市だけあって、漁業への就業を促進。新規に漁業を始めた個人に対し、漁船や漁網、ロープ、フロート、ウェットスーツなど漁具の購入費を30万円まで補助する。漁師や海女になりたい人は「あしたの漁師応援サイト三重」を参照してほしい。

志摩市で暮らす中村拓久未プロと海で出会う可能性も!(同市提供)

積極的なサーファー誘致

志摩市サーフィン活用推進協議会を中心にサーフィン移住体験を提供中。大人気企画につき、7月の取材時は募集停止中だが、志摩市に2~5泊し、宿泊代やサーフィンレッスン代、レンタカー代が無料! 参加者は主催者との意見交換や写真提供、アンケートへの回答が必要となる。移住体験のキャッチコピー「海に入っとる時間と、運転しとる時間と、どっちが長いん?」は、多くの移住希望者の心に響くのではないだろうか。
実際に志摩市に移住したサーファーの体験談もYoutubeで多数公開中。

移住に関する問合せ先:志摩市役所 経済課
0599-44-0010


浜厚真海岸のサンセット(厚真町提供)

⑩ 北海道厚真町

北海道有数のサーフスポット浜厚真海岸がある厚真町は、新千歳空港から車で35分とアクセスがよく、移住者を積極的に呼び込んでいる。道内では雪が少ない比較的温和な気候で除雪の心配がなく、夏は蒸し暑さとは無縁な爽やかな天気。遠浅の浜厚真海岸は年間約6万人のサーファーが訪れ、広い駐車場とトイレも完備している。

住まいサポート「アツマイホーム」

「自然のそばで暮らしたい」「子供をのびのび育てたい」「大きな家に引っ越したい」。それぞれの願いをかなえられるよう、町内には個性豊かな4種類の分譲地がある。森のそばや森の中に暮らすビレッジや浜厚真海岸まで車で10分の「かみあつまきらりタウン」、公共施設や飲食店、商店街が並ぶ市街地エリアなど。

賃貸住宅も充実。特に町外からの移住者のために用意された「子育て支援住宅」は、広々とした3LDKの平屋やメゾネットタイプで、駐車場は2台を確保。オール電化の高気密高断熱仕様で、安心して子育てできる。基本の月額家賃は56,000円で、18歳までの子供1人につき5000円ずつ控除。子供2人なら46,000円と、破格の待遇だ。

年間6万人が訪れる浜厚真海岸(厚真町提供)

国・道と連携した移住支援事業

東京23区(在住者又は通勤者)および東京圏から東京23区に通勤していた人が厚真町に移住し、北海道が運営するマッチングサイトに掲載された企業に就職または起業した場合、一世帯100万円、単身者には60万円の移住支援金が交付される。
※対象者に関する要件の詳細は要問合せ。

初心者も楽しめる浜厚真海岸(厚真町提供)

住まいのゼロカーボン推進補助金

自然を愛するサーファーにうれしい施策として、厚真町にはゼロカーボン化促進事業がある。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素など温室効果ガス抑制のため、断熱性や省エネ性能に優れた住宅の建設と再生可能エネルギー設備の設置に際し、町が工費の一部を助成する。対象は本人が暮らす予定の新築住宅。年間の消費エネルギーと太陽光発電等で創られるエネルギーの収支がゼロかマイナスになることが要件で、最大150万円が交付される。

移住についての問合せ先:厚真町役場 まちづくり推進課
0145-27-3179

(THE SURF NEWS編集部)

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